【研修報告】世界の海猿が集結!「救難・環境防災コース」~その1~

2019年12月23日

JICA横浜では、2019年9月25日から11月14日にかけて、ジブチ、インドネシア、マレーシア、モルディブ、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、スリランカ、東ティモール、ベトナムの10か国から合計14名の海上保安に携わる行政機関の職員を招聘し、「海上保安実務者のための救難・環境防災コース」を実施しました。
このコースは、海難救助、海上防災、海洋環境保全に関する国際協力枠組み及び日本の海上保安庁の組織体制及び業務を理解し、関連する知識、技能の習得だけに止まらず、国際海事機関(IMO(International Maritime Organization))のモデルコースに準じた海難救助及び油防除に係る実践的知識及び技能についても習得のうえ、研修員が自国の抱える海難救助、海上防災、海洋環境保全に関する課題や問題点を見出し、PCM手法により、解決に向け自ら参加し実施可能な行動計画を策定することを目的としています。

コースの概要

コースの前段は、主として施設見学に併せ業務説明を受ける形の研修で、先ずは日本の海上保安庁の組織体制及び業務を理解するため、運用司令センターを皮切りに、羽田航空基地、羽田特殊救難基地、横浜海上防災基地、横浜機動防除基地、東京湾海上交通センター、海上保安試験研究センター等を順次訪問しました。また、油汚染された野生動物の保護について理解するため、水鳥保護研修センターを訪問しました。
コースの中盤は、IMOのモデルコースに準じた海難救助及び油防除に係る実践的な研修が大半で、海上災害防止センター横須賀研修所においてSTCW(The International Convention on Standards of Training Certification and Watchkeeping for Seafarers)指定講習及びIMO流出油防除カリキュラムに基づく海洋汚染対策、防除訓練とJICA横浜で海上保安大学校准教授による捜索区域設定理論、IMOのTechnical Officerによる世界的なSARシステム(概要)に関する講義を受講しました。更に、大規模津波発生時における災害及び救助対応における地域連携及び対応能力の向上策について理解するため、和歌山で実施された大規模津波防災総合訓練の見学をしました。
そしてコースの終盤は、PCM研修の受講に引き続きアクションプランの作成と発表を行いました。

研修中の様子

本コースは研修期間が長く内容も盛りだくさんであるため、その一部をここに紹介します。

【羽田航空基地】
海上保安庁パイロットからの業務説明を受けた後、大型ジェット飛行機や中型回転翼航空機の機体の外観と内部の装備を見学した研修員達は、「自国の機関も、いつの日かこのような航空機を配備できるような組織にしたい!」と抱負を語りあっていました。

【画像】(左)大型ジェット飛行機(ガルフV)の説明、(右)同機内見学

特急隊基地長の挨拶と業務説明

 
【羽田特殊救難基地】
特殊救難隊員からの業務説明および装備品・救難資機材の紹介を受けた研修員の一人が、「リアル ウミザル」とささやくと、大半の者が「海猿」の映画を観たことがあるようで、一斉に同隊員への賞賛の声が上がりました。また、過去に同隊員が派遣され研修を行ったことのある国からの研修員は、「日本の特殊救難隊員は私のあこがれで目標です!」と力強く語っていました。

【画像】装備品・救難資機材の説明

 
【横浜海上防災基地】
巡視船「ひりゅう」乗組員からの業務説明に引き続き船橋内を見学中、消防船として特化された同船の消防能力に関する専門的な質問が多くなされ、さすがに各国から送り出された救難・環境防災のエリートであると頷かされました。

【画像】(左)甲板にて「ひりゅう」船長挨拶と業務説明、(右)船橋内見学と質疑応答

 
【横浜機動防除基地】
機動防除隊員からの業務説明および資機材の紹介において、研修員の関心が集まったのは、危険物の防護資機材、検知器と検知方法でした。これは、研修員の国及び所属機関においても安全に関する意識が浸透し、研修員が海の安全を守るプロフェッショナルとして着実に育ってきていることが実感できました。

【画像】(左)危険物の防護資機材の説明、(右)危険物の検知資機材の説明

 
【海上保安試験研究センター】
同センター職員から業務説明および海上浮流油の分析及び鑑定に関する研修を受けた研修員の多くは、化学の知識の必要性を痛感しているようでした。

【画像】以上、海上保安庁の各組織を見学中は、研修員がさまざまな質問を多数投げかけ、講義や説明にあたる海上保安庁職員が持ち時間を超えて対応する場面がしばしば見受けられ、同庁に対する関心の高さがうかがわれました。

(記事制作協力)公益財団法人 海上保安協会
 

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持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち、目標 14. 「持続可能な開発のための海洋と海洋資源の保全と持続可能な利用」および目標 16. 「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」への貢献が期待される。