インドネシアのコールドチェーン(ワクチン保管専用冷蔵庫・冷凍庫など)の適正な使用・維持管理に向けてオンラインセミナーを開催しました

2022年3月28日

インドネシアでは、2022年当初から新型コロナウイルスのオミクロン変異株による感染が拡大し、2月16日には全国の新規感染者数が64,718人と過去最多を記録するなど深刻な状況となりました。その後、3月24日時点では全国の新規感染者数は約5,800人と一定の落ち着きを見せていますが、今後も警戒が必要な状況です。

新型コロナウイルス感染症は通常の予防接種にも影響を与えています。同国の小児に対する定期予防接種である5種混同ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、B型肝炎、インフルエンザ菌B型)やMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)について、新型コロナウイルス感染症拡大後の2020年5月における接種率が、2019年の同時期における接種率と比べて35%低下したとの報告もあり、小児の健康や成長にも影響を与えていることが懸念されています。

このような状況から、インドネシア保健省はコロナ禍で低下した予防接種率を回復(キャッチアップ)し従来の状況を取り戻すため、全国的な予防接種キャンペーンを実施しています。

JICAはインドネシア保健省の取り組みを支援すべく、技術協力プロジェクト「インドネシア国新型コロナウイルス及びその他感染症ワクチン管理能力強化プロジェクト」を通じて、電圧の変動や停電があっても内部温度を適正に保つことが可能なワクチン保管専用冷蔵庫「アイスライン式冷蔵庫」330台(デンマークVestfrost社製)の調達を、ユニセフ協力のもと行っています。また、冷蔵庫本体だけでなく電圧を安定させ温度を訂正に保つための装置や、温度監理を行うためのモニタリング装置なども同時に供与する予定です。アイスライン式冷蔵庫は、小児に対する定期予防接種ワクチンだけでなく、冷蔵温度(2~8℃)で保存可能な、一部の新型コロナウイルスワクチンの保存にも適しています。

2022年3月23日、24日の2日間、上記の機材の供与に先立ち、JICA専門家(冷蔵空調技士、冷媒フロン類取り扱い技術者)がインドネシア保健省の疾病予防対策総局と協働し、新型コロナウイルスワクチンの適正な温度管理、アイスライン式冷蔵庫の特徴や日常保守管理などに関するオンラインセミナーを開催しました。

セミナーにはアイスライン式冷蔵庫を使用する病院の医療従事者、州保健局の予防接種行政官、コールドチェーンや医療機器の修理技術者など、2日間で全国から800名以上が参加しました。

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本セミナーでは、JICAがプロジェクトを通じて供与を行う予定のVestfrost社や、世界的なワクチンコールドチェーン機器の製造販売会社であるB Medical Systemsの現地代理店によるメンテナンスなどのデモンストレーションなどが行われました。実際に製品を研修会場に持ち込み、冷蔵庫の基本的な説明や機能、日常保守管理、修理体制などに関してカメラで投影しながら実演することにより、機材を扱う参加者にも理解しやすいよう配慮しながら実施されました。

また、セミナーでは、講師としてWHOインドネシア事務所、ユニセフやクリントン財団から専門家を招聘し、各組織の新型コロナワクチンの接種拡大向け支援、定期予防接種の質の改善やコールドチェーン機材の支援に向けた技術支援や各種評価活動の情報共有を行いました。

さらに、インドネシアの国営ワクチン製造会社Bio Farma社による新型コロナウイルスワクチンの保存やコールドチェーン機材の紹介が行われたほか、超低温冷蔵庫や検査用機器を製造販売し、インドネシアに製造拠点を有する日本のPHC株式会社が超低温冷蔵庫の原理や構造、使用方法や日常保守に関する講義を行いました。

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参加者との質疑応答のセッションでは、ワクチンコールドチェーンに関する実務的な質問だけでなく、アイスライン式冷蔵庫に関する不足の現状、老朽化・故障機材が多いといった課題のほか、新型コロナワクチンの適正な保管や廃棄率を減らすための研修、技術者向けメンテナンス研修の実施支援の要望など、積極的な意見交換が行われました。保健省からも、多くの機材やワクチンが導入されているにも関わらず、2013年以降、更新がされていないマニュアルの作成についての要望が挙がるなど、積極的な議論が交わされました。

JICAや他のドナーの支援などにより新型コロナワクチン接種対象年齢層の拡大や追加接種の実施に伴うワクチンコールドチェーン機材の整備が進む中、機材の適正な使用及び維持管理の重要性が増しています。

JICAはインドネシアを含む東南アジア諸国における新型コロナワクチンや定期予防接種率の向上、ワクチン品質管理の強化を支援すべく、機材供与と技術支援のスキームを組み合わせた効果的な取り組みを継続していきます。