2020年11月18日
10月16日、ブータン国営放送チャンネルの教育番組で、JICA海外協力隊員により撮影されたエクササイズ動画の放映が開始されました。この動画は新型コロナウィルスの影響で一時帰国を余儀なくされた隊員が、日本からの遠隔活動として制作に取組んだものです。
ブータンでは2020年3月中旬から全国の学校が閉鎖となり、教育省の主導の下、3月30日より、テレビ放送を始めとした、遠隔教育プログラムが開始されました。同放送は、全国の小学生から高校生まで約15万人を対象とし開始され、一部学年が再開された現在は、約9万8千人の小中学生が視聴の対象となっています。
放送授業は、主に国語、数学等主要教科に重点が置かれていたことから、在宅学習中の生徒達の健康維持やリフレッシュを目的として、エクササイズの必要性が教育省よりJICA事務所に提案され、一時帰国中の隊員有志4名、山本あすか隊員(体育)、五百川将隊員(体育)、桑原寛生隊員(小学校教育)、澤多加奈子隊員(小学校教育)が協力しました。
本企画をリーダーとして進めた山本隊員は次のように語ってくれました。
「『We are ONE』国を越えて、みんなで一つになって一緒に乗り越えていこう。そんな思いを込めて作成したエクササイズ動画。これは、我々プロジェクトメンバーだけでは到底完成・放送に至ることはできませんでした。ブータン教育省、JICAブータン事務所や他のブータン隊員、現地制作スタジオをはじめ、携わる全ての方々の協力・支援により、実現に至ったと感じています。
思い返せば2020年3月中旬、新型コロナウィルスの影響で、ブータン国内は全校休校となったものの、国内の陽性者数は比較的抑えられていました。そのような中で全隊員の一時帰国の知らせを受け、心の整理もつかないまま慌ただしく帰国することとなりました。当初は、すぐにまた任地に戻れると考えていましたが、日本に着くと状況は目まぐるしく変化しました。帰国後の自宅待機期間に続いて緊急事態宣言が発令され、その間、自身の活動を振り返る時間も多くなりました。ブータンの学校は2月から新年度となり、年間計画も立て、これからという時に休校、帰国となり、何もできずに帰ってきたという無念の思い、無力さを感じることもありました。
しかし、できないことや現状を嘆いているだけではなく、できることを探そう、日本でもブータンの子どもたちのためにできることがあるはずだ、と考えるようになりました。
そんな中、ブータンでのE-Learningの取組みについて知り、その後隊員有志でプロジェクトを立ち上げ、動画作りが始まりましたが、当時日本は緊急事態宣言下であったため、遠隔で連絡を取り合い制作していきました。
制作過程では、運動部位や運動量等を考慮しつつ、ブータンで馴染みのある振り付けを取り入れたり、広く知られている音楽を使用したりして、子どもたちが楽しみながら取り組めるようにすることを意識しました。また、ブータンの国名は公用語のゾンカで“Druk Yul(雷龍の国)”であることにちなんで、エクササイズの名前を「Druk Gi Lue Jong (雷龍運動)」とし、曲のサビの部分では雷をイメージした振り付けを取り入れました。
エクササイズの最後には、ブータン隊員の笑顔溢れる写真とともに「We are ONE」のメッセージを込めました。
本エクササイズを行うことで、子どもたちの心身の健康の維持・増進を促すとともに、この活動が体育の役割の再認識、教科としての地位向上に寄与することを願っています。
親切な人が多く、互いに支え合って生きていくのが当たり前な国、ブータン。活動中、あらゆる場面でたくさんの方々に助けていただきました。ブータンのために何か力になりたい。そう思わせてくれるブータンという国、そこで暮らす人々に感謝と尊敬の念を抱かずにはいられません。そんなブータンから学んだ心が『We are ONE』のメッセージに込められています。」
同企画を共に進めてくださったブータン教育省学校教育計画調整課長キンレイ・ギャルツェン氏からは、「JICA海外協力隊員およびJICA事務所により保健体育教育のための素晴らしいビデオ教材が作成されたことに感謝し、ブータンの子供達に毎日届けられることを大変喜ばしく思っています。また共に活動できる日を楽しみにしています。」との温かいメッセージをいただきました。
本動画は毎日2回放映され、今後新たに開設される国営教育チャンネルでも活用される予定です。