2020年10月24日
新型コロナウィルス感染症(Covid-19)により、2020年3月中旬以降、職業訓練校は長期間の閉校を余儀なくされましたが、各校では学習量の不足に伴う技能の習得状況への影響を最低限に留めるべく、eラーニングや実技ワークショップなど、リカバリーが試みられてきました。
パイロット職業訓練校3校(NPIC/NTTI/PPI)の電気・ディプロマコースにおける最終実技試験は、卒業見込みの学生が職業訓練校で培った技術の到達度を確かめる重要な機会であり、技能評価の柱の活動のひとつとして、各校で定着してきています。本年度はコロナ禍で実施が危ぶまれる中、各校で計画が進められ、9月24日~29日にPPI校で、10月23日~24日にNPIC校で、それぞれ4科目(PLC、モーター制御・メンテナンス、電気工事及びAuto-CAD)が実施されました。(NTTI校ではディプロマコースが2年半となっており、本年度中(2021年3月上旬)の実施を目指しています。)
最終実技試験は、当プロジェクトとともに導入され、実施校の拡大、試験問題の統一化、科目の整備など、着実に改善されてきました。今年度の大きな改善点のひとつに、受検者の拡大があります。NPIC校では昨年度までに既に対象となる学生全員が受検していましたが、NTTI校やPPI校はプノンペン市内で通学に便利な地域にあり、夜学生を含む学生数が多いという特徴があります。今回は夜学生や週末に通学する学生を含むすべての卒業見込みの者を対象とすることが計画され、PPI校では348名が、NPIC校では102名が参加しました。NTTI校(281名が受検予定)と合わせると731名となり、これは昨年度(248名)の約3倍となります。(なお、カンボジア労働職業訓練省"Technical and Vocational Education and Training Statistics”(2017-2018年度)等によると、電気を専攻する3校のディプロマ学生数は、カンボジアの全ディプロマ学生の約3分の2を占めています。)各校では、マスク着用などCovid-19の感染防止を徹底するための措置が講じられました。
プロジェクトでは、訓練機材に加え、必要な部品を現地で安価で調達し、実技試験を持続的に実施できるように支援してきました。また、昨年度に続き、実技試験合格者へは各校と当プロジェクト連名の合格証明書を発行し、卒業生が就職活動で技能を証明できることを期待しています。
パイロット校からは、「プロジェクト終了後も、最終実技試験を今後も続けていく」との力強い言葉が寄せられています。来年度以降は各校が必要な予算を確保して継続していくこととなります。NPIC校でともに視察をしたブン・ペアラン学長からは、学生の技能の到達度に手応えを感じるとの評価とともに、当プロジェクトの継続的な活動への謝意が述べられました。同校では、電気学部以外で最終実技試験の実施が検討されていく動きもあります。
当プロジェクトでは、訓練の現場で最終実技試験のような実践的な仕組みがプロジェクト後に定着していくよう、これからも支援をおこなっていきたいと思います。
(注)カンボジアにおける新型コロナウィルス感染症(Covid-19)をめぐる動きのアップデート
国内の感染状況は引き続き落ち着いており、10月24日時点の国内感染確認数は287例(死者はゼロ)と公表されています。
2020年のカンボジアの経済成長率について、カンボジア国立銀行は10月23日時点で-1.9%、国際機関も9月下旬以降、アジア開発銀行(-4.0%)、世界銀行(-2.0%)、国際通貨基金(-2.8%)といずれもマイナス成長を予測しています。2021年はプラス成長への回復が見込まれています。
教育・人材育成面では、Eラーニングや遠隔教育が実施されてきましたが、学生の居住地による環境面(スマートフォンやテレビの保有状況)の不公平、実施科目の制約、学生の受講状況のモニタリングが困難であることなどの課題も指摘されました。教室での職業訓練が元どおりとはなっていない中で、これらの方法をどのように組み合わせていくかの試行錯誤が続いています。
その他の政策面の対応としては、繊維、観光業界の休業者への手当(企業と政府が補助)などに加え、6月からは貧困世帯への現金給付が始まり、10月時点で全土で60万世帯以上が支援を受けています。