プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)国家地理空間情報整備支援プロジェクト
(英)Project for Establishment of national Spatial Data Infrastructure(NSDI)for Bangladesh

対象国名

バングラデシュ

署名日(実施合意)

2019年3月31日

プロジェクトサイト

バングラデシュ国全土

協力期間

2019年7月1日から2024年6月30日

相手国機関名

(和)バングラデシュ測量局(SoB)
(英)Survey of Bangladesh

背景

バングラデシュ人民共和国(以下「当国」という。)では、これまで官民の様々な組織が地形・地質調査、地籍測量等を通じて地理空間情報を作成してきた。地理空間情報作成にあたっては政府及び民間による各組織独自の権限や要件により、異なるフォーマットやデータモデル、地図投影法等が混在している状況である。当国には、地理空間情報を作成・利用する関係機関間において、高精度かつ最新の地理空間情報データの共有を相互に最適化するシステムが存在しないことから、インフラ開発や土地利用、都市開発、防災等計画策定・管理を担う政府機関や民間企業等が案件毎に必要な地理空間情報を個々に作成・収集しており、関係機関間において重複投資が生じている。
同課題に対して当国政府は、ハシナ首相の意向でバングラデシュ測量局(Survey of Bangladesh。以下「SoB」という。)が整備してきた地図データを基準として、その上にSoB以外の組織が持つ地理空間情報を統合し、国土空間データ基盤(National Spatial Data Infrastructure。以下「NSDI」という。)を整備する計画を進めることで国土計画策定の効率化、及び官民の様々な分野で地理空間情報の活用を推進できる社会の実現を目指している。
かかる状況下、我が国は、NSDI構築に係るロードマップ作成を含む「デジタルバングラデシュ構築のための地図作成能力高度化プロジェクト」を2013年~2019年にて実施した。同事業では、多数の機関が参加する本格的なNSDIシステム(NSDIプラットフォーム)整備に先立ち、将来的な参加機関に対して上記NSDIの概念と有用性を示し、技術面・運用面での課題を検証するために、パイロットプロジェクトとして小規模なプロトタイプ・システムを開発し、その運用及び利活用を行っている。
以上の背景を踏まえ、実施した事業の成果であるNSDI整備における技術面・運用面での課題検証結果に基づいて本格的なNSDIシステム(NSDIプラットフォーム)立ち上げを行うためNSDIの整備(構築や利活用)能力向上に係る技術協力が当国政府から我が国に要請された。

なお、当国政府は「デジタルバングラデシュ2021」を掲げ、コンピュータ技術の普及と近代技術の利活用を目指していくことを方針としている。同政策の4つの構成要素のうち、電子政府化の取り組みとしてAccess to Information計画が策定されている。同政策のもと、2016年6月に開催された「デジタルバングラデシュのためのNSDIセミナー」においてはハシナ首相がNSDI整備のための法令と組織体制の早期整備をSoBを所管する国防省に対して指示した。これを受けて、国防省及び測量局が関連法整備と組織体制整備を開始した。関連法については、日本やインドネシアなどの法制度を参考にして改定測量法、NSDI法の法案を作成し、関係省庁間の協議に諮っている。また、組織体制整備の一環として、測量成果、地図成果にアクセスできるようオンライン提供の統合サイトである「測量局ジオポータル」の開設準備に取り組むなど、NSDI実現に向けて着実に取組みが行われてきている。これらを踏まえ、本事業は、NSDI整備の達成及び適切かつ効率的な利活用の推進を目的とし、NSDI整備にかかる人材及び組織に対し、技術移転及び組織能力強化を行うものである。

また、対バングラデシュ人民共和国国別開発協力方針(2018年2月)及びバングラデシュ人民共和国JICA国別分析パーパー(2019年3月)では、経済成長の加速化を重点分野として掲げ、運輸交通や電力・エネルギーセクターを中心とする経済インフラの整備に取り組むとしている。本事業はインフラ整備の根幹をなす高精度かつ効率的な地図・地形図の整備に寄与するものであり、これら方針及び分析に合致する。

一方で世界銀行は、バングラデシュコンピューター評議会に対して、当国食糧・災害対策・救助省等と、地理空間情報を共有するためのジオポータルシステムGeoDASH構築を支援している。NSDIが政府機関内で共有することが有益である地理空間情報について、承認されたメンバー機関に限定して情報共有する運用体制であるのに対し、GeoDASHはデータの共有を一義的な目的としたもので誰でも自由にデータをアップロード・ダウンロードできるものである。しかし、掲載データの信頼性と責任の所在が担保されていない点や運営の主体が法的に定められていない点などデータ管理及びアクセス管理における脆弱性の面で課題を有している。

目標

上位目標

バングラデシュにおいて地理空間情報を扱う主要な政府機関がNSDIを通じて地理空間情報を適切かつ効率的に管理・利用する

プロジェクト目標

SoBと関係者のNSDI構築や利活用に係る能力が強化される

成果

1.NSDIに係る概念や価値が関係者により理解される。
2.NSDI構築や利活用に係る体制が強化される。
3.地理情報標準をふまえたNSDIの共通ルールを確立する。
4.NSDIプラットフォームが立ち上がり、各機関が実施する事業・サービスにおいて活用される。

活動

成果1関連

1-1.NSDI構築・運用に関する短期・中期・長期計画を策定する。
1-2.政府機関のデータポリシーを協議、策定する。
1-3.情報提供等に係るガイドラインを策定する(個人情報保護、二次利用促進<著作権への対応>、国の安全への配慮を含む)。
1-4.NSDIの概念や価値を関係機関に発信する。
1-5.公共サービスとしてNSDIのブランディング活動を行う。

成果2関連

2-1.関係組織(事務局、WG、JCC等)の役割や運営方式を策定する。
2-2.関係機関によりNSDIの構築や利活用に係る課題の特定や解決に向けた協議を実施する。
2-3.地理空間情報関係機関に対してNSDIデータの利活用に係る支援を行う。
2-4.NSDIに係る活動を実施、NSDIセルの能力強化を図ることを目的とし、SoB内にNSDI Labの設立に向けた支援を行う。

成果3関連

3-1.メタデータの標準を策定し、関係機関へ共有する。
3-2.品質評価、データ内容、製品仕様書等の標準策定に係る支援を行い、関係機関へ共有する。
3-3.地理情報標準を調査、研究する。
3-4.地理情報標準ガイドラインを地理空間製品に適用する際にNSDI WGメンバーへ支援を行う。

成果4関連

4-1.NSDIプロトタイプ・システムに係る評価のレビューを行う。
4-2.クリアリングハウス機能を含め、NSDIプラットフォームを構築する。
4-3.メタデータ作成ツールを開発し公開する。
4-4.NSDIプラットフォームの利活用に関する評価・検証を行う。
4-5.NSDI活用の事例研究実施に必要なデータベースを構築する。
4-6.SoB基盤図や関連機関の主題データ作成と更新に資する新しい空間情報技術(空間関係データベース、UAV、衛星測位システム、地理処理ツール等)の活用を模索する。
4-7.ナビゲーション、ジオコーディング、位置情報サービス、データ統合を通じ、NSDIの高付加価値化に関する調査、検討を行う。

投入

日本側投入

長期専門家:チーフアドバイザー/法制度整備/組織体制強化
短期専門家:地理情報標準整備、NSDIシステム構築
本邦研修
資機材供与:事務機器等

相手国側投入

カウンターパートチームの配置
案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供
NSDIプラットフォーム構築及び利活用のための費用