プロジェクト概要

プロジェクト名

シェムリアップにおける都市課題解決のためのスマートシティアプローチ実装プロジェクト

対象国名

カンボジア

署名日(実施合意)

2022年12月8日

協力期間

2022年5月10日から2025年5月9日

相手国機関名

シェムリアップ政府

背景

カンボジアは、2012年にGDP成長率7.3%を記録して以降、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受ける前の2019年までは年率7%を超える順調な経済成長を遂げており、2016年7月には低中所得国入りを果たした。2019年以降のCOVID-19の影響によりカンボジア経済は大きな打撃を受けているものの、2030年までの高中所得国入り実現に向け、より高いレベルでのインフラ整備や次世代の人材育成等に取り組んでいる。
シェムリアップ州の州都であるシェムリアップ市は、世界文化遺産であるアンコール遺跡を擁する観光産業を中心とした都市である。シェムリアップ市の人口は約19万人(2021年)であるのに対し、観光客数は2010年時点で約286万人、2019年実績は約426万人であり、カンボジア全体の外国人観光客の7割がシェムリアップ市を訪れている。他方で、インフラや社会サービス等の整備が観光客の増加に対応しきれておらず、自動車の急増による交通渋滞の深刻化、廃棄物や汚水排出の増加による環境悪化、犯罪の増加などが顕在化しており、市民や観光客にとっての都市生活や都市環境の劣悪化が課題となっていた。COVID-19の影響により、観光客は2019年から急減し、2020年のカンボジア全体の観光実績は、観光収入ベースで前年比79.4%減(49億米ドルから10億米ドル)、人数で80.2%減(約661万人から130万人)となっており、経済面、雇用面でも非常に大きな影響が生じている。他方、シェムリアップは、2035年には観光客が約1,100万人に増加すると予測されており(シェムリアップ州観光開発マスタープラン(2020-2035))、ポストCOVID-19における将来的な観光客の様々な需要に対応するために、既存課題とCOVID-19による課題を分析し、都市環境を整備する必要性に迫られている。
シェムリアップにおけるスマートシティの動きは、2018年、ASEAN首脳会議にてASEANスマートシティ・ネットワーク(以下、「ASCN」という。)の枠組み文書が採択され、ASEAN加盟各国の都市が協力するためのプラットフォームが立ち上げられたことに付随し、シェムリアップがカンボジアのスマートシティ実証都市として選出されたことが端緒である。2019年には、州政府の下、スマートシティコミッティが設立され、2021年2月には、中央政府にカンボジアの各省庁の長官により構成されるスマートシティ調整委員会が首相承認の上、設立された。しかし、スマートシティコミッティとスマートシティ調整委員会はそれぞれ役割や責務等が明記されているものの、両組織の具体的な活動はほぼ無く、スマートシティ推進に当たって協力すべきアクターである民間企業やアカデミアとの連携なども始まっていない。
かかる状況の下、シェムリアップ州政府からスマートシティの名の下に都市課題の解決に取り組む技術協力が日本政府に要請された。2020年からJICAが実施した「シェムリアップ市の都市環境改善にかかる情報収集・確認調査」では、スマートシティ推進に係るカンボジア政府および官民連携の体制構築やスマート技術を活用した都市課題の解決策の検討等の支援を通じた関係機関の能力向上を重要課題としており、あわせてシェムリアップ市におけるスマートシティ実装を目指すロードマップを提案している。
これを受けて本事業においては、都市域において実際にスマート技術を用いて個別課題の解決を試行し、併せて行政側の体制や民間企業との関係づくりを行い、関係機関が経験を蓄積することで、スマートシティを実現していくことを目的としている。既成市街地であるシェムリアップ市において、市民、行政、民間企業、アカデミアなど様々なステークホルダーを巻き込みながら、スマート技術を適切に利用して、既往の課題の解決やより良い都市マネジメントを実現するプロセスをスマートシティアプローチと称し、これを実装させていくことに重点を置くものである。

目標

上位目標

スマートシティアプローチが機能することにより、都市環境が改善される

プロジェクト目標

シェムリアップ市の都市課題を解決するためのスマートシティアプローチが実装される

成果

1.スマートシティアプローチが策定され、関係機関の協力体制が構築される
2.都市課題解決策の試行により、スマートシティアプローチの実施プロセスが確立される
3.スマートシティアプローチのモニタリング・評価システムが構築される

活動

1-1.スマートシティ関連機関のレビュー・課題分析
1-2.ロードマップの最終化
1-3.ロードマップの実施に必要な調整・協力体制の検討
1-4.調整・協力メカニズムの構築・運用
1-5.スマートシティ推進のための法・制度に関する改善案の提案

2-1.実施するパイロットプロジェクトの特定
2-2.情報収集・確認調査で実施したパイロットプロジェクトの教訓の検討
2-3.課題・解決策・当事者とそれらの関係性に係る分析
2-4.ロードマップに基づいたパイロットプロジェクトの実施

3-1.キャパシティアセスメント(組織、個人、インフラ)の実施および能力強化プログラムの作成
3-2.シェムリアップ州政府に開設予定のスマートシティ課の使命と役割、所掌業務のドラフト作成
3-3.民間連携強化等のためのワンストップ窓口の設置
3-4.様々なステークホルダーとのナレッジ共有
3-5.能力強化プログラムの実施
3-6.ワンストップ窓口運営の体系化

投入

日本側投入

1.専門家派遣
2.研修(本邦/第三国研修)

相手国側投入

1.カウンターパート要員の配置及び当該人件費
2.プロジェクトチームのための適切なオフィススペース及び設備(電気、水供給、空調)の提供
3.利用可能なデータ情報の提供
4.プロジェクト実施のための公式文書の発出
5.医療サービスを受けるための情報のサポート