2016年10月7日
2016年9月中旬に、本プロジェクトのベースライン調査が終了しました。ベースライン調査は、プロジェクト実施にあたり、対象地域の妊産婦と子どもの健康・栄養状態を把握し、今後のプロジェクトの方向性と、プロジェクト終了時の達成目標を策定するために行いました。
同ベースライン調査は、母子保健と栄養の2分野において、家庭や保健医療施設などにおける妊婦および母親からの聞き取りを実施しました。栄養分野の調査は、2016年8月15日から9月12日までをデータ収集期間とし、その後データ分析を行い、2016年10月4日と5日にカウンターパートとの協議を実施しました。
栄養分野の調査では、5種類の調査票(1)妊婦対象24時間思い出し法調査、2)妊婦対象 食物摂取頻度調査(FFQ)、3)妊婦対象KAP調査、4)6か月未満児の母親対象KAP調査、5)6-23か月児の母親対象KAP調査)を用い、妊産婦と子どもの栄養状態について聞き取り調査を行いました。
プロジェクトチームはカウンターパートと協力し、1)の24時間思い出し法調査では、前日の朝食・昼食・夕食・間食について、妊婦が食べたものの種類や量を聞き取りました。得られた食事内容について中央アメリカ・パナマ栄養研究所(Instituto de Nutricion de Centroamerica y Panama:INCAP)の食品成分表を用いてエネルギー及び栄養素摂取量の算出を行いました。2)の食物摂取頻度調査では、グアテマラの主な食材について妊婦が直近1か月の間で食べた頻度を聞き取りました。3)の妊婦対象KAP調査、4)の6か月未満児の母親対象KAP調査、5)の6-23か月児の母親対象KAP調査では、妊婦や2歳未満児の食生活について知識(Knowledge)・態度(Attitude)・行動(Practice)の3点に着目して調査を実施しました。
対象地域のキチェ県の人口の約9割はマヤ系先住民であり、スペイン語だけでなくキチェ語、イシル語などの先住民語も広く話されています。そのため、現地で先住民語が話せる看護師、准看護師、教師などが調査員として雇用され、聞き取り調査が行われました。この調査は対象地域の人々の食生活や環境が理解できる貴重なデータ収集の機会となりました。
この調査から得られた結果として、調査対象地区の妊婦の識字率は52.0%、月収1,000ケツァール(約14,000円)に満たない世帯が67.9%であることがわかりました。妊娠中に食事量を増やすことが難しいと感じている者は22.4%、妊娠していない時と比べて食事量を増やしていると回答した者の割合は42.8%でした。6か月未満の子を持つ母親のKAP(知識・態度・行動)調査の結果として、「完全母乳」という言葉を知っている者は34.8%でした。6-23か月の子を持つ母親のKAP(知識・態度・行動)調査の結果として、2枚の離乳食の写真のうち、適切な食事内容を選んだ者は65.6%でした。適切な食事内容を示す写真を選んだ者のうち、その理由として「栄養価が高いため」と回答した割合は29.3%でした。24時間思い出し法による食事調査の結果として、妊婦のエネルギー摂取量は炭水化物(糖質)によるところが大きく、脂質からのエネルギー摂取量が低いことが示されました。また、カルシウムの摂取量の平均値は中央アメリカ・パナマ栄養研究所の食事摂取基準の推奨量を下回っていることも示されました。食物摂取頻度調査の結果として、鶏肉及び牛肉の摂取について週に1回と回答した者が最も多く、それぞれ55.6%、55.4%でした。
栄養分野の調査では、2歳未満児の身長と体重のデータを収集しました。慢性栄養不良の代表的な症状として、年齢の割に背が低い発育阻害という状態があります。本調査の2歳未満児において、発育阻害の割合は49.3%でした。ユニセフの世界子供白書2016によれば、グアテマラ農村部の5歳未満児の発育阻害の割合は53%と報告されており、今回の調査対象地区においても同等の値を得ました。
これらベースライン調査の結果をカウンターパート機関と共有し、意見交換がなされました。今後、プロジェクトの方向性やプロジェクト終了時の達成目標の素案が策定され、追って開催されるプロジェクトの運営委員会と合同調整委員会で最終的な協議と合意がなされる予定です。