車いすテニス&キッズテニス イン マレーシア(5/5ページ)

子どもたちの可能性を再発見−キッズ・テニス

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一方のクアラ・トレンガヌでは、参加者全員が知的障害のある子どもたち。これも伊達さんにとって初めての試みでした。8月13日、青年海外協力隊員の派遣先をはじめ6校から30名が朝早くから集まってきてくれました。

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「みんなでキミコを呼ぶよ。せーの、キ・ミ・コー!」。司会の武田賢美隊員の言葉にみんな大きな声で呼びかけます

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最初はボールやラケットの扱いにとまどっていましたが

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だんだん声を上げて動き出しました

今回参加した子どもたちは、テニスはもちろん外で2時間近く体を動かしたことがないとのこと。午前中とはいえ暑さと強い日差しのなかで、集中力や体力がどこまで続くか心配されていましたが、伊達さんがボールとラケットを手に、ニコニコと動きだすと、子どもたちは伊達さんの笑顔に引き込まれるように動きだしました。最初はボールやラケットの扱いもなかなか思うようにならなかったのですが、いつのまにか楽しそうに声をあげながらボールを追い続けていました。「ラリ、ラリ(動いて、動いて)」「ボレ、ボレ(できる!できる!)」と声をかけながらコートを見てまわる伊達さんに、楽しくてずっとついていく子もいるほどでした。

過ぎてみればあっという間の2時間。こんなに熱心に子どもたちが一つのことに取り組むことはなかったようで、1人も怪我をせずにテニスを楽しみ、ラリーまでできるようになった子どもがいたことには、引率してきた教師や隊員たちも驚いていました。

伊達さんも大きな手応えがあったようです。「今日の子どもたちは、感情をストレートに出してくれて、心を打たれました。普段無理をしないよう大事にされているようですが、やってみてできないことがあると、とても悔しがって何度も繰り返し、できると大喜び。ちょっと難しそうなことでも、チャレンジさせてみていいと思います。それができると大きな自信につながる。今日は、子どもたちが秘めている可能性の発見になったようでうれしいですね」と感想を話していました。

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「ボールをよく見て」。丁寧に教える伊達さん

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「わー、すごい」。伊達さんのプレーに見入る子どもたち

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「やったー、ぼくもキミコみたい?」。夢中でラケットを振って。

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「楽しかったー?」「はーい」

今回、トレンガヌでキッズテニスに協力してくれた青年海外協力隊員

佐藤陽子(職種・作業療法士)、河野美保子(同・同)、山下朋和(同・養護)、武田賢美(同・同)、吉田高徹(職種・養護)、長谷川智子(同・同)、髻谷(たぶさだに)京子(職種:ソーシャルワーカー)

マレーシアでの活動を振り返って

伊達さんは、「今回の視察では、障害のある人たちが技術を覚え仕事に就いたり、スポーツをしたりすることで自分に自信をつけていく様子がよくわかり、JICAボランティアのみなさんの姿からは、モノだけではない、人の意識を高めていく援助の大切な意味を理解できたように思います。また、私自身、今回さまざまな障害者スポーツを楽しむ人たちと交流して、スポーツの素晴らしさを改めて感じました。ボランティアのみなさんから指導を受けていた人たちからは、アドバイスを一生懸命吸収しようとする気持ちがひしひしと伝わり、現役を引退した私は、そこまで必死になって自分を追い込んだり奮い立たせることがなくなったので、見ていてうらやましい気持ちになりました。社会のなかで思うようにならないことがたくさんあるでしょうが、それを乗り越えたときの喜びや達成感は大きいし、スポーツの世界でも同じことを知ることができる。マレーシアでお会いしたみなさんが、これからもスポーツを続けていってくれたらいいですね」と振り返っていました。