2015年12月31日
ラバカ対策研修
当初対象3コミューンにて、2015/2016年のシーズンにおけるラバカ対策研修が始まりました。2015年11月末現在、5ヶ所のラバカで3ステップからなるラバカ対策研修を実施しました。その内訳は、アンパシケリコミューンで1ヶ所、アンドレバケリスッドコミューンで2ヶ所、ムララノクロムコミューンで2ヶ所です(表1)。「2.課題」で後述のとおり、各地域でラバカ対策研修を担うリソースパーソンの認証を念頭に置きつつ、12月以降も研修を継続します。
研修名 | 研修回数 (2015年11月) |
研修参加者数 |
---|---|---|
対象ラバカ特定 | 5 | 0 |
予備ミーティング | 5 | 19 |
ラバカ対策技術研修 | 5 | 34 |
合計 | 15 | 53 |
*対象ラバカ特定研修の参加者は、リソースパーソンとローカルトレーナーのみであり、一般住民による研修への参加はない。
稚魚生産研修
2015年度のロイヤル・カープ稚魚生産研修は5サイトで実施を支援しており、この5サイトで稚魚の産卵が本格的に始まりました。親魚の産卵と稚魚の孵化は順調に進んでいる一方で、住民からの稚魚購入の希望は昨年と比べて、これまでのところまだ少ないです。稚魚生産と販売の現状は表2のとおりです。
稚魚生産農家 | 稚魚の生産 | 稚魚の販売 | 備考 |
---|---|---|---|
マミー:アンパシケリ | 親魚をすでに多数保有。昨年は10万尾を生産。今年は現在までに4万尾生産。 12月中に稚魚を再生産の予定。 |
昨年は3万尾を販売。今年は現在までに350尾を販売。10人のバイヤーから1万尾の引き合いあり。彼らは降雨の状態を見ている。 | 今後継続して稚魚生産予定。稚魚を販売した農家に養殖方法を指導。安定的に稚魚生産。 アソシエーション向け販売を検討中。 |
ノエリン:アンボディラノ | 3回の産卵に成功。1週間ごとに3回に分けて産卵。数千尾〜1万尾の稚魚を生産。 | 110尾を販売。 250尾を近日販売予定。 |
LTとしてこれまでに研修を多数受講。既に技術は習得。今後の持続性に期待。 |
アウレリアン:アンコリリカ | ハイブリッド種の親魚を昨年自ら購入し、稚魚生産に成功。今年は2000尾以上の稚魚を生産。 | 500尾を販売し、1500尾以上を稲田にストック。今期の稚魚販売は打ち止め。 | 昨年生まれたハイブリッド種のコイは20センチメートルほどに成長し、今年産卵したものもいる。今後の持続性に期待。 |
バコ:アンタナンダバ | 3尾の雌親魚が同時に産卵。2万尾近くの稚魚が生産された見立て。 | 200尾を販売済み。農繁期がすぎたのちの引き合いを期待。 | 現在、水田耕作の農繁期で人びとは忙しいために引き合いはないが、多くの人が興味を持っている。 |
リボ:アンタニマフィ | 3尾の雌親魚すべての産卵に成功。稚魚の生産数は2000尾程度ではないか。 | これまで販売していないが、1人は500尾、別の1人は1500尾の引き合いが来ている。 | 稚魚は現在孵化後52日で2cm程度に育っている。 3尾の雄親魚が事故のため死亡。 |
リバ:アンタニマフィ・フクタン長 | 1尾産卵したが流れる。2尾の産卵は行われず。 | − | 産卵池の水を入れ替えて再挑戦を指示。 |
養殖アソシエーションの融資返済
昨年度は養殖農家がグループ(アソシエーション)をつくり、2グループがBOA(Bank of Africa)に養殖資金を借り入れました。その返済期限が2015年10月31日であったところ、2グループとも無事に返済を完了しました。引き続き養殖のための資金を借り入れるため、本年度も必要書類を同銀行に提出しました。なお、昨年に比べ、手続きに関するプロジェクトの支援はさほど大きくなく、アソシエーションの自立性が高まっています。
グッドプラクティスの普及
プロジェクト終了後の住民活動の持続性を高めるべく、エリアマネージャーとローカルトレーナーによって住民活動のフォローアップが精力的に続けられています。フォローアップを通じて特定された住民によるグッドプラクティスを紹介します。
県知事への表敬訪問
12月8日に、新たに就任した県知事に表敬訪問し、プロジェクトを紹介し、協力を要請しました。新知事からは協力活動への感謝とプロジェクトに対する協力・支援の意向が示されました。
先月に引き続き、11月も植林研修が多く開催されました。住民向けに実施された121回の播種研修に3,514人(男性:2,105人、女性:1,409人)の住民が参加しました(表3参照)。また播種研修の次のステップである移植研修のToTも開始されました。12月以降は住民向けの移植研修が多く開催される見込みです。
研修名 | 研修回数 (2015年11月) |
研修回数 (2015年6月〜11月末) |
累積研修参加者数 | ||
---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 合計 | |||
ライチ 取り木研修(住民向け) | 2 | 84 | 696 | 387 | 1,083 |
ライチ 取り木研修(ToT) | 1 | 4 | 14 | 7 | 21 |
ライチ ポット移植研修(住民向け) | 2 | 2 | 11 | 11 | 22 |
ライチ ポット移植研修(ToT) | 5 | 5 | 24 | 6 | 30 |
改良かまど・シャルボンブザカ研修(注1)(住民向け) | 39 | 252 | 1,931 | 1,922 | 3,853 |
改良かまど・シャルボンブザカ研修 (ToT) |
2 | 15 | 33 | 11 | 44 |
植林 播種研修(住民向け) | 121 | 206 | 2,105 | 1,409 | 3,514 |
植林 播種研修(ToT) | 4 | 32 | 106 | 78 | 184 |
植林 移植研修(住民向け) | 4 | 4 | 46 | 28 | 74 |
植林 移植研修(ToT) | 15 | 15 | 65 | 54 | 119 |
ラバカ対策研修(対象ラバカ特定) | 4 | 4 | 15 | 0 | 15 |
ラバカ対策研修(予備ミーティング) | 5 | 5 | 30 | 17 | 47 |
合計 | 204 | 628 | 5,076 | 3,930 | 9,006 |
グッドプラクティスの普及
当初対象3コミューン同様、新対象2コミューンでも、エリアマネージャーとローカルトレーナーによって住民活動のフォローアップが実施されています。フォローアップを通じて特定された住民によるグッドプラクティスを紹介します。
(注1)草本を材料として作製する丸形の炭
表4は、ブングラバ県で研修が始まった2015年6月から12月のPMU会議が開催された12月16日までに実施された研修回数と参加者数を示します。
研修名 | 研修回数 (2015年6月〜12月15日) |
累積研修参加者数 | ||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 合計 | ||
改良かまど・シャルボンブザカ研修(注2) (住民向け) |
117 | 1,455 | 1,628 | 3,083 |
改良かまど・シャルボンブザカ研修 (ToT) |
9 | 17 | 2 | 19 |
植林 採種・播種研修(住民向け) | 70 | 1,866 | 1,078 | 2,944 |
植林 採種・播種研修(ToT) | 5 | 19 | 6 | 25 |
植林 移植研修(住民向け) | 62 | 1,159 | 717 | 1,876 |
植林 移植研修(ToT) (ToT) |
4 | 16 | 2 | 18 |
植林 山出し研修 | 2 | 61 | 19 | 80 |
ラバカ対策研修(対象ラバカ特定)(ToT) | 1 | 15 | 4 | 19 |
ラバカ対策研修(予備ミーティング)(ToT) | 1 | 18 | 12 | 30 |
ラバカ対策研修(技術研修)(ToT) | 1 | 20 | 8 | 28 |
ラバカ対策研修(対象ラバカ特定) | 5 | 50 | 0 | 50 |
ラバカ対策研修(予備ミーティング) | 5 | 50 | 0 | 50 |
ラバカ対策研修(技術研修) | 5 | 33 | 18 | 51 |
野火研修 | 4 | 29 | 17 | 46 |
合計 | 291 | 4,772 | 3,475 | 8,247 |
植林研修
前月報以降に、住民向けの移植研修が本格化しました。これまでに4回のローカルトレーナー向け(ToT)と62回の住民向け移植研修が実施され、前者で18人、後者で1,876人が参加しました。今後は山出し研修が本格化する予定です。
改良かまど・シャルボンブザカ研修
改良かまど研修はこれまでに9回のToTが実施され、19人のローカルトレーナーが育成されました。これらのローカルトレーナーが住民向けに117回の研修を実施し、3,083人が参加しました。
ラバカ対策研修(ToT)
アロチャ・マングル県から研修講師を招聘して実施する全4回のラバカ研修(ToT)のうち、第3回の技術研修までが前月報の時点までに終了していました。それ以降、5回の住民向けのラバカ対策研修が実施され、対象ラバカ特定、予備ミーティング、技術研修のそれぞれに約50名が参加しました。
PAPRiz研修
プロジェクトマネジメントユニット(PMU)が開催された12月16日現在、チンジョアリボイマンガコミューンのフォノラティフクタンの1スキーム(斜面で囲まれた谷地に広がる一続きの水田地帯)を対象に、「PAPRIZの概要と家計研修DVDを使った広報活動の一環としての研修」を実施したに留まっていました。その後、DRDA/PAPRizの研修講師の人件費や移動費に関する問題が解決されたことを受け(先月報の課題(3)参照)、2015年12月中に残りの2スキームにおける同研修が実施されました。苗床作り研修のToTは、2016年1月初頭より開始される予定です。
(注2)草本を材料として作製する丸形の炭
9月報の活動の項にて、農業普及員(CDR)への支払い方法に関する問題点について報告しました。具体的には、3名のCDRの担当地域の世帯数がほぼ1,200世帯ほどであるという情報に基づき、3名に対する月あたりの支払額(手当とバイクの燃料費込み)を同一額としたが、その後、1名のCDRの担当地域の世帯数は1,200世帯近いものの、他の2名の世帯数はその半分ほどであることが判明しました。
こうした状況で、3名のCDRの業務量を出来る限り同等にするため、担当地域の世帯数が少なかった2名のCDRが担当する研修単位の数をそれぞれ1つずつ増やすこととしました。その候補は、アンバトランピコミューン・アンピザランタニフクタンのアンピザランタニ集落とチンジョアリボイマンガコミューン・アンピティリアナフクタンのアンバトマヌアカズ集落です。前者は国道から近く、アクセスの問題が無いため、対象地域に加えることは妥当と判断しました。他方、後者は国道から約5キロ離れているため、雨季の間のアクセスの可否が懸念されました。また住民によるプロジェクト活動への関心の高さも未知数でした。
12月15日、白石専門家がチンジョアリボイマンガコミューン・アンピティリアナフクタンのアンバトマヌアカズ集落にて、アクセス状況と住民による関心について現地調査を実施しました。その結果、雨季の間であっても4WDであれば通行が可能なことを確認しました。また住民の間で、改良かまどと植林への関心が高いことがわかりました。改良かまどについては、生活改善プロジェクトによる研修を受けられなかった住民のニーズが特に高いことがわかりました。植林については、国道沿いの別の集落で開催されたPRODAIREの研修に参加した住民や、自主的にユーカリの種を採取・播種した住民が複数いるなど、住民による関心の高さが既に行動に移されつつあることがわかりました。
これらの現地調査の結果を踏まえ、アンバトランピコミューン・アンピザランタニフクタンのアンピザランタニ集落とチンジョアリボイマンガコミューン・アンピティリアナフクタンのアンバトマヌアカズ集落に新たな研修単位を設定することを決定し、12月下旬より改良かまど研修と播種研修を開始しました。
森林総局内のアンタナナリボ事務所の確保
前月までに既報のとおり、環境省の森林総局の建物の改修工事が遅れていたため、環境省から当プロジェクトへの事務所スペースの提供も大幅に遅れていました。2015年12月中旬にようやく環境省による部屋の割り振りがあり、当プロジェクトに事務所スペースが提供されました。2016年1月中旬に、現在の事務所から環境省内の新しい事務所へ移転する予定です。
技術マニュアル作業委員会予備会合の開催
12月3日、JICAマダガスカル事務所会議室にて、技術マニュアル作業委員会予備会合が開催されました。その目的は、技術マニュアル作業委員会第一回会合の前に、これまで当プロジェクトの活動に馴染みが薄い委員を対象に、普及アプローチや活動の内容を説明し、理解を深めてもらうことで、第一回会合での議論を活発化させることにあります。
参加者は環境省から4人、農業省から3人、森林総局から1人、PAPRizの羽原調整員、JICAマダガスカル事務所から加藤企画調査員とローカルスタッフのアンドリ氏、PRODAIREから2人の合計13人でした。
最初にTVMで本年11月26日に放映されたPRODAIREに関するドキュメンタリーを放映し、森林総局のイバニ女史からPPを使い、プロジェクトの概要を説明していただきました。その後、活発な質疑応答と議論が交わされました。
1月21日 池田専門家着任
ラバカ対策研修で設置された防砂堰(アロチャ・マングル県アンドレバケリスッドコミューン)
稚魚生産研修の様子。住民の工夫により、現地で入手しやすい水生植物を使って作成した産卵床(アロチャ・マングル県アンパシケリコミューン)
講師育成のための植林 ポット移植研修を受けるローカルトレーナー(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)
生産したライチの取り木をポットに移植する技術の講師育成研修を受けるローカルトレーナー(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)
新たに研修単位が設定されることになったアンバトマヌアカズ集落(ブングラバ県チンジョアリボイマンガコミューン)
広報活動を兼ねたPAPRiz研修の様子(ブングラバ県)