コミュニティ森林火災予防プロジェクト署名式典の開催

2022年7月15日

リアウ・西カリマンタン・中央カリマンタン州のパイロット地区で森林・泥炭地火災防止を推進

国際協力機構(JICA)による技術協力プロジェクト「森林土地火災予防のためのコミュニティ運動プログラム実施体制強化プロジェクト」について2022年7月13日に、環境林業省で署名式典が開催されました。
インドネシア政府を代表して環境林業省アグス気候変動総局長、日本政府を代表して在尼日本大使館長谷川書記官とJICAインドネシア事務所所長の安井が署名式典に出席しました。

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JICAインドネシア事務所長 安井毅裕(左)、Agus気候変動総局長(右)

インドネシアは、世界第3位の熱帯林面積を有する国であり、熱帯林は野生生物の生息地として生物多様性の維持に貢献するとともに、炭素排出の吸収にも寄与しています。近年、森林火災や泥炭地火災を含む森林減少・劣化への圧力が高まっており、その対策が喫緊の課題となっています。

JICAは、1996年から2009年まで3フェーズにかけて森林火災対策のための技術協力を実施しました。
さらに2009年から5年間実施した「インドネシア国泥炭・森林における火災と炭素監理プロジェクト」では、コミュニティベースのアプローチを重視すると共に消火の実施部隊である消防隊のファシリテーション能力を向上させ、地域住民を巻き込んだ森林・土地火災予防メカニズムの構築に貢献しました。

その結果、消防隊員、県普及員、村の住民から構成されるチームが展開した活動は、対象村落住民による火入れ行為の減少に効果的に作用しました。また、消防隊に対する指導者研修にて展開したカリキュラムとシラバスがインドネシアの公式な研修カリキュラム・シラバスとして認められました。

一方で2015年に発生したスーパー・エルニーニョの影響により、極度に乾燥した森林・泥炭地では大規模火災が発生し、煙霧(ヘイズ)を発生し、同国民への呼吸器疾患の発生をはじめ、航空機の運行障害のための欠航等、近隣諸国への越境被害をもたらしており、森林・泥炭地火災防止とその対策は、引続きインドネシアにおける重要な課題に位置づけられています。なお、日本の国立環境研究所の調査によると2015年9~10月の期間において東南アジア島嶼地域で発生した大規模火災からのCO2放出量は273Tg(炭素換算)と推定され、この量は日本の年間の放出量に匹敵するものです。

インドネシアでは森林・土地火災の発生防止をより広域かつ効果的に推進することで、火災に起因するGHG排出を抑制し、気候変動対策を推進しなければならないという課題がありますが、政府は地域コミュニティと協同しながら森林火災予防・対策を実施する制度を整備するも十分機能するに至っていないため、政策レベルとコミュニティレベルでの双方向支援を唯一行っているJICAの協力が重要になります。

今回、新たに署名されたプロジェクトでは、これまで25年間にわたりJICAが実施してきた様々なスキームでの協力の成果を活かし、インドネシアにおいて特に泥炭が広範囲に分布し、政策面でも優先度の高い対象サイトであるリアウ、西カリマンタン、中央カリマンタンの3州をモデルとし、森林・土地火災の発生防止に係る実施体制の整備を県レベルで展開し、同国のGHG排出抑制に対処するものです。前プロジェクト同様に、コミュニティ活動をベースにしながらも、泥炭水位管理や代替農業の提案など火入れを行わなくても、住民が持続的に生計向上に取り組めるような新たなコンポーネントを含め、それらの経験を国家レベルで共有することを目指すというフェーズが展開されます。署名式典の挨拶で、安井所長は、「JICAは、インドネシアにおいて、これまで25年以上にわたって森林火災予防への協力を行ってきた。近年は科学技術の知見を用いて泥炭地モニタリング・管理についても支援を行っており、気候変動に対する国際的な危機意識が益々高まる中、これらの協力のアセットを最大限活用し、森林セクターにおける気候変動対策への支援を強化していきたい」と本事業の意義を述べました。

本件に関するインドネシア国内問合わせ先

気候変動・森林分野について

JICAインドネシア事務所担当 井上
電話番号:+62-21-5795-2112(ex.616)
メール:Inoue.Erika3@jica.go.jp

広報について

JICA Indonesia事務所広報担当 プトリ
電話番号:+62-21-5795-2112(ex.222)
メール:putrisiahaan.in@jica.go.jp