バヌアツでの世界津波デーイベント

2022年11月7日

地震・津波・高潮情報の発信能力強化(Van-REDI)プロジェクト
一般財団法人 気象業務支援センター 業務主任 登内 道彦
短期専門家(業務調整/啓発活動) シュルツ(八坂)由美

毎年11月5日は「世界津波デー」。

地震・津波・高潮情報の発信能力強化(通称Van-REDI)プロジェクトでは、2022年11月2日から4日にかけて、首都ポートビラがあるエファテ島の東海岸エトン村で津波防災イベントを実施しました。エトン村は、2022年1月15日に発生したトンガの海底火山噴火による津波が観測された地域です。津波は高さ約1m、20~30メートル内陸まで押し寄せたと、住民は言います。(この時バヌアツで正式に観測された津波の高さは最大で1.4メートル)

今回の啓発イベントは、Van-REDIプロジェクトのカウンターパートである国家災害管理局(NDMO)が主催する国際災害リスク削減デーと合わせて実施したもので、もう1つのカウンターパートであるバヌアツ気象・地象災害局(VMGD)やシェファ州政府、東エファテ地区議会、エトン村災害リスク削減協会、エトン村タスクフォース、バヌアツ警察、非政府系国際協力団体等がイベントに参加しました。

Van-REDIプロジェクトの避難訓練に向けた技術協力は、2つのコンポーネントから構成されます。

1つ目は、津波警報を発表するVMGDの能力強化で、VMGDとともにVan-REDIの上垣内修専門家、山本雅博専門家(共に地震、津波解析専門家)が改訂した、新しいSOPに沿って、事前にVMGD内でシミュレーション訓練が実施され、「地震発生確認」、「津波警報の発令」、「(状況によって)避難のためのサイレンの起動」、同時に「携帯電話に避難のメッセージを発信」することが、訓練の一連の作業の始まりで、VMGDの中で繰り返し訓練を実施します。

2つ目の実際の避難訓練現場では、「サイレン(もしくは同等のシグナル)を聞いて避難(訓練)」、「避難場所に移動(経路の確認・習熟)」、「津波警報のキャンセル(VMGD)を待っての避難解除(NDMO)」を行います。地震発生から避難解除までのすべての行動を訓練することで、プロジェクトの成果目標の1つである「VMGD及びNDMOが国民に対して行う防災啓発活動の能力強化」が向上することが期待されます。(今回はサイレンが設置されていない場所だったため、VMGD内のシミュレーションと現場の避難訓練は別々に実施されました。)

3日間のイベントでは、津波避難訓練だけでなく、科学・防災展、津波ビデオ放映、津波クイズ等が実施されました。啓発イベントへの参加者は、避難訓練に約500人、その他のイベントに約250人、合計で約750人でした。東日本大震災(2011年)の実際の津波の映像やパネル写真は、子ども達を含む来場者の皆さんの一番の関心事で、皆さん食い入るようにご覧になっていました。津波クイズでは、多くの子ども達が「津波は神様が怒った時に起こる」と答えていたことが印象的でした。

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世界津波デーパレードの様子

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津波ビデオショーで解説をする上垣内専門家

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避難訓練(サイレンがなり、避難場所へ移動する参加者)

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避難訓練(避難場所に集まった参加者)

避難訓練の最後に実施したアンケートは、紙ベースだけではなく、今回VMGDで初めてオンラインでも並行して実施しました。スマホやタブレットでQRコードを読み込み質問に答えていくシステムは、参加者の皆さんの利便性も良く、回答も短時間で終わり、また集計がし易いメリットがあります。

アンケート(n=66:2022年11月7日現在)は次のような結果でした。

前出の上垣内修専門家は以下のようにコメントしています。「今回改訂した津波SOPにより、迅速確実な津波警報の発表が可能になると期待します。そのSOPをVMGD担当職員がしっかりと身に付け、絶え間なくSOPを改善していくためには、日頃からの部内訓練が重要です。」

またバヌアツ気象・地象災害局(VMGD)のロメノ・モンティン局長は、「Van-REDIの避難訓練はとても貴重なロールモデルで、VMGD~住民~NDMOと言う本来の一連の情報の流れを重視し、その全体をシュミレーションすると言う、これまでになかったタイプの訓練です。その訓練から、住民だけではなく私達VMGDも多くを学びました。今後、津波SOPのシュミレーションをVMGD独自で実施し、実際に津波が発生する可能性に備え、住民の安全に寄与できるよう努めていきます。」と述べています。

津波はいつ発生するか、誰にも分かりません。バヌアツを大きな津波が襲う可能性も0ではありません。いつ起こるか分からないからこそ、そのために十分な備えをし、自分にとって安全な避難場所は何処か、どうやってそこに移動するか、家族との連絡はどうするか、持ち出し用の避難キットは完備されているか等、一人一人が確認し備えることが重要です。

Van-REDIプロジェクトは2023年12月までプロジェクト期間の延長を計画されており、2023年にも同様の避難訓練をバヌアツの各地で実施する予定です。