【実施報告】2017年度課題別研修の帰国研修員が同僚とともに2年後に再来日、自主研修を実施しました

2020年3月18日

JICA横浜では、2017年度より課題別研修「障がいのある子どもへの教育制度~特別支援教育を活用したインクルーシブ教育システムの構築」を実施しています。2017年度の同研修にモルディブから参加したMariyam Shathrath Shakirさん(首都マレにあるAminiya学校指導教諭)が、このたび、障害のある子どもたちの教育に携わる同僚教員ら11名とともに自費で再来日し、日本の取り組みを視察しました。

モルディブにおける障害のある子どもたちの教育

モルディブには特別支援学校がなく、障害のある子どもたちも地域の学校に通っていますが、多くの時間を支援学級で過ごしています。インクルーシブ教育の実現を目指し、学校現場ではさまざまな取り組みが行われていますが、障害のある子どもたちが通常学級で過ごす時間を多くする、卒業後に充実した社会生活を送ることができるようにする、等の課題もあるようです。
Mariyam Shathrath Shakirさんは、前述の課題別研修を通して学んだ日本の取り組みを、モルディブの同僚にも視察してもらいたいと考えたそうです。モルディブ各地の学校4校、幼稚園1園の教員に声をかけ自主研修を企画しました。

日本の実践を視察して

自主研修は2019年11月25日~28日に実施されました。課題別研修の委託先である株式会社コーエイリサーチ&コンサルティングが日程調整を行うとともに視察先へ同行しました。
初日は、就学前教育におけるインクルーシブ教育について理解を深めるため、東京都八王子市にある武蔵野幼稚園を訪問しました。同園では、発達に遅れや偏りのある園児も安心できる居場所を保障し、一人ひとりの個性や能力を伸ばすような指導をしています。見学時には、園児が4人一組で段ボールなどを使って動物を制作していました。小グループで課題に取り組むことで、園児は自分の考えを言葉で表現できるようになるとともに、友達の意見も受け止められるようになります。自主研修参加者からは「子どもたちが自発的にいきいきと活動している様子が印象に残った。来年は自分の働く幼稚園でも、小グループでの作品制作を行いたい」という感想が聞かれました。
2日目は、障害のある子どもたちの学校生活を支援する制度について藤沢市教育委員会からお話を伺うとともに藤沢市立羽鳥中学校を訪問しました。参加者は、就学相談の仕組みに強い関心を示しました。就学相談員による子どもや保護者との面談や、必要な支援について話し合う就学支援委員会の開催など、就学までの支援内容が参考になったようでした。
3日目は、横浜にある地域作業所カプカプを訪問しました。カプカプは、働くことやアート活動を通じて障害のある方一人ひとりが魅力を発揮できる場を作り、彼らの魅力を地域に発信することで、困難を抱える人々が生きやすい地域に変えていこうとしています。参加者は、自分たちの学校でも障害のある児童生徒が絵画やダンスで自己を表現するワークショップを実施してみたいと感じたようです。
4日目は、神奈川県立相模原中央支援学校を訪問しました。同校では社会の中で働く意欲や態度を培うことを目的に行われているキャリア教育について学びました。講義のほか、製パンや清掃等の作業学習の見学をし、自国にて大きな課題である障害のある子どもの将来に向けた取り組みについて、多くの示唆を得たようでした。

今回の自主研修は、日本で得られた自国の課題解決につながるヒントを同僚教員にも伝えたいという帰国研修員の思いによって実現しました。課題別研修の成果が広がったことで、今後モルディブにおけるインクルーシブ教育が推進されることを期待しています。

(記事制作協力:株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

【画像】地域作業所カプカプの皆さんと一緒に