【研修報告】2019年度課題別研修「港湾保安能力向上」の実施

2020年2月27日

講義風景

JICA横浜では、「港湾保安能力向上」という港湾分野の研修を実施しています。年1回の開催で、今回が15回目です。
2015年までは主にASEAN地域及びその周辺国を対象に実施してきましたが、2016年からはIMO(※1)のSOLAS条約(※2)を批准しているその他の地域にも対象国を拡大し実施しています。今年は9ヵ国から16名の研修生が参加しました。研修日数は3週間(今回は2019年11月25日~12月13日)です。

現在の世界各国で強化されている港湾保安は、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件を契機とし、2002年にSOLAS条約の付属書11章の2が改訂(改訂SOLAS条約と言い、付属書11章の2をISPS Code(※3)と呼ぶ)と採択、さらに2004年7月1日のその発効に基づいて実施されています。

広島港自動車輸出ターミナル視察

港湾保安演習実施状況

全員集合写真

本JICA研修もISPS Code発効翌年の2005年から実施され、現在に至っています。
なお、本研修には以下の目標が設定され、参加者にはその達成度が求められています。

⇒ 案件目標(研修終了時に研修実施によって達成が期待されるOutcome、すなわち参加者に対する直接的な効果・変化):参加国において港湾保安の重要性が理解され、港湾保安施策に係る課題や経験が共有される。
⇒ 単元(カリキュラムの構成単位)目標:
  ①港湾保安に関する国際条約を理解し、また港湾を中心とした輸送分野
   での保安対策の世界的動向に関する知識を習得する。
  ②港湾保安対策の実施方法についての知識とスキルを習得する。
  ③港湾保安対策の評価手法についての知識とスキルを習得する。
  ④港湾保安対策に携わる職員育成のための知識を得る。

今回も、研修生16名全員が上記の単元目標を達成しています。
研修は、前半に港湾保安全般に関する基本的な知識や日本の現状に関する講義、中間に日本の各種港湾で実施されている保安対策と保安施設の視察、後半に実習が必要な港湾施設保安評価・計画や港湾保安訓練・操練・演習などの策定演習があり、研修効果の向上を図る構成になっています。
研修内容に完成形は存在しません。毎回、改良点・改善点が指摘されています。常にベストな研修を実施すべく、今後も努力が求められます。

※1 IMO: International Maritime Organization
※2 SOLAS条約: International Convention for the Safety of Life at Sea
※3 ISPS Code: International Ship and Port Facility Security Code

(記事制作協力)一般財団法人 港湾空港総合技術センター

【画像】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
        
SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち目標16.「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」への貢献が期待される。