2017年7月18日
2015年7月から2016年6月までが、本プロジェクトの第四年目になりますが、まさにこの年が、5年の実施期間中、最も仕事量の多い年となりました。
この年にしたことは、
1)検定林への植栽に向けた改良メリアの採種、播種、苗木育成
2)4ヶ所のメリア サブ検定・展示林サイトの候補地選定、サイト整備
3)4ヶ所のメリア メイン検定・展示林を拡張整備
4)全8ヶ所のメリア 検定・展示林の植栽
5)アカシア優良木からの採種、播種、苗木育成
6)2ヶ所のアカシア実生採種園サイト整備、植栽
7)改良メリア育成・流通・利用のためのガイドラインと教材作成、研修
というような活動でした。
メリアに関しては、2014年の12月に開設した4か所の検定・展示林を拡張整備するとともに、新たに4か所のサブ検定・展示林を開設する作業を行いました。これら合計8ヶ所のサイトは、ナイロビの東側(ケニア中南部)の半乾燥地域に縦600キロメートル、横300キロメートルで四角く囲った範囲に分布することになり、最北のサイトは赤道直下、最南は南緯4度付近に位置します。この年は、ほぼ毎週この広範囲を走り回って各工程の作業を行いました。中でも佳境は、12月上・中旬に実施した植栽作業でした。2ヶ所の苗畑で育成した合計約5000本の苗木を、8ヶ所のサイトにそれぞれの必要本数配送し、決められた個体番号の苗木を決められた位置に、現地の農民に説明しながら一斉に植えてもらったのです。いざ植栽、と現地に行ってみれば並行であるべき植穴が途中で合流していたり、苗木をヤギから守るべきフェンスが完成していなかったり、別の項でも書いていますが、作物で植栽どころか足を踏みいれる場もないような状態だったりと、様々なことがありました。炎天下でのこの20日間に及ぶ作業は相当厳しいものでしたが、作業に携わった全員の努力の甲斐あって、植栽後の活着率は平均9割以上と極めて良好です。
アカシアに関しては、同時進行のメリア関連作業の寸隙をつきながら作業を進めることになりました。ケニア全土に広範囲に分布する優良木からの採種には相当手間取り、結局2015年12月と翌年4月の2回に分けての植栽となりました。苗木作りの段階では、これまでケニア森林研究所(KEFRI)と日本の林木育種センター(FTBC)が共同研究で培ってきた発芽技術が活かされて良好な得苗率を得ました。アカシアという樹種は、幼苗期から鋭い棘で完全武装して、まずは上に伸びずに横に広がります。これでは自立できないので、添え木を立てて、幹や枝を紐で束ねながらこれに固定していかなければなりません。無数の棘と格闘しながら、週に何度もこの作業を続けることは大変なので、一般的にはこのような育成はしませんが、この作業を施すことによって、成長が促され早く成木になるようです。植栽後約1年半で5m近くにまで成長し、段々と自立できるようになってきましたが、剪定を重ねながら樹形を整える作業は今日も続いています。
採種園や検定・展示林などの設立は、上記の活動によって、ほぼプロジェクト全体計画通りに完了しました。これらの施設では、全部で1万本以上の対象木に対して、半年毎に全数成長モニタリング調査が行われ、貴重な成長データが収集されています。これが分析され、将来的には、本当に優れた性質を持った個体同士を掛け合わせて、第2、第3世代が開発されていくことになります。このように時間と手間を掛けながら苦労して開発される改良メリアですが、これを一般のメリアと明確に区別して、管理・流通するシステムが必要となります。そのためのガイドラインと研修教材の開発も、この年に同時進行で行われた大事な作業でした。実際のところ、プロジェクト内では手が回らない状況だったので、経験豊富な短期専門家にサポートをお願いし、素晴らしい仕事をして頂きました。
(なるみ・たけだ)
改良メリアの種子を取出し系統別に分別
改良メリアを系統別に播種・発芽の下処理
改良メリアを系統別に播種
播種した苗床は遮光ネットで保護
約1週間で発芽
発芽苗を系統別に育苗バッグに移植
メイン検定・展示林拡張エリアの調査
サブ検定・展示林の候補地選定調査
やっと決まった候補地を前にほっと一安心
場所が決まれば、次は整地
整地にはブルドーザーも投入
整地が出来たら、植栽の位置決め測量
農民の皆さんに植栽前オリエンテーション
実際の植栽開始
植栽風景
植栽後、改良メリアについて講義
改良メリア植栽後3ヶ月経過で約1m
植栽後約6ヶ月経過でこの成長!