2017年8月16日
皆さんはご自身のお住まいの地域のハザードマップをご覧になったことがあるでしょうか?ハザードマップは市町村ごとに作成され、災害に対する事前の備えや災害時の対処方法・避難場所等の情報が記載されたものです。最近でこそ様々な国でハザードマップが作成されるようになってきていますが、こうした取り組みは日本が率先して行ってきた災害対策の一つです。現在ニカラグアでは、津波ハザードマップを作成および普及するための取り組みをニカラグア国家災害管理・防災システム局(CD-SINAPRED)と進めており、この度防災関係省庁を招いた津波ハザードマップ作成ワークショップが開催されました。
同ワークショップはこれまでに6月14日と8月16日の計2回実施され、第1回は、裨益者である住民がどのように情報を受け取り(或いは曲解し)行動するのかを考慮した情報の提供が求められることなど、ハザードマップの現状と課題について日本の経験が共有されました。例えば、東日本大震災における「釜石の奇跡」でも知られる釜石市防災教育の津波避難三原則のひとつに「ハザードマップを信じるな!」があります。これは、ハザードマップが様々な想定結果を組み合わせた一つの結果でしかなく、それ以上もそれ以下の津波も起こりえることへの問題提起であり、ハザードマップへの過度の信頼・依存を戒めています。大きな津波はいつでも起こりえるのだから、ハザードマップの色が付いているかどうかに関係なく、「揺れたらすぐ逃げる」を実行し、より高台に避難する必要があり、ハザードマップはこうした住民行動を推進・誘発する情報メディアとしての働きが期待されます。
第2回は、日本のハザードマップの経験を踏まえながら、ニカラグアで各省庁の保有する情報を使ってどのようなハザードマップができそうかを共有し、ハザードマップの役割について議論しました。そして、ハザードマップは住民への災害情報の提供として使えるほかに、行政機関の意思決定や対策の基準にも使えることなどが確認されました。また、対象となる住民も地元住民なのか訪問客(観光客等)なのか、或いは行政向けなのかで掲載すべき情報が異なることなども議論されました。印象的だったのは、統計局が精度の高い国勢調査結果を持っているため、津波の想定被災人口や被災家屋数の算出にも使用できる可能性が出てきたことです。
今後は、ニカラグアの観測機関であり、津波シミュレーションを行うニカラグア国土調査院(INETER)とも協力しながら、ニカラグア版津波ハザードマップを作成し、津波対策の推進と被害者軽減への取り組みに活用していく予定です。
防災機関CD-SINAPRED職員によるワークショップ開催の挨拶
日本人専門家によるハザードマップの現状と課題の共有
日本人専門家をファシリテーターとして参加者との議論を実施
日本人専門家によるハザードマップ案(イメージ)の共有
津波ハザードマップ(案)のイメージ