「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト フェーズ2(J-PRISM II)」のこれまでの活動紹介

2019年5月14日

業務調整/3R+Return専門家 古川智之
国際航業株式会社・八千代エンジニヤリング株式会社 共同企業体
廃棄物管理専門家 孔井順二、小谷倫加恵

「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト フェーズ2」(通称、「J-PRISM II」)は、SPREPが作成した大洋州地域廃棄物・汚染管理戦略2016-2025(Cleaner Pacific 2025)の実施を通して、大洋州地域の持続可能な廃棄物管理にかかる人材および組織・制度的な基盤が強化されることを目標に、2017年2月~2022年2月の5年間、バヌアツ国(以下「バヌアツ」)を含めた9カ国を対象として実施されている技術協力プロジェクトです。

バヌアツにおける廃棄物管理改善支援の歴史は長く、2006年のブッファ処分場改善(注1)に始まりJ-PRISMフェーズ1(2011年~2016年)を経て、今年で14年目になります。J-PRISM IIでは、「国家廃棄物管理及び汚染防止戦略(NWMPCS)2016-2020」の実施・モニタリング能力の強化を目指して、気候変動省 環境保護局(DEPC)、ポートビラ市役所(PVMC)、ルーガンビル市役所(LMC)とともに一丸となって活動を行っています。

DEPCとの協働作業では、2018年6月に国家戦略の推進のためのワーキンググループを形成して、全国を対象に以下のような活動を行っています。

  • 地方自治体(州・市)における廃棄物管理計画の指導
  • コンテナデポジット制度(CDS)(注2)の導入検討
  • ごみ減量方策の検討
  • 学校環境教育・住民啓発の普及支援

(注2)使用済の空き缶やPETボトルといった容器の購入者が、購入する際に「預かり金」を支払い、規定の場所に持ち込むとその支払った預り金が払い戻される制度。

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第二回合同調整委員会(Joint Coordination Committee)終了後 プロジェクト関係者集合写真(2018年10月)

首都ポートビラ市とは、ごみ量ごみ質調査やブッファ処分場の搬入記録調査などの基礎調査を行い、これに基づいて2021年~2030年を対象年とする廃棄物管理計画を策定しています。計画には、廃棄物管理組織の新設やごみ収集運搬計画の改善策、ブッファ処分場の拡張計画などが定められる予定です。

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ごみ量ごみ質フォローアップ調査(2018年8月)

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ドローン撮影により作成したブッファ処分場の3Dモデル(2019年3月撮影)

一方、メラネシアやポリネシア地域での連携の一環としてリサイクル協会の立ち上げ支援を行っています。約80の島々で構成されているバヌアツでは、アルミ缶やペットボトルなどを国内でリサイクルするための施設がありません。そのため、J-PRISM IIでは3R(Reduce(減らす), Reuse(繰り返し使う), Recycle(再資源化する))に加え、有価物や処理困難物をリサイクル可能な海外へ輸出(=リターン)することで適正な資源循環・適正処理を推進する『3R+Return』を提唱しています。リサイクル協会は既にサモア、ソロモンで設立されており、大洋州地域で3番目となるバヌアツ支部の立ち上げに向けて2019年3月にキックオフ会議を開催しました。

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リサイクル協会バヌアツ支部の立ち上げに向けたキックオフ会議(2019年3月)

バヌアツでは他国に先駆けてプラスチック減量政策が実施されており、世界中から注目を浴びています。既にプラスチック製のレジ袋、トレイ、ストローの利用を禁止する条例が2018年7月から施行されており、レジ袋の代替品として、伝統的な葉っぱで編んだかごバッグなどが改めて注目されています。また2019年12月からは、更にフォーク、スプーン等を加えた7品目のプラスチック製品が禁止される予定で、プラスチック禁止の動きは新たなステージに向かおうとしています。J-PRISM IIは、バヌアツでの廃棄物管理の適正化を目指して2019年度も引き続き様々な活動に取組んでいきます。