【イベント開催報告】難民を知る2019~国境を越える、スポーツの絆~

2019年7月5日

【画像】6月20日の難民の日にあわせて例年開催している難民の日イベント。今年はスポーツをテーマに映画上映会とトークセッションを行いました。前半で上映した『ナイス・ピープル』はスウェーデンに暮らすソマリア難民がスウェーデンの伝統スポーツ「バンディ」に取り組む姿を描いたドキュメンタリー映画です。また後半のトークセッションでは、元青年海外協力隊員で現在ブルキナファソ野球チーム代表監督を務める出合祐太さん、国連UNHCR協会で難民支援に取組まれている山下芳香さんをゲストに迎え熱いトークを繰り広げました!

【第一部】映画上映会『ナイス・ピープル』

【画像】イベントの第一部では映画『ナイス・ピープル』を上映。『ナイス・ピープル』はスウェーデンの田舎町ボーレンゲに住むソマリア難民を描いたドキュメンタリー映画です。彼らはとある実業家のアイディアで、スウェーデンの伝統スポーツであるバンディのチームを結成します。ソマリア代表チームとして世界選手権を目指す彼らが次々に起こるトラブルに悪戦苦闘する中で、異文化との関わりや難民として暮らすことの難しさ、祖国に残した家族への思いが見えてきました。

トルコ・ブラジルでの経験から(斉藤所長より)

またトークセッションに先立って、JICA北海道所長斉藤よりJICAトルコ事務所、ブラジル事務所時代での経験をもとにご挨拶させて頂きました。トルコ赴任中、隣国シリアからの難民キャンプを訪問した際のエピソードが披露され、日本で勉強したいという若者に出会い感銘を受けた話が紹介されました。また北海道は今年、ブラジルへの移住100周年を迎えたそうです。戦後、ララ物資等の国際的な支援によって再興を遂げた日本にとって他人ごとでない問題として国際協力を考えなければならないと会場に呼びかけました。

【第二部】対談 スポーツと国際協力/難民キャンプレポート

【画像】第二部では国際協力に携わる二人のゲストを迎え、トークセッション(進行役:友成晋也JICA南スーダン事務所長)を行いました。出合祐太さんからはこれまで野球を通した国際交流に携わってきた経験のご紹介がありました。出合さんは24歳の時にブルキナファソでJICAのボランティア事業(青年海外協力隊)に参加しました。帰国後も富良野でパン屋を営みながら、ブルキナファソの野球チームを日本に呼び寄せるなど野球を通じた両国の架け橋となっています。現在は北海道ベースボールアカデミーを設立し、海外の文化が日本で受け入れられる環境の構築に力を入れているそうです。

また国連UNHCR協会の山下芳香さんからは昨年アフリカ・ウガンダの難民居住区を訪問した際のお話がありました。元々難民発生国だったウガンダですが、難民に対する寛容な政策や、北に南スーダン、西にコンゴ民主共和国といった難民発生国を擁していることからいまでは世界三位の難民受入れ大国になっています。またウガンダの難民居住区で印象に残った女性のお話をしてくださいました。彼女は南スーダンから逃れてきた難民でしたが、子供の数は22人!実は全員がご自身のお子さんというわけではなく、支援の受けられない子供たちを育てているそうです。本人も余裕がない中で多くの子供たちに支援の手を差し伸べる姿に山下さんは感銘を受けたそうです。

最後に進行役の友成南スーダン所長よりスポーツを通じたJICAの取組みについて紹介がありました。ウガンダの隣にあり、370万人の難民・国内避難民を生んでいる南スーダンでは民族間の対立が続いており、JICAはスポーツを通じた民族融和の取組みに協力しています。その一環として2016年にはサッカー、バレーボール、陸上などを通して民族融和を目指し南スーダン政府が開催した全国スポーツ大会「National Unity Day(国民結束の日)」の開催を支援しました。またその後JICAはリオ・オリンピックへの陸上選手の参加も支援したそうです。

トークセッションの後にはJICA北海道の野吾職員がオリジナルSDGsソングを披露し、会場は「SDGs!」の掛け声と手拍子で大盛り上がりとなりました。SDGs(持続可能な開発目標)は世界が抱える貧困や不平等、環境問題を解決するため国連で定められた17の国際目標です。野吾職員は17の目標を親しみやすくオリジナルの歌に込め、各地のイベントや講演会などで披露しています。

また会場ロビーには国連UNHCR協会、ブルキナファソ野球を応援する会、山口ケニアの会、みんたる、Peace(敬称略)のブースが設けられ、フェアトレード商品の販売や難民支援活動の様子が紹介されました。ブース会場は多くの参加者で盛り上がり、盛況のうちにイベントを終えました。来場者からは「スポーツで民族が一つになれるという発想は新鮮だった」、「様々な壁を越える一つの手段としてのスポーツを認識するきっかけとなった」といった声や、「難民に関する報道が減少してきている中、難民の方々への思いを改めて思い起こすことができた」などの感想が寄せられました。
              (文責:JICA 社会基盤・平和構築部 富重博之)