男性が父親になるということ

2019年10月30日

10月16日にウスパンタン市のチョラというコミュニティでパパママ教室が行われました。この教室は今年5月、佐久市での本邦研修で見学した「パパママ教室」をグアテマラでも普及させたいと帰国研修員が始めました。グアテマラではマチズモという思想や文化的な背景から妊婦の産前健診や病院での出産が進まないという現実があり、妊産婦や新生児の死亡にもつながる事例が少なからず発生しています。とくにプロジェクトが活動している先住民の多いコミュニティではその傾向が現在でも色濃く残っています。

マチズモとは一言で表せば男性優位の考え方で、女性には従順さが求められます。家庭生活においては男性に決定権があり、女性は妻として母親として、男性の決定に従ってその役割を果たします。父親としての役割や尊厳もマチズモの考え方に基づきます。ある意味では頼り甲斐を感じるこの考え方ですが、認識を誤るとDVや家族の権利の侵害につながりかねません。例えば妊婦健診を受ける事や、どこで出産するかも男性が決めることにつながります。

さて、男性は子どもが生まれたら父親になれるのでしょうか?家族を養い、重大な決定をする役割を担うことが父親になるということなのでしょうか?女性は10ヵ月の間、子どもを体内で育むことから自然と母性が育まれるといわれています。一方男性は、そのような経験を持つ事が出来ないため子どもが生まれてから徐々に子どもへの愛着や、父性が育っていくといわれています。パパママ教室は男性も参加することで身重の妻を思いやることや自己の父親像を育てる機会となり、新しい家族を迎えることの意味や夫婦間の絆を強くする事が出来るのです。

今回参加した父親は、妊婦の体を体感できる妊婦エプロンを試着して妻がどれだけ動作が大変かを体験しました。女性は妊娠すると、乳房(0.5Kg)、子宮(0.5Kg)、水分(2Kg)、皮下脂肪(2Kg)、胎児・胎盤(4Kg)の重みで、どんな人でも最低9Kgは体重が増えます。体験した父親は「重くて耐えられない、もうエプロンは外すよ。」と教室の途中でエプロンを外してしまいました。男性にとってはこれだけでも新鮮な経験であったと思います。今回のパパママ教室への参加者は8名で、そのうち父親の参加は1名のみでした。文化的背景、仕事の都合など様々な理由は考えられますが、回数を重ねて「パパママ教室」が住民にとって身近で当たり前と感じるくらい継続していくのが地道ながら一番の近道でしょう。他の母親達も本当はパートナーに参加して欲しかったようで、父親が参加した夫婦を羨ましそうに見ていました。

【画像】

夫婦での参加者。父親は妊婦エプロン試着中です。

【画像】

妊娠週数ごとの子宮と胎児の大きさの紹介

【画像】

父親の妊婦体験1

【画像】

父親の妊婦体験2 妊婦の動作がいかに大変かを体験しました。