車いすテニス&キッズテニス イン マレーシア(3/5ページ)

パラリンピック協会長を表敬訪問

【写真】パラリンピック協会長を表敬訪問

11月のフェスピック大会開催を担当するのはマレーシア・パラリンピック協会。マレーシアの障害者スポーツの振興に意欲的な会長のザイナル氏と堅い握手。「大会の成功をお祈りしています」。

車いす製造

11月のフェスピック大会の運営支援のためにマレーシア・パラリンピック協会で活動中のシニア海外ボランティアの麻生学さんは、国立バンギ職業訓練リハビリテーションセンターで車いす製造のアドバイスにもあたっています。マレーシアではスポーツ用はもちろんのこと、一般用車いすも国産化に至っておらず、日本や台湾からの輸入に頼る状態。「安価で体に合った車いすが生産できれば、より多くの障害者の生活の質が向上し、スポーツを楽しめるようにもなります」と麻生さん。このほか、ここでJICAは、草の根技術協力で大分県の社会福祉法人・太陽の家(フェスピックの提唱団体)を通じて、車椅子製造と車椅子バスケットボールの協力も行っています。

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制作途中の車いすについて説明する麻生さん

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車いすの部品製造や修理の実習を行う訓練生

トレンガヌ州の障害者支援の現場

日程の後半では、クアラ・ルンプールから飛行機で約1時間。マレー半島の東海岸のクアラ・トレンガヌを訪ねました。イスラム色の濃い素朴な地方都市で、クアラ・ルンプールとは一転してこぢんまりとした街並みが広がります。

この州で活動している青年海外協力隊員は7名で、養護、作業療法士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどすべて福祉分野。学校やデイケアセンター、地域に根ざしたリハビリテーションを進めるセンターなどに配属され、障害児の教育にあたったり、教師や親に養護のアドバイスを行っています。隊員たちは普段から連携しながら、この州の障害児・者が自立した生活を送り、社会参加を進めていけるよう福祉局や教育局などさまざまな機関と活動しています。

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羊毛を糸にする工程で使われるブラシの歯を替える作業をする山下朋和隊員の生徒たち

今回視察したのは、隊員が日系企業、ナンカイ・ウーステッド・スピニング・トレンガヌ社に働きかけて始まった養護学校生徒の実習の様子。養護学校(高校)の卒業を控えた生徒3名を、週に1回、工場に試験的に受け入れてもらうことになったのです。マレーシアでは、企業が障害者を雇用するケースは、まだまれです。

羊毛を糸にしていく工場のため、場内は高温多湿ですが、集中して作業を続ける生徒たち。ナンカイ社では、「集中力、忍耐力があってきちんと作業をしてくれて頼もしい。まだこの国は障害者を雇用する風土にはなっていませんが、今後、実際に受け入れをどこまで行うか検討していきたい」とのこと。伊達さんも「意欲をもってがんばる人たちを雇う企業が増えていくといいですね」と話していました。

そしてもう一カ所訪ねたのが、国立重症心身障害児者入所施設「タマン・シナール・ハラパン(輝く希望の園)」。知的障害のある子どもから大人を対象に、リハビリテーションや職業訓練を行っている施設で、隊員がときどき巡回し、スタッフにケアや療育についての指導を行っています。重い障害を抱えた子どもの家庭でのケアは難しいうえ、経済的な問題を抱えた家もあり、実際にはこの施設に長く滞在せざるを得ない子どもが多いそうです。厳しい現実を隊員から聞き、伊達さんも表情を曇らせていました。

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タマン・シナール・ハラパンで河野美保子隊員から子どもの発達や栄養状態について聞く伊達さん

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トレンガヌの市場では、電動車いすに乗りお店を切り盛りする自立した女性と出会いました。「こんなふうに外に出て仕事をしている障害者は少なく、有名な方なんですよ」と髻谷(たぶさだに)京子隊員(右)