JICA海外協力隊OVの熱い想いが支えたパラリンピック東京2020でのチリ人パラリンピアンの活躍とボランティア事業の意義

2021年9月9日

コロナ禍の真っただ中で行われたパラリンピック東京2020でのチリ人アスリートの活躍は目を張るものがあった。男子水泳(Alberto Abarza・100m背泳ぎ・金、200m自由形・銀、50m背泳ぎ・銀)、女子砲丸投げ(Francisca Mardones Sepulveda・金)、女子アーチェリー(Mariana Zuniga Varela・銀)、女子カヤック(Katherinne Wollermannシングル200m・銅)と各種目でのメダル獲得を筆頭に、女子陸上200mやパワーリフティング女子86Kg級・男子65Kg級、カヌースプリント女子、卓球においても健闘が目立った。オリンピックのメダル獲得がゼロであったことを考えると、パラリンピックのメダル6個45位は、大絶賛に値するもので、アスリートのこれまでの努力と栄誉を讃えたい。同時に、チリが障害者スポーツを通じて障害者支援に注力していることを顕著に示す成果だと言える。

隊員OVである横川信子氏(職種:体育、ペドロ・アギレ・セルダ国立リハビリテーションセンター所属、2013年度短期、2015年度3次隊でシニア海外ボランティア、2019年度短期でシニア海外協力隊として派遣)は、予てから東京2020でチリ人選手の支援をすることが夢であったが、ついにそれが叶い、チリ水泳選手団の大会専属ボランティアとなった。隊員時代からチリパラリンピック関係者と面識や協働実績があり、成田空港へのチリパラリンピック委員会出迎え時には元同僚達との再開を果たし、その後の、水泳チームのフルアテンドの末、同チームの金メダル等獲得の瞬間に立ち会うことができ、同選手団と共に感動と興奮を分かち合った。

これまでチリ支所は「社会的包摂性を持つ持続可能かつ強靭な社会の実現」を協力の重点分野に据え、1997年から隊員を派遣し、「障害者等の社会経済的弱者の社会進出等を可能とする支援」を掲げ、社会福祉分野のボランティア派遣実績を重ね、スポーツでは、水泳を中心とした障害者向けスポーツ活動の指導や障害者水泳の発展に寄与し、障害者の社会参加や地域社会への進出を支援してきた。今回のチリ人パラリンピアンの活躍がきっかけとなり障害者スポーツの更なる発展に繋がることを期待しつつ、JICA海外協力隊の経験者がパラリンピックの選手団支援という形で元派遣国に貢献できたこと、横川隊員OVの長年の夢であった「チリでお世話になった事への恩返し」が実現し、喜びと感動を共感できた事を通し、ボランティア事業の持つ魅力と意義を改めて認知する機会となった。

パラリンピアンやパラリンピックを目指すパラアスリートの、日々の努力は並大抵のことではないだろう。ボランティア活動や我々の取組の前にも困難や障害が待ち構えていることは多い。その困難に対して、地道に日々立ち向かうことこそが、大きな成果に繋がることを、今回のパラリンピックから伺い知ることができる。パラアスリートの挑戦を陰で支えた横川隊員OVは、8年前に初めてチリに到着した時には、この日を迎えられるとは想像もつかなかったことだろう。当国パラアスリートと横川隊員OVのこれからの挑戦に期待するとともに、現在、パラアスリートと共に、奮闘している世界中の隊員にエールを送りたい。

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金メダリストAlberto Abarza選手と横川氏(左)