中南米の日系社会リーダーを囲んだシンポジウムを開催しました

2019年11月25日(月)パンダで有名なテーマパークを有す和歌山県白浜町で、和歌山県にルーツを持つ日系社会のリーダーが集うシンポジウム“中南米 ・ 多文化社会を生き抜いたパイオニアたち~ 未来への連携にむけた語らい“ ~を和歌山県中南米交流協会と共催で開催しました。

2020年1月9日

個人のリンゴ農園主としては世界一

【画像】 シンポジウムのキックオフとして最初に登壇してくださったのは9才まで和歌山県田辺市で過ごし、家族でブラジルに渡って今や一族で大農園を営んでおられる平上文雄氏の講演でした。ブラジル・南部のサンタカタリーナ州がリンゴ栽培の最適地というJICA派遣専門家の教えをもとに、熱心な研究と行き届いた管理で初めてブラジルでリンゴ栽培を成功させ、今や「リンゴ大王」と呼ばれ、個人のリンゴ栽培では世界一となりました。リンゴ農園が軌道に乗るまではエンドウ豆など露地野菜を育てて現金収入を得たというエピソードも御披露くださいました。その後は、ブドウ、キウイ、なし、フェイジョアなどの栽培も手掛けられ、現在ではワイン醸造者としてもその名が知られています。

二つの祖国

【画像】 その後ペルー、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、メキシコの県人会の代表から各国への移民の経緯や、移住先での日本人の立場や現在の県人会の状況などについて発表いただきました。日本人移住の歴史が最も長いペルーでは激しい反日運動もありながらも日系社会から政治家が誕生するなど、移住地での地位を築くため多くの努力とその結果である功績を残されたことが分かりました。ふるさとに最も強い思いを持つ「日系1世」が他界し、地域によっては日本語を話さない日系3世へと世代と混血が進み、日本における「ふるさと」や「ルーツ」が多様化する中、それぞれに二つの祖国があるように感じました。特に印象的だったのは、アルゼンチンの県人会を代表した里信ビビアンさんからの感想でした。彼女は30年前に「和歌山県海外技術研修員受け入れ事業」で和歌山県に滞在した経験がおありです。県人会世界大会を通じ当時関係した方々との再会もある中で、彼女は「親戚関係という「絆」に限定しているとどんどん交流が先細りになっていく今こそ、友人関係をはじめとする新しい「絆」を広げていきたい」とおっしゃっていました。

さらなる交流を

 コーディネータをー務めてくださった和歌山大学で移民研究の第一人者である東悦子教授は、「移住先の県人会も出身県の関係者も高齢化が進み、それぞれの県人会会員が減ってきている事、移住先にも出身地側にも言葉の課題がある事、世代の交代とともに特定の県に限定できないルーツの多様化」を共通の課題としてとらえた上で、ここ和歌山をルーツとして思いを寄せ、互いに移住した人の歴史や日系社会の現状を踏まえ、その遺産の継承と交流のより発展的な継続の大切さを確認して締めくくられました。