「食品加工技術×SDGsセミナー ~食品産業が豊かで健康な社会を創る~」を開催しました!

2019年8月1日

日時:2019年7月26日(金) 13:30~16:10
会場:JICA沖縄
参加者:12団体30名 

 食品産業は、さまざまな栄養素を含む食品を安定供給するという観点から、SDGsのゴール3が目指す豊かで健康な社会にとって重要なアクターであり、人々の健康な生活を支えるために、「どのような製品やサービスが求められるか、そのために必要なイノベーションは何か」を重視し、事業を通じてSDGsに取り組もうとする事例も多くなっています。その動きは、JICAの民間連携事業においても顕著であり、企業の食品加工技術・ノウハウを活用し、開発途上国におけるSDGs課題の解決に寄与する案件が増えています。

 本セミナーは、JICA民間連携事業を活用し、カンボジア国の農林水産業の品質・生産性向上に取り組むサラヤ株式会社と、パラグアイ国の農産品の高付加価値化と小規模農家の生計向上に取り組む株式会社わだまんサイエンスの事例をご紹介いたしました。また、JICA沖縄民間連携アドバイザーからは、沖縄の食品産業の概況及び沖縄の可能性についてお話しいただきました。

<セミナープログラム>
13:30 開会挨拶
    JICA沖縄 所長 佐野 景子
13:35 JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業紹介
    JICA沖縄 民間連携担当 米里 吉則
13:50 「カンボジアにおける海外展開事例紹介」
    サラヤ株式会社 海外事業本部アフリカ開発室 副室長 森 窓可 氏
14:35 休憩
14:45 「パラグアイにおける海外展開事例紹介」
    株式会社わだまんサイエンス 代表取締役 深堀 勝謙 氏
15:30 沖縄の食品産業の概況説明および沖縄の食品産業の可能性
    JICA沖縄 民間連携アドバイザー 桑江 修 氏
15:50 質疑応答
16:05 閉会挨拶
    JICA沖縄 次長 鈴木 薫

 サラヤ株式会社 海外事業本部 アフリカ開発室の森 窓可 副室長よりカンボジアにおける海外展開事例をご紹介いただきました。「衛生」、「環境」、「健康」という3つのキーワードを事業の柱とし、より豊かで実りのある社会の実現を目指す同社は、急速冷凍機機器「ラピッドフリーザー」と微酸性電解水発生機器「サニスター」を使い、カンボジアの食品衛生課題(貧栄養、栄養疾患、食中毒)と農業水産課題(貧困、低生活水準、雇用不足)の改善に取り組んでいます。水に近い性質でありながら高い除菌効果を発揮するサニスターを使用することで食品加工工程の衛生効果を高め、ラピッドフリーザーで食材を急速冷凍することで鮮度維持と食材の活用方法を広げることが可能となり、衛生面の課題の克服と食材の高付加価値化が期待されています。現地に持続的に活用してもらう工夫(マニュアルの作成や食品衛生インストラクターの指導等)やケニアにおける知見も共有いただきました。

 株式会社わだまんサイエンス 代表取締役の深堀 勝謙 氏からは「ごまで世界平和がなぜビジネスになるのか」と題してパラグアイ共和国における海外展開事例をご紹介いただきました。株式会社わだまんサイエンスの創業時は、「ゴマで世界平和」で、ビジネスが成り立つはずがないと、周囲関係者の目は冷たかったそうですが、現在、2ヶ月に1回1週間だけ開催される阪急うめだ本店のイベントでは、ゴマを購入するのに行列が絶えず、なんと1週間だけで平均600万円も売上があるそうです。他に、一般社団法人「日本胡麻協会」を設立してセサミマイスターの育成に取り組んでおり、これまで120名のセサミマイスターが育っています。
2013年にJICAの南米日系社会との連携調査団の一員として初めて訪れたパラグアイで、ゴマの輸出量が2009年から落ちているという情報を入手し、パラグアイのために何とかしなければいけないとの思いで、2013年から2018年にかけてJICAの案件化調査や普及実証事業を実施しました。最近では、「マツコの知らない世界」でゴマの世界のプレゼンターとして出演しご活躍されております。

 JICA民間連携アドバイザーの桑江 修 氏からは、沖縄県の食品産業の概況及び沖縄の可能性についてご説明いただきました。
 県内の食料品製造業は中小零細企業が多く、海外に出ていく必然性がなく、食品産業が開発途上国でSDGsを展開できるかというテーマに興味を持つ企業は少ないと思われるとのことでした。海外展開するには、ある程度の企業体力が必要で、また自社へのメリットも必要であり、当該国と企業双方にメリットがなければ、持続可能なビジネスにはならないとのことです。また、県内企業は熱帯亜熱帯の薬草への知見及び加工技術の蓄積があり、技術者もいて、健康食品市場における販売ノウハウ及びルートがあることから、健康食品・健康茶産業は、海外展開の可能性があるとのことでした。

 本セミナーのテーマは「食品加工技術×SDGs」でしたが、ご登壇者の皆様の素晴らしいプレゼンテーションにより、SDGs達成、課題解決に食品加工技術がどのように貢献できるかが参加者の方々に少しでも参考にしていただければ幸甚です。
 JICA沖縄では、沖縄県内企業の皆様に途上国におけるSDGs課題やJICA事業等について理解を深めてもらい、JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業の活用について積極的にご活用いただくため、今後とも魅力的なセミナーやイベントを開催し、途上国への海外展開を目指す県内企業の皆様を積極的にサポートしていく所存です。