プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ダッカ交通安全プロジェクト
(英)Dhaka Road Traffic Safety Project

対象国名

バングラデシュ

署名日(実施合意)

2021年1月25日

協力期間

2021年7月13日から2025年3月28日

相手国機関名

ダッカ首都警察

背景

バングラデシュのダッカ首都圏は、1,600万人以上の人口(バングラデシュ統計局、2015年)を擁するバングラデシュ最大の都市である。バングラデシュにおいては、2000年以降に年平均6%の実質GDP成長率を達成する中、地方部から都市部への人口流入が進み、2025年にはダッカ首都圏の人口は2,500万人になると予想されている(JICA国別分析ペーパー、2019年)。他方、ダッカ首都圏では、JICAや他援助機関によりMRT(都市高速鉄道)やBRT(バス高速輸送システム)の整備が進められているものの、現時点では都市内移動のうち99.6%を道路交通に依存している(バングラデシュ道路交通局、2017年)。また、こうした経済成長及び人口増加に伴い、自動車保有台数は2013年から2018年の間に約20万台から100万台の5倍に増え(ダッカ首都警察、2018年)、その結果、ダッカ首都圏における道路交通渋滞及び道路交通事故の問題が深刻となっている。バングラデシュ内に唯一存在する事故研究所である、バングラデシュ工科大学事故研究所(Accident Research Institute。以下、「ARI」)によると、2010~2015年の交通事故件数(死傷者を伴い衝突事故も含む)累計は、バングラデシュ全体で11,427件に対し、ダッカ首都圏が2,292件で全体の約20%、交通事故死者数累計はバングラデシュ全体で11,605名に対し、ダッカ首都圏が1,732名で全体の約15%を占めている(2020年)。同期間の平均事故件数はダッカ首都圏が382件で1番多く、2番目に多い地域と比較をすると5倍の差がある。
かかる状況下、バングラデシュ政府は国家道路交通安全にかかる戦略計画として「National Road Traffic Safety Strategy Action Plan」を1997年以降計9回策定し、省庁横断的に交通安全に関する取り組みを進めている。2018-2020年を計画対象年次とした第8次アクションプランでは交通事故件数の半減を目標に掲げていたが未達に終わった為、第9次アクションプラン(計画対象年次2021-2024年)においては2024年までに交通事故件数を20-25%減らし、2030年までには50%の交通事故件数減を達成することが目標に掲げられている。これらの目標達成の為にはバングラデシュの中でも特に交通量や交通事故が多いダッカ首都圏で対策がとられるべきであり、早急な対応が必要である。
ダッカ首都圏における交通安全活動においては、ダッカ首都警察の役割が大きく、ダッカ首都警察はダッカ首都圏における交通事故データ収集、交通規制及び運転手への交通安全教育などを実施している。例えば、歩行者への基本的な交通ルールの啓発のためにダッカ首都警察はリーフレットやビデオを作成し、教育機関やショッピングモールなどで配布及び放映を行っているが、歩行者が街中の道路を乱横断するなどの危険行為が跡を絶たない。また、ARIが世界銀行との共同で作成した「NATIONAL AND DHAKA CITY ROAD SAFETY SUMMARY AND OBSERVATIONAL STUDY OF RISK(2021年2月)」によると、WHOの報告書に記載された当国全体の推定交通事故死者数とバングラデシュ警察及びダッカ首都警察により報告された交通事故死者数に5~12倍の乖離があると指摘されている。このことから、交通事故情報収集が十分に行なわれていないことが推察され、より適切な交通事故分析が実施できず、その結果、事故分析を基に実施・対策を行っている取締りや交通安全教育についても実態に即した適切な対応が行われていないと考えられる。
こうした状況を踏まえ、ダッカ首都圏において、交通事故データの信頼性向上、交通事故分析・対策立案の精緻化、交通安全行動・文化の普及を行うことにより、ダッカ首都警察の包括的な道路交通安全対策の実施能力向上を図り、もって当国の道路交通事故件数及び交通事故死者数減少に寄与することを目的として、当国政府より「ダッカ交通安全プロジェクト」が要請された。

目標

上位目標

ダッカ首都圏における道路交通事故件数及び死亡者数が減少する。

プロジェクト目標

ダッカ首都警察の包括的な道路交通安全対策の実施能力が強化される。

成果

1.交通安全教育と広報にかかる能力が強化される。
2.交通事故報告・分析の能力が強化される。
3.交通安全、交通規制及び執行の計画立案・実施の能力が強化される。

活動

成果1に係る活動

1-1.ダッカ首都圏内の交通安全教育の情報収集及び実施機関、内容、教材の分析をする。
1-2.他国の交通安全教育の優良事例の学習をする。
1-3.対象別の交通安全教育プログラムの開発、教材の準備をする。
1-4.交通安全教育プログラムの実施体制を構築する。
1-5.交通安全教育・啓発セミナーを開催する。
1-6.交通安全教育に係る広報/キャンペーンの年次計画を作成し、実施をする。

成果2に係る活動

2-1.道路交通事故に関する情報/データの収集・分析をする。
2-2.交通事故報告制度の課題を抽出する。
2-3.交通事故報告制度の見直し及び有用性・妥当性の分析をする。
2-4.交通事故報告システム・データベースの課題の抽出と改善を行う。
2-5.改善した交通事故報告システム・データベースによるデータ収集・分析をする。
2-6.交通事故報告システムの活用状況のモニタリング・評価を行う。
2-7.交通事故情報を取りまとめた報告書を作成する。

成果3に係る活動

3-1.交通安全・交通規制及び執行に関する情報/データ収集・分析を行う。
3-2.二輪車を含む「交通規制ガイドライン」「交通執行マニュアル」を作成する。
3-3.アクションプランの策定(包括的な交通安全プログラムの確立)を行う。
3-4.アクションプランを用いたパイロット事業の計画をする。
3-5.アクションプランを用いたパイロット事業の実施をする。
3-6.アクションプランを用いたパイロット事業の結果をふまえた課題の抽出と改善点の検討を行う。
3-7.アクションプランの更新をする。

投入

日本側投入

専門家派遣、機材供与(必要に応じて)、研修員受け入れ(カウンターパートの本邦研修受け入れ)

相手国側投入

カウンターパートの配置