2019年6月6日
2019年6月6日、プロジェクトにとって最後の合同調整委員会(第6回)が開催されました。プロジェクトは、グアテマラ側・日本側双方関係者の努力により、成功裏に終了することができました!
プロジェクト終了に当たり、プロジェクトの主な成果をご紹介します。
2017年1月のプロジェクト開始以降、グアテマラ教育省職員、国立サンカルロス大学中等教員養成課程(Efpem/USAC)教官と日本人専門家、プロジェクトスタッフが協力して作成した初の中学校数学科国定教科書が、2019年5月、教育省により全国22県776校の国立基礎教育学校(INEB)の生徒(約17万4千人)についに届けられました!
グアテマラの公立中学校に通う生徒のほとんどが家庭の経済的な理由で教科書を購入できません。これまで教科書がないことを前提に授業が行われていましたが、今回、生徒の手元に教科書が届けられたことで授業が変わります!これから「分からない数学」が「分かる数学」、「難しい数学」が「簡単な数学」になることが期待されています。
2020年には、INEB以外の国立中学校の生徒約6万4千人にも教科書が届けられる予定です。
プロジェクトでは、数学科教科書の開発と並行して、教科書準拠の教師用指導書も作成し、2019年5月の教科書の全国配布にあわせて、全国776校の国立基礎教育学校(INEB)の数学教員1,400名に届けることができました。
グアテマラの中学校数学教員の多くが数学を専門としていません。そこで、数学が専門でない教員でも使うことに抵抗なく、徐々に各授業で生徒が学ぶべき内容を理解できるようになり、少なくとも間違いを教えないための指導書の作成を目指しました。指導書には、全授業の教科書縮小ページと授業目標、板書案、練習問題の解答が掲載されています。
配布に先立つ2018年11月には、教育省により全国22県1,400人の国立基礎教育学校数学教員を対象とした教科書使用法の研修が実施されました。多くの教員にとっては、教科書を使用した授業の実施さえもはじめての経験です。そのため、研修では教科書を使用した授業の様子もビデオで学びました。
教員の指導力次第で教科書はより効果を発揮します。教育省はプロジェクト終了後も教員への技術指導を継続する予定です。
国立サンカルロス大学(USAC)本校の中等教員養成課程(Efpem)数学指導法講座で使用する教材も完成しました!
この教材は、Efpemの数学指導法講座を受講する学生が、授業準備、模擬授業、授業の振り返り、授業改善のサイクルを繰り返し、実践的に指導法を学べるよう多くの指導案を掲載しています。2019年前期のトライアルを経て、2019年7月から未来のグアテマラ数学教育を担う学生がこの教材を使って学びます。
2019年3月には、USAC地方校6校と地方で資格付与研修を担当する私立大学2校の数学指導法講座担当教官25名をEfpemに招き、普及セミナーが開催されました。現在、参加校の要請に応えて順次地方校で追加的な研修会を実施しています。Efpemだけでなく、地方の学生もプロジェクト作成教材を使って学ぶことになりそうです。
現在、プロジェクトの最後の活動として、グアテマラ教育省職員と日本人専門家、プロジェクトスタッフにより、急ピッチで教材の改訂作業が行なわれています。
教科書は、生徒の数学学習の現状や理解の実態を常に検証し、適時に反映していくことが求められます。プロジェクト終了後も、教育省関係者により継続して教科書と教師用指導書が改訂されることを期待してやみません。
2年半にわたるプロジェクト活動に参加したすべての関係者、ご支援いただいた皆様に感謝申し上げます!ありがとうございました!!
中学校数学科教科書(第2版)
中学校数学科教科書に準拠した教師用指導書(第1版)
数学指導法講座の教材(第1版)
授業でプロジェクトが作成した教科書を使用する中学生
教員研修で授業ビデオを視聴
数学指導法講座教官への普及セミナーの講師を務めるハスレルEfpem数学専門家チームコーディネーター
改訂版作成のため修正ポイントを議論するアンドレア教育省中等数学技官(右)と渡辺専門家
修正箇所を指示するカジェタノ教育省プロジェクト数学専門家チームコーディネーター