ティラピア養殖で住民の生計向上

2019年11月26日

枝 浩樹(豊かな前浜プロジェクトフェーズ3/内水面養殖)

本プロジェクトでは、伝統的な沿岸コミュニティによる禁漁区の設定などの資源管理と、養殖や貝細工づくりなど代替となる住民の生計手段の開発を組み合わせた資源管理の仕組みづくりに取り組んでいます。前者を資源管理方策と呼び、後者を資源管理支援方策と呼んでいます。ティラピア養殖は、資源管理支援方策の1つの活動です。

なぜティラピア養殖?

バヌアツを含め太平洋島嶼国では豊富な沿岸水産資源を有していますが、近年、内水面養殖が内陸部での動物タンパク源供給や現金収入源として注目されています。島嶼国では内水面養殖の歴史は浅く技術の蓄積もわずかですが、ティラピアは種苗生産が容易で粗放的な養殖にも耐えられることから島嶼国における内水面養殖の対象種として適していると言えます。

島嶼国でも比較的容易な生産が期待できるティラピアの養殖を普及させ、その地域のニーズと条件によって現金収入源あるいは自給食糧とします。また、これを代替収入源・食糧として沿岸域の漁獲圧の低減に繋げます。なお、いずれの場合であっても食糧安全保障の観点から自然災害時の緊急食糧として利用することも副次的な目的としています。

また、コミュニティ単位による養殖では、販売による収入があった場合に売り上げの一部を資源管理活動に拠出するなどして資源管理活動への積極的な参画も可能です。

ティラピアの養殖方法

バヌアツでのティラピア養殖方法は図にあるように、畜産、農業、そして養殖、三位一体の複合養殖と給餌を組み合わせたハイブリッド式で、生産物は養殖からだけではなく、畜産そして野菜栽培からも得る事が出来るアプローチを採用しています。

この方法を用いてエスピリッツ・サント島ワイラパ・コミュニティ養殖場(200平方メートル)で、1,300尾の稚魚(5gサイズ)を放養して4ヶ月間養殖した結果、783尾(平均魚体重188g、総重量147kg)を取り上げました。本アプローチ導入前、ワイラパ・コミュニティでは、魚は海で獲る物と思っていましたが、陸上の池で多くの魚が育つことを見て、養殖が生計手段の一つになることを、身をもって体験しました。このため、現在ではプロジェクトが協力しているコミュニティ養殖池の他に、住民たちが自主的に開始したバック・ヤード養殖池が多くみられるようになりました。

今回は、給餌に市販のティラピア用の餌を使用しましたが、今後は、自家製の餌の作成方法をトレーニングし出来る限り安価な餌を使用して生産コストを抑えた養殖を資源管理支援方策の1つとして広めて行きたいと思っています。

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複合養殖と給餌養殖のハイブリッドタイプ

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ワイラパ・コミュニティ池から取り上げたティラピア

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ワイラパ・コミュニティ池

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住民が自主的に作ったバック・ヤード池