バヌアツの病気と食事

2019年6月7日

青年海外協力隊
2017年度1次隊
小阪 みづほ(看護師)

【画像】

任地の海と放牧されている牛たち

バヌアツで2017年度1次隊・看護師隊員として活動している小阪みづほです。
もうすぐ2年間の任期を終え、帰国する予定です。
バヌアツは83の島から成る群島国家であり、面積は新潟県の広さに相当します。その島々は6つの州に分けられており、任地はサンマ州に含まれるエスピリトゥサント島に位置しています。島の中心街から60km北上した所が私の任地、ポートオーリー村です。
任地は白砂が美しいビーチを擁し、広大なココナッツプランテーションや村では牛が放牧されており牧畜が盛んな地域です。人口は2300人のバヌアツでは2番目に大きい村です。

配属先は村のヘルスセンターで、私は診療業務の補助を行うとともに健康教育を学校や地域で実施していました。バヌアツでは生活習慣病患者が増加しており、死亡原因の70%が生活習慣病に起因していると言われています。任地も糖尿病や高血圧症をもつ村人が多く、食事や運動を取り入れた生活習慣病の予防啓発活動を行っていました。また、任地は屋外排泄の習慣も残っており、基本的な衛生行動の確立も課題となっています。皮膚感染症や寄生虫感染症もあり、それらの撲滅にも働きかけていました。
バヌアツでは自分の血圧や体重を知る機会が少なく、適切な血圧や体重を知っている人はあまりいません。そのため任地では半年に1回健康診断(身長・体重・腹囲・血圧・血糖値測定)を実施し、日曜日には教会へ血圧計と体重計を持参し、礼拝後の村人の血圧・体重測定を行っていました。任地の成人の約75%が過体重・肥満であるため、健康診断ではBMIを用い各々に現在の体重や適性体重についても指導をしていました。

【画像】

BMIや血圧について指導

【画像】

教会での体重測定

任地で生活するなかで、炭水化物の食べ過ぎが過体重・肥満の大きな要因となっているのではないかと考えるようになりました。村人は古くから主食として食べられてきた芋類に加え、輸入米やパン、インスタントラーメン、クラッカーなどの加工食品も多量に摂取しています。また、任地では牛肉や魚などのたんぱく質は容易に入手できますが、野菜は収穫量が減る季節もあり、野菜の摂取量が十分であるとは言えません。
しかし、村人は食事や病気に関する知識を全く持っていないというわけではなく、「米を沢山食べると太る」、「野菜は病気を防ぐ役割もあるから食べたほうが良い」、「砂糖や油の摂りすぎはいけない」など基本的なことはほとんどの村人が知っています。ですが、食事バランスや適切な量が分からないという状態でした。
同じ島の病院配属の栄養士隊員にも協力してもらい、一目見るだけでバヌアツ人が食事バランスについて理解できるような教材を作成するとともに、普段の自分たちの食事について振り返る健康教育を実施しました。20~30代の母親には普段食べている米の量を測り、それがどれだけ食べ過ぎなのか実感できるアクティビティを行い、小学校ではその日食べたご飯を描いてもらい食事バランスについて健康教育を行いました。
食べ過ぎやバランスの悪い食事は生活習慣病の大きな原因ですが、私は村人が家族や友人と一緒にお腹いっぱいご飯を食べるという幸せも大切にしたいと思っています。健康な食習慣への道のりは程遠いですが、村人が自分たちの食習慣について考えることができ、少しでも生活習慣病が減ることを願っています。

【画像】

大量の米と芋、少量の肉・魚・野菜がバヌアツの食事の定番

【画像】

普段食べている米の量を知るアクティビティ

【画像】

小学生が同僚と共に描いた食事について振り返りをしている様子

任地での水や電気、通信などが満足に使えない不便な生活には苦労することもありました。ですがバヌアツ人の強さや優しさ、死生観などに触れ学ぶことも多い2年間でした。2019年7月には任期を終え帰国する予定ですが、帰国後もバヌアツでの経験を忘れず今後の生活に生かしていきたいと思います。