JICAが母子手帳の関係者会合を開催しました

2019年6月21日

2019年6月21日、ドゥシャンベ市内にて、JICAが主催する母子手帳の関係者会合が開催されました。

日本が発祥の母子手帳は、妊娠中の母体と胎児の状況や出産時の母子の状況、子どもの成長・健康の状況が記録された家庭で保管する冊子です。母子が保健サービスを受診する際、医療機関や保健医療従事者に手帳を提示することで、個人の健康記録に基づいた母子継続ケアが可能となります。

JICAは世界各地で母子手帳の作成や導入を支援し、母子手帳運用のための指針作成や、保健医療従事者への研修などを行ってます。識字率の低い国では多くのイラストを母子手帳に取り込み、わかりやすくしたり、多民族国家では複数の言語の母子手帳を発行したりと、支援対象の国の文化の背景にあわせて支援をしており、JICAの協力により、世界29か国で年間900万冊もの母子手帳が発行されています。

タジキスタンでは、2015年頃から本格的に母子手帳の開発が始まり、2016年から複数の開発援助機関の支援のもと、一部の行政郡にて母子手帳の試験運用が行われています。JICAも、保健医療従事者向けの指針作成や、母子手帳国際会議への関係者の招へい、インドネシア第三国研修や関連の課題別研修などを通して、タジキスタンの母子手帳を支援しています。

今回、開催された会議は、これまでの試験運用の進捗と課題を関係者間で共有し、確認すること、また、日本や他国の経験と学びをふまえて、今後タジキスタンでのより効果的な母子手帳の運用と全国展開に向けた意見交換をすることを目的としています。

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6月21日母子手帳の関係者会合【ドゥシャンベ市内】

会議は、保健社会保護省の母子保健局長が司会進行を務め、同省職員のほか母子手帳実施機関であるファミリー・メディスン・センター、国際会議や関連のJICA研修参加者、母子手帳を支援している開発援助機関ら総勢30名以上が参加し、熱い議論を交わしました。JICA本部からは尾﨑敬子国際協力専門員も参加し、母子手帳を取り巻く世界情勢や他国の事例紹介、タジキスタンの母子手帳の課題の整理、今後の普及促進に向けた技術的助言などを行いました。参加者からは、母子手帳の運用方法の標準化をとおした地域差の是正、幅広い関係機関の巻き込みと調整メカニズムの強化、タジキスタンの母子のニーズに見合った内容の改訂等が提案されました。

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6月21日(右)母子手帳の関係者会合で発表する尾﨑専門員(左)JICAタジキスタン事務所 井上次長【ドゥシャンベ市内】

また、尾﨑専門員は、同会議の前日6月20日、母子手帳の試験運用を実施しているルダキ郡を訪れ、母子手帳の運用状況や普及・定着具合について、保健医療従事者や妊婦への聞き取り調査をしました。家庭では、家族と一緒に母子手帳が読まれていることや、妊婦健診や予防接種等でヘルスセンターを訪れる母子は皆、母子手帳を持参していることが確認され、病院では、出産時の母子の状況がきちんと母子手帳に記録されていました。さらに、母子手帳が対象のすべての母子に配布されていること、また、出産時に病院に持参していることをモニタリングするための記録が医療施設に保管されており、これを見た尾﨑専門家は、「スタッフが自主的に記録しており、感動しました。」と話していました。

タジキスタンの母子手帳は未だ試験運用の段階にありますが、着実にその成果は生まれてきており、これからも保健社会保護省らを中心として、母子手帳の運用改善と普及に向けた取り組みが益々推進されることが期待されています。

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6月20日(左)母子手帳を利用している母子に聞き取りをする尾﨑専門員【ルダキ郡のヘルスセンターにて】