プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)プライマリ・ヘルス・ケアを通じた母子栄養改善プロジェクト
(英)The Project for the Improvement of Maternal and Child Nutrition through Primary Health Care
(西)Proyecto de Mejoramiento de Nutrición Materno Infantil a Través de la Atención Primaria en Salud

対象国名

グアテマラ共和国

署名日(実施合意)

2021年12月17日

プロジェクトサイト

トトニカパン県及びキチェ県

協力期間

2022年1月25日から2026年1月24日

相手国機関名

保健省(MSPAS)保健サービス統合システム総局(SIAS)、トトニカパン保健管区事務所、キチェ保健管区事務所(DAS)

背景

グアテマラは栄養不良の問題を抱えており、2014/2015年時点での5歳未満児の慢性栄養不良(発育阻害)の割合は中南米地域で最も高く、世界でも6番目に高い。慢性栄養不良は貧困率とも相関関係があり、貧困率の高いトトニカパン県及びキチェ県では深刻な状況である。また低出生体重児は全国平均で約15%にものぼり、5歳未満児の重度急性栄養不良(消耗症)の割合については大幅に減少したものの、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、近年は増加している。
一方で同国では成人・子どもともに過体重、肥満が増加している。また生活習慣とも関連の強い疾病の死亡率は増加傾向である。このように同国は低栄養と過栄養が併存する「栄養不良の二重負荷」の問題を抱えており、栄養改善と健康づくりの意識を醸成する必要がある。
同国政府は、中南米域内のプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の重要性を再確認したモンテビデオ宣言(2005年)に同調する形で保健・栄養政策を整備している。2005年には食糧安全保障・栄養に係る国家システム法を制定し、食糧栄養安全保障庁(SESAN)をマルチセクター間の調整機関として設置した。2011年には世界でもいち早く栄養改善拡充イニシアティブ(Scaling Up Nutrition)への参加を表明し、長期国家開発計画「K'atun 2032」(2014年~)でも、食の安全と5歳未満児の栄養保障を優先事項としている。また2020年に慢性栄養不良及び母子に関連する死亡率の改善を重点課題に掲げ、より包括的・分野横断的に取り組むため栄養改善戦略を打ち出した。しかし同戦略によれば、同国の栄養不良は、貧困や格差に関連する社会的要因が絡み合う構造的な問題であることが指摘されている。その根本原因として性別や民族による排除と差別があり、結果としてコミュニティレベルでの基本的なサービスや栄養改善のための情報を得ることに格差が生じ、妊産婦の栄養不良や不十分な食物摂取、重度の感染症を引き起こしている。こうした課題の解決のため、同国政府から、複数のセクターを巻き込みながら、母子栄養改善のためのPHC提供にかかる戦略が運用・拡充されることにより、母子の栄養改善を目指す技術協力プロジェクトの要請がなされた。
本事業は、対象地域において、母子栄養コミュニティ人材(※)(以下、「コミュニティ人材」という)によって補強される「母子栄養改善のためのPHCデリバリー戦略(以下、「PHCデリバリー戦略」という)」を策定し、PHCサービスを協働で提供する保健医療従事者とコミュニティ人材の能力を強化し、市レベルにおけるコミュニティ人材によるマルチセクトラルな活動を実施して、戦略の展開プロセスと教訓が他の保健管区事務所と市保健管区事務所へ共有されることにより、「PHCデリバリー戦略」の運用・拡充を図り、もって母子栄養の改善に寄与するものである。

(注)本案件における母子栄養コミュニティ人材とは、「コミュニティにおける母子栄養改善のためのPHCサービスの提供を支援する役割を果たす、機能しているコミュニティレベルの既存ボランティア」と定義する。このコミュニティ人材には、保健委員会のメンバー、コミュニティ・ファシリテーター、コマドローナ(伝統的助産師)などが含まれる。

目標

上位目標

トトニカパン保健管区およびキチェ保健管区の母子栄養が改善される。

プロジェクト目標

「母子栄養改善のためのPHCデリバリー戦略」がトトニカパン保健管区およびキチェ保健管区の優先コミュニティで運用・拡充される。

成果

1.コミュニティ人材によって補強される「母子栄養改善のためのPHCデリバリー戦略」(以下、「PHCデリバリー戦略」という)が策定される。
2.トトニカパン保健管区およびキチェ保健管区の優先コミュニティで、母子栄養改善のためのPHCサービスを協働で提供する人材(保健医療従事者とコミュニティ人材)の能力が強化される。
3.大統領府食糧栄養安全保障庁(SESAN)のリーダーシップのもと、市レベルにおける調整を通じて、マルチセクトラルな活動が実施される。
4.戦略の展開プロセスと教訓が他のDASや市保健管区事務所(DMS)へ共有される。

活動

1-1.栄養状況、社会経済的状況、既存のリソースやその他の関係者に関するマッピング分析を通じて、優先市やコミュニティを選定する。
1-2.優先コミュニティでベースライン調査を実施する。
1-3.優先コミュニティで、母子栄養改善のためのPHCに焦点を当てた一次・二次保健医療サービスの課題を特定する。
1-4.コミュニティ人材が支援的な役割を担う母子栄養改善のためのPHCに焦点を当てた一次・二次保健医療サービスを選択し、「PHCデリバリー戦略」の枠組みを構築する。
1-5.SIAS、SESAN、DAS、DMSとのワークショップを実施し、「PHCデリバリー戦略」について議論する。
1-6.戦略のためのガイドライン案を作成する。
1-7.戦略の検証のため、優先コミュニティでエンドライン調査を実施する。
1-8.MSPASが、「PHCデリバリー戦略」実施ガイドラインに合意する。

2-1.MSPASと連携し、コミュニティ人材を養成するための保健医療従事者向け研修教材を準備する。
2-2.コミュニティ人材の活動に必要な物品を提供する。
2-3.コミュニティ人材の活動のために、ソーシャルメディア、オンライン会議、ショートメッセージサービス(SMS)などの革新的で持続可能なコミュニケーションツールを準備する。
2-4.保健医療従事者向けの研修を実施する(TOT)。
2-5.コミュニティ人材のための研修教材を準備する。
2-6.保健医療従事者によるコミュニティ人材のための研修を実施する。
2-7.保健医療従事者と能力強化されたコミュニティ人材の参加を得て、提案された「PHCデリバリー戦略」を実施する。
2-8.相互学習により、互いのコミュニティの活動を視察し、学ぶ。
2-9.保健医療従事者とコミュニティ人材のための研修教材を完成させる。

3-1.県食糧栄養安全保障委員会(CODESAN)、市食糧栄養安全保障委員会(COMUSAN)、コミュニティ食糧栄養安全保障委員会(COCOSAN)の定例会議に参加し、プロジェクト対象地域での機能強化に貢献する。
3-2.年間活動計画(POA)に従い、CODESAN、COMUSAN、COCOSANの活動を支援し、アドバイスを提供する。
3-3.SESANと連携し、CODESAN、COMUSAN、COCOSANのメンバーに対し、食糧栄養安全保障におけるガバナンスフェーズの発展に関する研修プロセスを実施する。
3-4.プロジェクト対象地域のCOMUSANで実施される「栄養改善戦略」の分科委員会、および将来の子どもの栄養不良予防のための政府戦略に参加し技術支援を行う。
3-5.SESANが任命した「モニタリング担当者」の活動に同行・支援し、SESAN県代表の機能強化の一環として技術的支援を提供する。
3-6.DMSとCOMUSANに参加しているアクターによるマルチセクトラル活動の共同実施および文書化を促進・支援する。
3-7.CODESAN、COMUSAN、COCOSANがマルチセクター間調整を改善する取り組みから学んだグッドプラクティスや教訓を文書化、体系化、分析し、地域の状況に応じて実施するためのノウハウの特定を行う。

4-1.プロジェクトから得られたグッドプラクティスや教訓を分析する。
4-2.異なるコンテクストで実施可能な普及ガイド案を作成する。
4-3.他のDAS、DMS、ステークホルダーと共有するためのナレッジ共有ワークショップを開催する。

投入

日本側投入

専門家派遣:業務主任/栄養1、副業務主任/母子保健、栄養2、地域保健/栄養3、組織マネジメント、行動変容コミュニケーション、業務調整/研修管理1、業務調整/研修管理2、ローカルコンサルタント
研修員受け入れ:母子栄養分野
機材供与:母子栄養PHC活動に必要不可欠な機材
プロジェクト活動費

相手国側投入

カウンターパートの配置:プロジェクトディレクター:保健省、プロジェクトマネージャー:SIAS、プロジェクトカウンターパート:DASトトニカパン、DASキチェ
プロジェクトオフィス及び必要備品:SIAS、DASトトニカパン、DASキチェ、トトニカパン県SESAN及びキチェ県SESAN
ローカルコスト負担:出張旅費、必要経費を含むカウンターパートの人件費等