2016年10月31日
稚魚生産研修に参加する地域住民(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)
MRPAプロジェクトの連携に関する実施NGO間の会議(アロチャ・マングル県ムララノクロムコミューン)
植林播種研修にて、プロジェクトから配布されたビニールチューブを切る住民(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)
植林播種研修の様子(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)
プロジェクトが配布したビニールチューブを使用した苗木ポット(ブングラバ県チンジョアリボ・イマンガコミューン)
改良かまどは、住民の日々の生活に溶け込みつつある(ブングラバ県チンジョアリボ・イマンガコミューン)
当初対象4コミューンでは、2015年より住民による活動の持続性の向上を目指し、エリア・マネージャーとローカル・トレーナー(LT)による住民への直接モニタリングを実施しています。
LTの支援を必要とせずに改良かまどを作成する住民、鍋の大きさに合わせて様々なサイズの改良かまどを作成する住民、近隣住民へ改良かまどを3,000マダガスカル・アリアリ程度で販売し利益を得る住民が少しずつ増えてきています。
一方、改良かまどは、使用によってひび割れなどが発生するため定期的なメンテナンスを必要とします。ところが、一度壊れてしまうと、補修材料の入手の困難さ等の理由から放置してしまう世帯も多いのが現状です。このため、直接モニタリングを継続し、住民による活動の持続性の向上を目指していきます。
今年の乾期は例年になく野火が多く、植林地が焼かれ植林の意欲が減退してしまった農家が少なくありません。木材生産業者(Fanalamanga)への抗議活動として、同社の所有する森林地帯へ火を放ち、これが周囲の農家の植林地に燃え広がるという現象も発生しています。後述のように、県環境・生態・森林局(DREEF)と協働で野火対策研修を進めるとともに、植林研修・啓発活動では簡易防火帯を設置することを勧めています。
また、住民による採種、個人苗畑や共同苗畑の設置などの活動が継続的に報告されています。
プロジェクト開始当初の2012年とその翌年の2013年に配布され定植されたライチ苗が結実し始め、12月頃には収穫が開始する見込みです。
また、ライチ栽培に関して以下のような活動がみられました。
新規対象コミューンの2か所の池で稚魚生産研修が開始されました。全4段階(注)からなる同研修は、9月から11月上旬にかけてすべての段階を終了する予定です。2か所のうち1か所の池(Ambodinonokaフクタン)では、10月初旬に産卵が確認され、10月下旬にステップ4の稚魚採集研修が実施されました。
プロジェクトが現在までに支援し活動を続けている稚魚生産農家は8軒です。そのうち3軒は、親魚の盗難などの被害を受けました。それにもかかわらず、盗難に遭った3軒を含む8軒の農家が、適宜、親魚を追加購入したうえで、今年も活動を続ける意欲を見せています。これは、地域での稚魚のニーズの高さを表していると思われます。また、5軒の農家では既に親魚の交配が開始しており、10月上旬現在、1軒の農家で産卵が確認されました。
(注)ステップ1:池準備、ステップ2:養殖用飼料準備、ステップ3:産卵、ステップ4:稚魚採集
新規2コミューンで実施された研修の実績は以下のとおりです。
研修名 | 研修回数 (2016年9月) |
累積研修参加者数 | ||
---|---|---|---|---|
男性 |
女性 |
合計 |
||
ライチ ポット移植研修(住民向け) |
80 |
742 |
303 |
1,045 |
ライチ ポット移植研修(ToT) |
5 |
28 |
5 |
33 |
改良かまど研修(住民向け) |
16 |
65 |
106 |
171 |
植林 播種研修(住民向け) |
122 |
1,134 |
601 |
1,735 |
植林 播種研修(ToT) |
22 |
137 |
59 |
196 |
稚魚生産研修 池準備(住民向け) |
2 |
27 |
2 |
29 |
稚魚生産研修 親魚飼育(住民向け) |
2 |
32 |
2 |
34 |
稚魚生産研修 産卵準備(住民向け) |
1 |
11 |
1 |
12 |
合計 |
250 |
2,185 |
1,084 |
3,269 |
今年度はプロジェクトの介入を減らし、DREEFとコミューンが主導で住民への植林用ポットの配布を試行しています。10月12日に開催したPMU会議におけるコミューン長および同代理からの報告から、10月中旬のフクタン長選挙の準備に忙殺され、ポット配布に関する話し合いの時間を持てなかったコミューンが多いことがわかりました。
この状況を改善すべくDREEF、コミューン、プロジェクトで協議した結果、1)コミューン側の責任者を任命する、2)ポットを必要とする住民が自らコミューン事務所に受け取りに来るように張り紙やラジオで広報する、3)マーケットの日など決められた日にポットを取りに来た人に配布する、という方針でポット配布を進めることを合意しました。
2016年9月5日から9月16日の期間、DREEFの野火対策担当官4名との協働で、野火対策研修を10サイトで実施しました。同研修は、野火が頻発する8月〜9月頃にDREFFとプロジェクトが協働で実施してきており、今年で5回目となります。
プロジェクト終了後もDREEFが中心となり住民活動の持続性を担保していくため、野火対策研修の内容をさらに充実させるよう、DREEF局長から提案がありました。具体的には、同研修の啓発活動で扱うテーマとして、野火対策のみならず、ラバカ対策、植林、改良かまどを加えました。各フクタンでの研修の準備・実施においては、エリア・マネージャーとLTによる協力のもと、DREEFの担当官が中心的な役割を担いました。
DREEFからの報告によると、住民にとって総じて満足のいく研修が実施されたようです。また研修に参加した住民からは、開拓に係る認可、土地所有の登録方法、防火帯の設置方法などの質問が活発に挙がったことが報告されました。
研修のスケジュールと参加者数は以下のとおりです。
開催日 | コミューン | フクタン名 | 参加者数 | |
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | |||
2016年9月5日 | ANDILANATOBY | Antsampanimahazo |
21 |
7 |
2016年9月7日 | Antanimihetry |
8 |
16 |
|
2016年9月8日 | Antsahalema |
8 |
14 |
|
2016年9月9日 | Bezozoro |
24 |
4 |
|
2016年9月9日 | Ambodifiakarana |
15 |
2 |
|
2016年9月12日 | AMBODIRANO | Ambohidehilahy |
20 |
11 |
2016年9月13日 | MORARANO CHROME | Antetezantany |
24 |
17 |
2016年9月13日 | Andoharano |
12 |
10 |
|
2016年9月14日 | ANDREBAKELY SUD | Andilambarika
|
18 |
19 |
2016年9月16日 | AMPASIKELY | Ampasikely |
26 |
15 |
合計 |
176 |
115 |
養殖農家の認可に向けた取り組みの一環として、10月3日から7日にかけて、県水産局の職員が既に認可申請書を提出した5軒の養殖農家を訪問しました。訪問時には、1)訪問の目的、2)養殖池の計測、3)技術支援、4)認可申請プロセス、4)申請書の記載方法に関する説明を行いました。プロジェクトからは、現場訪問のための車両と県職員に支払われるべき日当の半額(15,000マダガスカル・アリアリ/日)を支援しました。
またアンドレバケリスッドコミューンから、7件の申請が水産局に提出されました。
ムララノクロムとアンドレバケリースッドで、コミューン土地事務所の活動状況を確認しました。2016年の土地権利証明書の発行実績は、ムララノクロムで7件(申請は10件)、アンドレバケリースッドで20件(申請は46件)でした。GF職員の給与が規定どおりに支払われていないこと、ムララノクロムでは職員が1名辞職してしまいマンパワーが不足していること、牛泥棒(Dahalo)の出没に伴う治安悪化により遠隔地の集落への訪問が難しくなっていることなどから、発行件数は伸びていません。
ムララノクロムでは現在上がっている申請のすべてに対して土地権利証明書を発行するために手続きを進めています。アンドレバケリースッドでは、土地権利証明書に対する住民の関心を掘り起こすために、主に遠隔地の住民を対象にした啓発活動を実施する予定です。
現在、ブングラバでは、以下の3タイプのサイトで、LIFEモデルが活用されています。
タイプ | 対象 コミューン |
モデルの 適用単位 |
活動開始 時期 |
対象地域の 選択基準 |
---|---|---|---|---|
1 | Ambatolampy, Tsinjoarivo |
コミューン (の一部のフクタン) |
2015年5月 |
|
2 | Ambararatabe Ankadinondry, Ankerana nord Fihaonana |
谷内の灌漑水田と周りの傾斜地 | 2016年8月 |
|
3 | Fierenana, Bemahatazana |
谷内の灌漑水田と周りの傾斜地 | 2016年8月 |
|
タイプ1は、PRODAIREが、タイプ2、3はPAPRizがモデルの展開資金を負担しており、PRODAIREは県局へのモデル展開に関するノウハウの移転を行っています。
対象とする9フクタン(約3000世帯)に14の研修単位があり、これまでに以下の表に示す研修が実施されました。
(期間:2015年6月−2016年10月)
研修テーマ | 研修回数 | 参加者数 | ||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 合計 | ||
植林 |
249 |
4,326 |
2,888 |
7,214 |
野火対策 |
16 |
258 |
234 |
492 |
改良カマド |
238 |
2,175 |
2,758 |
4,933 |
ラバカ対策 |
64 |
125 |
16 |
141 |
PAPRiz灌漑稲作技術 |
10 |
64 |
3 |
67 |
合計 |
577 |
6,948 |
5,899 |
12,847 |
4コミューンの7つの灌漑スキームとその周辺の傾斜地で、17の研修単位が設定され、植林26人、改良カマド24人、PAPRizの稲作技術19人のローカルトレーナー(PAPRizではリソースパーソンと呼ばれている)が選ばれ、講師養成研修(ToT)を受けました。
このタイプのコミューンでもCDR(コミューンの開発普及員)を活用して、普及活動を実施する予定であるものの、PRODAIREとPAPRizによるCDRへの支払いの対象となる活動が異なるため、CDRの活動を管理する県局に混乱が生じたこと、県農業局のPRODAIREコーディネーターが、PAPRizのコーディネーターや研修講師を兼任しており、多忙なことから、対象地域での啓発活動やToTの実施の遅れにつながりました。解決策として、PMUなどを通じて、関係者にPRODAIREとPAPRizでのCDRのToRの差異を十分に説明するとともに、PAPRizの対象地域でも県環境局のコーディネーターを流域管理に関する活動の責任者とすることとしました。
10月7日に農業省で、10月17日に環境省でLIFEモデルとマニュアルの説明会を実施しました。両省とも次官のイニシアティブでの説明会実施となり、マニュアル作成委員会によるモデルの説明に引き続き、活発な質疑応答が行われ、以下のようなコメントが参加者より出されました。
10月5日、アンバトンドラザカにてアンバトビー鉱山会社との連携に係る会議が開催され、アンバトビー、NGO、プロジェクトのそれぞれから担当者が参加しました。会議では、1)NGOからアンバトビーへ報告すべき情報、2)LIFEアプローチの説明、3)経理書類などNGO登録に必要な書類の準備と予算の見直し、について協議しました。
10月14日に首都タナで関係者間の打合せを行いました。出席者は、MRPAから委託を受けソフィア県ベアラナナで活動を展開しているNGO TPFのエリア担当トロ氏、プロジェクト総括、プロジェクトコーディネーターのキャロル氏、TPFの活動を支援しているNGO HO AVY SOAの代表のデルフィン氏、ニリラント氏の5名です。会議では、9月に行われたMRPAとの共同モニタリング時にPRODAIREから提言した、「各アクターの役割の整理」や「ローカルトレーナへの支払い方法の簡易化」などの実施状況を確認しました。また、PRODAIREの終了後、TPFへのモデル展開に関するノウハウや経験の移転は、アロチャのNGOであるHO AVY SOAが行うため、同NGOの役割や責任も明確にしました。
10月17日から20日の日程でトロ氏がアロチャマングロ県のプロジェクトサイトを訪問し、1)現場視察(エリア・マネージャーによる住民活動のフォローアップ、LTによる住民への研修)、2)エリア・マネージャーとの会議、3)関係者間の打ち合わせ(活動管理体制と各関係者の役割・業務、関係者が使用する報告書様式の作成、10月のミッション活動内容の決定)を行いました。
世界銀行の日本社会開発基金(JSDF)を活用したLIFEモデルの展開を進めるため、NGOのConservation International(CI)との協議を進めています。JSDFに申請するプロジェクト(以下、「JSDFプロジェクト」)のコンセプトノートを作成するとともに、サイト候補地を調査しました。JSDFプロジェクトでは、CIが長年保全活動に取り組んでおり、緑の気候基金(GCF)の下で新プロジェクトが予定されている「Ankeniheny- Zahamena Corridor」(CAZ)の周辺のフクタンを対象にすることを想定してます。JSDFプロジェクトの目的は、これら地域の流域保全です。CAZ周辺のフクタンでは、一般に、PRODAIREのサイトよりも木が多く見られますが、今後は、人口増やCAZ内での保全活動の強化により、これらのフクタン周辺への資源利用圧力が高まり流域の荒廃が進むことが予想されます。実際、植林やカマドに関心を持つ住民も少なくありません。このため、LIFEモデルの活用による流域保全に資するJSDFプロジェクトの形成を進めていくことで、GCFの新プロジェクトとの相乗効果も期待でき、地域全体として流域保全の効果が高まると期待されます。
今後は、JSDFへの申請に向け、JSDFプロジェクトの詳細計画を詰めていくとともに、マダガスカル側、日本側の関係機関との調整を進めていきます。マダガスカル側については、世界銀行マダガスカル事務所やMEEFにコンセプトノートを共有し、協議を開始したところです。日本大使館にもJSDFプロジェクトの概要を説明し、大まかな理解を得ました。
世銀が策定中しているPADAPの1)マダガスカル側の責任者である農業省のオリバ氏、2)PADAPを共同実施するAFDの資金で同プロジェクトの対象地域であるソフィア県を調査するコンサルタント、さらには、3)ワシントンの世銀本部からの同プロジェクトの詳細設計チームと会い、LIFEモデルの説明と連携の可能性に関する協議を行いました。1)、2)の両氏からは、PADAPが用いるランドスケープアプローチは、特定の人や組織に対し資金や物資での補償を行い、焼き畑から集約的な傾斜地利用への転換を図る、あるいは、植林など流域保全を行うものであるため、LIFEの「すべての人に機会均等を」という理念と相いれないのではないかという意見が出されました。3)からは、LIFEのコストパフォーマンス良さを高く評価され、今後とも連携の可能性を探っていければとのコメントがありました。