【教師国内研修】実践授業レポート from 横浜市立東野中学校(鳥原大嗣教諭)

2022年3月23日

JICA横浜では教員の方々を対象に教師国内研修※1を実施しています。今年度は7名の方々にご参加頂きました。実践授業とは、このJICA教師国内研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業・ワークショップを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。今回は横浜市立東野中学校の鳥原先生からのレポートです。

2021年12月23日、道徳の時間に実践授業を行いました。参加者は計33名で、4~5人ごとのグループで行いました。また、同じ学年の他クラスの先生方にも協力していただき、今回は中学校2年生の全4クラスで実施しました。

※1 コロナ禍を踏まえJICA教師海外研修の代替として2020年度より実施。通年のプログラムで研修を通してワークショップ教材を作成頂いております。

授業を行うにあたって

授業中の様子

教師国内研修に参加して、日系人や日本人移住者の方々、外国につながる子どもたちなど、マイノリティーの人々が、周りの人と違うことで不安な気持ちを抱いたり、多くの苦労をされていることについて学びました。

そして、そういった人たちのために自分にできることを考える中で、私たちの身近にも外見では分からないが、悩みや不安を抱えた人がいることに気づきました。その結果、子どもたちに身の周りの友人の目に見えない悩みや不安について考えてもらうことが、ゆくゆくは日系人や日本人移住者の方々、外国につながる子どもたちなど、マイノリティーの人々の悩みや不安を和らげ、「多文化共生」につながっていくのではないかと考えました。

そこで、今回の授業が子どもたちにとって「違いを自分事として捉え、相手の立場に立って、相手を思いやるきっかけ」になって欲しいと思い、授業に臨みました。

実践授業の概要

外見カード

内面カード

〇授業のねらい
 見た目からは分からない悩みや不安を理解するために、自分にできることを考える。 

〇授業の流れ
①1グループ5人程度のグループに分かれてもらい、ピクトグラムが書かれた外見カード1枚、内面カードと呼ばれる「他人には言えない悩みや不安」が書かれたカードを1枚生徒に配布しました。

②生徒には外見はピクトグラム、内面は内面カードの人物になりきってもらい、行き先カードと呼ばれる目的地が書かれたカードを使って、グループで遊びに行く場所を話し合ってもらいました。

③自分のグループのメンバーの内面カードの内容がどんなものかを予想し合いました。その後、内面カードを見せ合い、周りの人の悩みや不安について思いを巡らすことが難しいことを確認しました。そして、どうしたら相手の悩みや不安について思いを馳せることができるのか考えてもらいました。

④1回目のワークショップを通して考えたことをもとに内面カードを交換して、再度ワークショップを行いました。その後、振り返りを行い、自分の身の周りにはどんな悩みや不安を考えている人がいるのか、その人達のために自分にできることは何かを考えました。

生徒の感想

行き先カード

・相手に気を配らなければいけないことには、怪我などの見た目で分かることと、言葉にしないと分からないようなことがあると分かったので、相手の気持ちを考えたり、敏感に雰囲気を感じ取ったりしていく必要があると分かった。このようなことができれば、いい人間関係が築けると思う。

・悩みは誰でもかかえているものだが、大きなものじゃなくても誰かに言うと、変な目で見られたり、友達がはなれていくかもしれないと思って言えないこともあると思う。悩みなんて簡単に打ち明けられるものではないので、それを考えて行動できるようにしていきたい。

実践を終えて

カードを使ったゲーム形式で、どこまで授業のねらいに近づくことができるかという不安もありましたが、子どもたちの振り返りを見ていると生徒に多くの学びや気づきがあったことを嬉しく思うとともに感謝の気持ちで一杯になりました。子どもたちには今回の授業を通して、自分の身の周りにいる困っている人や不安を抱えている人に気づいて、そっと手を差し伸べてあげることができる人になって欲しいと思います。