【草の根事業紹介】ボリビア多民族国の初等教育における総合的な学習および算数教育の向上計画

2020年1月16日

図形の概念について学ぶ教員たち。

「総合的な授業実践」に向けて案を練るグループワーク

 JICAでは、日本のNGOや大学、自治体などの団体がこれまで培ってきた経験や技術を活かして企画した、途上国への協力活動を支援する「草の根技術協力事業」を行なっています。
 草の根技術協力事業とは、JICAと連携し、団体独自のアイデアを元に、団体の技術移転による途上国住民の生活改善を実施する事業です。

【実施国】
  ボリビア
【プロジェクト名】
  ボリビア多民族国の初等教育における総合的な学習および算数教育の向上計画
【実施期間】
  2017年8月~2019年8月
【実施団体】
  国立大学法人 鳴門教育大学

ボリビアの小学校教員をサポートし児童の基礎学力向上に繋げる

図形の学習には折り紙も取り入れられています。

活動を通じて、図形「円」を学習する児童たち。

鳴門教育大学の学生もプロジェクト に参加し、現地の児童が楽しく勉強 できる学習ドリルを開発しました。

研修の修了証を手にする、サンフアン市の約80名の教員。

 古代文明が栄え、近年観光地としてウユニ塩湖が脚光を浴びる南アメリカの高地ボリビア多民族国。一部では都市化が進むものの、地方との経済格差が大きく貧困層が国全体の6割を占めています。発展の根底にある基礎教育の課題も多く、その改善による格差の是正が期待されています。鳴門教育大学は、2017年よりサンタクルス県サンフアン市において、算数教育の改善を目指す草の根技術協力を2年間実施しました。

 現地では、計算問題でのミスが多く、分数の意味や計算の仕方について理解できていない児童がいるだけでなく、図形・表の意味について理解のできない児童がほとんどであることがわかりました。また、総合的な学習が教育省によって導入されましたが、現場の教員はどのように実践してよいのか悩んでいました。そのため、市内の小学校全校(17校)の教員を対象に、算数教育(図形を焦点化)及び総合的な学習の授業実践の改善に必要となる知識・スキルを身につけ、それらを実際に活用することを目的とした活動を行いました。現地の教員と一緒に活動する中で、彼ら独自の文化や習慣を活かした教授法も考案され、より現地に根付く教育について意見を交わしました。

 2年間の活動の結果、先生も児童も楽しく算数に取り組むことができ、比較テストの結果は劇的に改善しました。今回の協力が、ボリビアの国づくりに継続的に役立っていくことを願っています。



右から3番目が石坂さん。鳴門教育大学大学院生とボリビアの協力者との写真。

文/石坂 広樹さん(鳴門教育大学グローバル教育コース准教授)
【経歴】現在の専門分野は、教育政策、国際教育協力等。JICA研修事業・技術協力に従事し、日本・中南米・アフリカ他広く調査研究を行う。
【楽しみなこと】趣味は語学・旅行・釣り。最近釣りにはまりすぎて、海の豊かな鳴門はもちろんのこと、川・湖・海があればどこでも竿を振り出す始末。 もちろん仕事でも授業のよいところ・改善点を釣り上げるべく日々精進しています。

(「徳島人」2020年1月号に掲載)