2018年10月25日
1902年10月25日、グアテマラ共和国西部にあるサンタ・マリア火山(Santa Maria Volcano)が大噴火しました。この大噴火の日に合わせ、噴火災害116周年を記憶する取組みの一環として、2018年10月25日、サンティアギート火山周辺のコミュニティであるサン・マルコス・パラフノフ(San Marcos Palajunoj)において、日本人専門家チーム、コミュニティ防災組織及び同コミュニティの学校、そしてグアテマラ国家防災局等が協働で小規模避難訓練を実施しました。
1902年のサンタ・マリア火山大噴火では火山周辺で3000名以上が犠牲になりました。
この噴火により、サンタ・マリア火山の南側が崩れると同時に、サンティアギート(Santiaguito)溶岩ドーム・火山が形成されました。
サンタ・マリア火山は噴火活動を停止しましたが、新たに形成されたサンティアギート火山は1929年の大噴火も含めて、2018年の現在まで活発な活動を継続しています。
今回のサン・マルコス・パラフノフコミュニティでの避難訓練は、コミュニティ防災組織の初動能力を強化する事が目的として設定されました。
人口約3000名の同コミュニティから、児童生徒を中心に約430名が参加した避難訓練となり、この避難訓練に合わせて地元の大学と共同で設置した警報発信システムも作動状況が確認され、コミュニティに警報の信号を周知する良い機会となりました。
今回の避難訓練では噴火シナリオを設定して訓練を行いましたが、そのシナリオでは2014年のサンティアギート火山の噴火規模を想定し、火砕流の影響がわずかにコミュニティに及ぶという設定として、日本人専門家チームのインプットを受けたうえで、カウンターパート機関であるグアテマラ国家防災調整庁(SE-CONRED)職員がシナリオの作成を担当しました。
適切な避難ルートの確保、コミュニティ防災組織の各自の役割や参集のタイミングなどの課題が洗い出され、避難訓練実施後の評価会では、日本人専門家チームから、実効的な避難を達成するための改善点がコミュニティ防災組織に提案されました。
今回の訓練は、コミュニティ防災組織が、避難に際して外部の支援を得ずに主導的役割を担って避難を実現できる、という目標に向けた実りある訓練になりました。
コミュニティ防災組織の構成員も、訓練開始前は不安や戸惑いを感じていたようで、消極的な態度で準備会合に関わっていたように見えましたが、避難訓練を終えて、コミュニティ防災組織の構成員だけで住民や児童生徒の安全な移動を実現したことから「今回の訓練から多くを学んだ」「訓練の重要性を認識した」といった感想とともに、「やって良かった」という自信と参画への積極的な姿勢が見えました。
別のコミュニティでも同じような感想が聞かれ、避難訓練の実施を通じてコミュニティ防災組織のエンパワメントが促進されることを確認できました。
今後も災害リスクの高い他のコミュニティに対しても、同様の避難訓練実施支援を行っていく予定です。
作成:伊良部 秀輔(長期専門家)
左手奥に見えるサンティアギート火山を見守るコミュニティのボランティア監視員(写真右)
避難訓練前の準備会合で説明する日本人専門家チーム
警報をうけて、コミュニティからより安全な場所へ避難する参加者。写真奥にはサンティアギート火山から噴煙が上がるのが見える
コミュニティ防災組織のメンバーのみで避難者の数を数える訓練の様子と、それを見守る防災機関職員(写真右)