第10弾SDGsラジオ! 北海道発の国際理解教育で、世界と日本と自分を知ろう!

2019年11月20日

出演者全員で

札幌市の地域ラジオ番組、FMアップル「香るパラダイス」がJICA北海道とコラボ。毎月一回の放送で、SDGs(持続可能な開発目標)と国際協力について発信してきました。
第10弾のSDGsラジオ(11月13日放送)、前半は北海道教育庁(北海道教育委員会。以下、「道教委」))生涯学習課と高校教育課からゲストをお招きして道教委の取組みについてお話しいただき、後半では、JICAの「NGO等提案型プログラム」で事業で教材開発を進める北海道開発教育ネットワーク(D-net)の先生方から、ベトナム・ラオスを取材して現在開発中の教材について紹介していただきました。

北海道の子どもたちに、世界を知り、活躍してもらうための取り組み色々!!

【画像】道教委の高校教育課で高校生のグローバル人材育成に関わる古御堂さんは、JICAの「教師海外研修」に参加してガーナで国際協力の現場を視察するなど国際派。高校生向けの事業として、オールイングリッシュで3日間を過ごす「グローバル人材育成キャンプ」やカナダやハワイの高校と「高校生交換留学促進事業」を実施しています。グローバルキャンプは道内4ヶ所で開催、年間120名の高校生が参加し、カナダの交換留学は2ヶ月間、お互いの国でホームステイをするなど学びの多い体験を提供しておられます。国の目安として、高校時代に1回、大学で1回、社会人で1回の海外体験をすることが推奨されているという話も教えてくださいました。

生涯学習課で子どもたちの体験活動事業やユネスコスクールを担当する本田さんからは、まず道内6ヶ所にあるネイパル(道立青少年体験活動支援施設)のご紹介から始まりました。地域の自然や歴史、企業、防災、環境保全など様々なテーマでの体験活動ができるネイパルでは、2020年度からSDGs普及に向けたプログラムも新設予定。「ネイパルSDGs宣言」ではネイパルの教育活動がどのSDGsにつながるかビジュアル的に示していくそうです。

また、ネイパル深川で行われた中高生向けのジュニアリーダーコースでは、D-netの先生が「コンビニから考えるSDGs」というオリジナル教材を紹介してくださったとのこと。コンビニの店内にある簡易包装やフェアトレード商品、廃棄される食品などの写真からSDGsとの関連を考えるという教材で、自分たちにとって身近なことから世界を見つめていくことを子供たちに体感してもらえるように工夫しています。

今後、さらにD-netと道教委との連携を進めながら、先生方が開発した教材が道内に広がっていくよう、JICAもバックアップさせて頂きたいと思います!

これからは「納得解」を探すための教育!

【画像】後半は、JICAのプログラムでベトナム・ラオスに行って国際理解教育を進めるための教材開発を進めているD-netの先生方3名がゲストです。開発中の教材をきっかけに、様々なお話しが飛び出しました。

渡辺道治先生(札幌市立屯田西小学校、小6社会科):
世界でも一、二を争うエビの大量消費国、日本。その9割が東南アジアから輸入されていて、養殖のためにマングローブ林を伐採したせいで津波被害が甚大になった。どうしたら持続可能な社会になるかを考える授業にしたい。

岡崎綾先生(2009~2011年、ラオスのシェンクワン県で青年海外協力隊として活動。江別市立江別第二中学校、中3理科):
ラオスの首都ビエンチャンで、茶色いメコン川の水が浄水場できれいになって飲料ボトルに詰められていく様子に感動して、これを伝える教材を開発予定。これまで学んだ知識を活かして持続可能な社会に向けての提言をまとめる単元で総括したい。

柴田峰子先生(札幌市立札苗中学校、中2国語):
ラオスでは上水道が整備されているが下水処理がほぼされていないという現状を知った。処理場を整備するのはお金がかかるので、違う形で自分たちにできることを考える授業を作りたい。環境問題について自分たちの考えを意見文としてまとめて新聞などに投書してみる活動を予定。

どれも受けてみたい授業ですね!

渡辺先生がすでに授業で行っているのはチョコレートが題材。写真を見せてどの商品を買うか問いかけるのですが、授業の途中でフェアトレードのラベルのことを教えると、改めて写真を見せた時に生徒たちは「量が少なくてちょっと高いけどいい商品を買いたい」と言ってちゃんとフェアトレードのチョコレートを選ぶそうです!
岡崎先生は、ブラジルで貧困にあえいでいる農家が作った大豆が、私たちが食べている家畜の飼料になっている事実を子どもたちと学んだ時の衝撃を話してくださいました。

筆者も大学生向けの講義でフェアトレード映画の予告編を学生に見せて、コスパ重視で購入している商品のせいで途上国の人たちや環境を犠牲にしているかも知れないと話したところ、「何を買ったらいいのか分からなくなりました」という感想文を出した学生がいたことを紹介しました。アルバイトなど自分でお金を持つようになる世代ゆえの切実な悩みかも知れませんね。
それに対し、今回のラジオ出演者の皆さんは口をそろえて「迷いや悩みが生まれることが学び」だと言います。正解を知りたがる生徒たち。でも正解は自分が決める時代。モヤモヤ感を持って帰ってもらう、自分なりの「納得解」を見つけようと模索することが大事で、それは後になって行動に現れる。

これに関連して渡辺先生から、世界経済フォーラムが予想した2020年に求められるスキルは、①複雑な問題解決力、②クリティカルシンキング(批判的思考力)、③クリエイティビティ(創造力)だと言われていることが紹介されました。65%の子どもたちがいま存在しない職業に就くと言われている。早く大量に答えを出すのはAIの得意分野で、多様な価値観のなかで考えていく時代。大学入試も変わっていくので教育のありかたも変わっていかざるを得ない。
先生方が訪問した開発途上国の子どもたちは勉強することが楽しいというけれど日本の生徒は「つまらない」という。それはもしかしたらバランスが取れた「同じ」を教育で求められているせいかも知れない。違いを楽しむことが求められていく社会で、長所を伸ばしていく方向にシフトする選択肢もありうるようです。

柴田先生は、自分たちも経験したことのないこれからの時代をどう生きるか、どんなキャリア観を持っていくか、生徒たちとともに学びながら考えていきたいと話してくれました。

海外に出ると日本を知る機会になる。日本の良さを知り、課題にも気づく。
国際理解教育は、将来を担う若い世代に「気づき」の機会を与えてくれる場なんですね。
D-netの先生方は、インド、タイでも取材を行って国際理解教育の教材事例集を作りました。来年度のプログラム期間終了までに、この開発教材を道教委や様々なアクターの方々とコラボしながら、さらに道内に拡げていきたいとJICAでは考えています。教材の活用や講師派遣の希望がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください!

                              (文責:JICA北海道 市民参加協力課 野吾奈穂子)