【インタビュー報告】ブラインドサッカー・佐々木ロベルト泉選手がJICA横浜を訪問されました

2021年12月16日

11月26日(金)、ブラインドサッカー(パラリンピックでの競技名は5人制サッカー)日本代表として東京パラリンピックにも出場した佐々木ロベルト泉選手(パペレシアル品川所属)がJICA横浜を訪問されました。

佐々木選手はブラジル出身の日系三世。18歳の時に来日され、9年後に交通事故に遭い失明。その後、ブラインドサッカーに出会いました。今夏は東京パラリンピックに出場し、現役で活躍されています。日系人としてのアイデンティティや視力を失ってから変わった価値観、競技との向き合い方を含めた今後の展望を、JICAインターン生2名へ語っていただきました。

ブラジルから日本へ

———佐々木選手は18歳の時に来日されたと伺いましたが、アイデンティティの面で、ブラジル在住時はご自身のことは何人だと思っていましたか?

佐々木選手 日本人ですね。周りの友達からは「イズミ」と呼ばれることが多く、日本人として見られていました。でもブラジルには様々なルーツを持つ人々がいたため、何人という意識はあまりなかったですね。

———幼少期、ご家庭では日本の文化などの教えはありましたか?

佐々木選手 祖父が近くに住んでいたので、お正月にお餅をついたり、お雑煮を食べたりして日本文化に親しんできました。また、親戚が集まった際はポルトガル語と日本語が飛び交っていました。

———まさに多文化共生の環境ですね。一方、日本に来てからはどうですか? ブラジル人として見られてよかったことや苦労したことはありますか?

佐々木選手 ブラジル人はよく働くというイメージを持たれていたり、ポルトガル語に興味のある日本人と仲良くなれたりしたことはよかったです。その一方で、働いているときには外国人という理由でいろいろなことを言われることもありました。「〇〇人だから~」という見方ではなく一人ひとりを見るべきですよね。

いちばん伝えたいのはあきらめないこと

———ご自身の経験を踏まえて、多文化共生において大切なことは何だと思いますか?

佐々木選手 私は日本に来てもうすぐ25年になります。最初は言葉と文化の違いに苦労し、日本語を一生懸命勉強したことで様々な人と交流できるようになりました。(日本で暮らしていく上で)日本のルールをきちんと守ることは大切だと思います。
 また、日本の生活に慣れてきたと思ったら今度は目が不自由になりました。それまでは目で見て人を判断していましたが、見えなくなってからはまず話をして、その人の心の深いところを知るようになりました。すると友達も増え、性別や肌の色、宗教は関係なくその人の心を知ることが楽しくなりました。互いをリスペクトして話せば世界で楽しく生きることができると思います。
 何事においても一番大切なのはあきらめないことです。最初は言葉が大変でしたが、少し上達するだけで世界が広がります。目が見えなくなった時もそうでした。人生は、台風のようにダメな時があっても必ず青空が見える日が来ます。「七転び八起き」のように絶対にあきらめない姿勢を大事にしています。

パラリンピックでの経験、そして今後に向けて

———今回の東京パラリンピックに出場して、ブラジルのお知り合いから反響はありましたか?

佐々木選手 実はブラジル代表チームとはみんな友達なんです。もちろん試合中はライバルですが、試合後はポルトガル語で話して交流します。ブラジル代表は非常に強いチームで、家族のような人間関係でプロ意識が高いです。

———パラリンピックが延期になり、コロナ禍での練習で意識したこと、大変だったことはありますか?

佐々木選手 対面で練習ができないのは大変でした。でも、日本のチームメートや、ブラジルに住んでいる仲間と一緒にオンラインでトレーニングしました。フィジカル面で強くなり、対面での練習に戻ったときにはコンディショニングがばっちりでした。また、「コロナ禍でもパラリンピックができた日本は素晴らしい」と海外の友達がよく言っています。

———困難があっても前向きでいられる佐々木選手の力の源は何ですか?

佐々木選手 事故に遭った時、心臓に穴が開いて出血するという危険な状態でしたが、神様が助けてくれたのだと信じています。生きていることを毎日感謝し、神様を信じることが力の源になっています。

———これからチャレンジしたいことを教えてください。

佐々木選手 パラリンピックが終わったので、また次の大会に向けてチャレンジしたいと思っています。また、サッカーの楽しさや、ボール一つで友達ができて世界が広がることを伝え、日本にブラインドサッカーを普及させたいです。さらに、自分と同じブラジル人や目が不自由になった人に勇気を与えたいです。

【画像】佐々木ロベルト泉選手(中央)とJICA横浜インターン生
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来年20周年を迎える海外移住資料館では、現在リニューアル工事を実施中です。リニューアル後の資料館では、新たに佐々木選手のパネルも展示予定です。リニューアルオープンは2022 年4月1日の予定です。ぜひお立ち寄りください。