プレ・ファブ・アカデミー、プロジェクトの支援で開講

2021年12月30日

ファブラボの人材育成システムは、十数年にわたる試行錯誤を経て、「ファブ・アカデミー」という仕組みが世界的に確立されています。米国マサチューセッツ工科大学で主催されている「(ほぼ)なんでもつくる方法」という人気講座をベースに、米国の民間財団ファブ・ファンデーションが、毎年1月下旬から6月下旬にかけて、約5カ月間開講されるものづくり集中コースにまとめました。しかも、受講場所も分散型教育方式が採用されており、過去の修了生がインストラクターとして在籍する各国のファブラボがハブとなり、受講者はその施設を利用し、インストラクターからアドバイスを受けながら、演習課題と各自の作品製作に取り組むのです。

ファブラボはあるものの、まだブータン人インストラクターを輩出していないここブータンでは、デジタルものづくりに長けた人材の育成は、今後の普及にとって大きなカギとなります。私たちのプロジェクトでも、カウンターパートであるCSTの教員にファブ・アカデミーを受講してもらい、卒業後は「ファブラボCSTプンツォリン」のインストラクターとして、学生や近隣の起業家など、将来のユーザーにものづくりの助言ができるようになって欲しいと願ってきました。

ただ、ブータンでファブ・アカデミーを開講するには、現在国内に唯一存在するファブラボ「ファブラボ・マンダラ」に、アカデミー修了生が常駐していないことが課題となっていました。そこで、本プロジェクトからアカデミー開講の相談を受けたファブラボ・マンダラでは、隣国インドのマハラシュトラ州プネ市郊外の農村地帯にある「ビギャン・アシュラム」と協議し、インストラクターに短期出張でブータンに来てもらうことになりました。

白羽の矢が立ったのは、アカデミー修了生であるスハス・ラバデさん。さらに、スハスさんとファブラボ・マンダラの協議の結果、アカデミー受講希望者には、アカデミー本番受講を前に、デジタル工作機械操作に習熟してもらうため、4週間の「プレ・ファブ・アカデミー」を受講してもらうのを必須要件とすることになりました。

スハスさんは、このプレ・ファブ・アカデミー指導のため、11月中旬から12月中旬にかけてブータンを訪問。到着後政府指示にもとづく2週間の隔離施設入居期間中はオンラインで、隔離明けの11月24日からはファブラボ・マンダラでの対面で、CSTから指名されたカウンターパート4名を含む、計15名の受講者に対して、機械操作を指導しました。スハスさんはさらに、ファブ・アカデミーの講座概要や受講者の心がまえ、講座受講本番までに各自が行うべき準備作業などについても解説しました。

最終日の12月10日には、各受講者が、本番のファブ・アカデミー受講期間中に取り組みたいものづくりの作品アイデアを、1人3つ持ち寄り、発表するというセッションが設けられました。「PETボトルから3Dプリンター用フィラメントを作る」「部屋の照度や空気の質の計測」「STEM教育用教材・玩具の製作」「赤ちゃん見守り用モニター」などが複数受講者から挙げられましたが、スハスさんは、それに対し、過去のファブ・アカデミー修了生の作品や、製作データや製作プロセスの共有サイトを調査し、過去に類似の作品の製作事例を確認するようアドバイスしました。

本番のファブ・アカデミーでは、スハスさんの再訪も含め、複数の外国人インストラクターがブータンを訪れ、ファブラボ・マンダラにてアカデミー受講者への助言を行う予定です。なお、プレ・ファブ・アカデミーの実施に当たって、必要とされる経費の一部は、本プロジェクトからも支弁しました。

関連リンク

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対面セッションの開講式(写真:山田浩司)

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自作回路基板のハンダづけに取り組む受講生(写真:山田浩司)

【画像】最終日に今後の取組み課題を話す受講生と話を聴くスハスさん(写真:山田浩司)