CB-CRMアプローチのバヌアツ国内への普及

2019年11月6日

長島 聡(豊かな前浜専門家(副総括/水産普及1))

JICAは、南太平洋のバヌアツにおいて、「豊かな前浜プロジェクト」を実施してきました。

バヌアツでは、人口増加や気候変動など様々な理由で沿岸資源が減少傾向にあります。沿岸資源を利用するコミュニティでは、伝統的な資源管理手法であるタブーエリア(みだらに魚や貝を採集してはいけない場所)の設置による自主的な資源管理を行っていますが、沿岸資源管理に対する知識が乏しく、その効果は限られています。一方、漁業法の執行権を持つバヌアツ水産局も、沿岸資源の減少について問題意識は持ちつつも、限られた人的資源のため、効果的な対策をなかなか実施できませんでした。

このためプロジェクトでは、バヌアツ水産局と沿岸コミュニティが協力して行う「コミュニティを主体とする沿岸資源管理(CB-CRM)」に対する支援を行ってきました。現在のフェーズ3(2017年~2021年)では、CB-CRMアプローチの応用性と実用性をさらに強化し、バヌアツ国内及び周辺のメラネシア諸国へ普及することを目的とし、CB-CRM実施のためのガイドラインに取りまとめ、これを元にしてパイロットサイト以外のバヌアツ国内に普及する活動に取り組んでいます。

この一環として、今年からCB-CRMアプローチの研修を受講したカウンターパートが主体となり、タフェア州エロマンゴ島、サンマ州マロ島、マランパ州マレクラ島サウスウェストベイで、CB-CRMアプローチの普及を目的とした研修実施を支援しています。2019年3月に実施した研修に引き続き、2019年10月にそのフォローアップを兼ねて2回目の研修を行いました。研修では、CB-CRMアプローチの概要の復習を行った後、1回目の研修時に作成された暫定版CB-CRM計画の再確認を行いました。

各地とももともとあったタブーエリアの活動を継続しているほか、様々な計画を策定していることが確認できました。例えば、サウスウエストベイでは、小アジを獲るための小さな目合の網を禁止したり、偏った魚種だけを集中的に取ることが無いよう、沖合での浮魚礁(沖合に設置して魚群を集める装置)を設置したりしています。

これまでの支援を元にして、現地住民や水産局スタッフの自助努力でCB-CRMアプローチが普及できる体制が徐々に整いつつあることを実感しています。

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カウンターパートによるCB-CRMアプローチの講義

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カウンターパートによって設置された浮魚礁

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浮魚礁周辺でのカツオの漁獲