本プロジェクトは、平成25年度の「地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)」として採択された案件です。SATREPS(サトレップス)とは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で実施している、地球規模課題解決と将来的な社会実装に向けて日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間の研究プログラムです。
本プロジェクトでは研究期間(5年間)を通じて地球規模で家畜の健康被害をもたらしている原虫病、特にトリパノソーマ病、ピロプラズマ病および媒介マダニについて、モンゴル全国規模での大規模疫学調査を実施し、現在流行している原虫野生株の樹立とマダニの種同定ならびに流行・発生時期の動向調査を実施します。得られた詳細な疫学情報をもとにプロジェクト3年目と5年目には原虫病と媒介マダニの流行分布地図を作成し、地域ごとの原虫病分布動向を明らかにするとともに、重点的に対策すべき高度流行地域とそこに分布する原虫種およびマダニ種を明らかにします。さらに、疫学調査と同時進行で感染家畜由来血液材料から原虫野生株を樹立し、プロジェクトの1年目後半から4年目前半にかけて主要抗原および遺伝子解析を実施してモンゴル国内で流行している原虫種に最適な診断用抗原と診断標的遺伝子配列を決定します。このようにして得られたモンゴルで流行している原虫の詳細な遺伝子レベルでの情報を現実の家畜衛生対策に反映させるために、モンゴルで現在行われている原虫病診断法の問題点や改善すべき点を精査し、日本側研究グループが有するイムノクロマト法(ICT)、LAMP法、ELISA等の最先端診断技術基盤をどのようなフォーマットで提供すればモンゴルでの社会実装が可能かについて検討します。プロジェクトのゴールとして、4〜5年目までにモンゴルで実用可能な簡易迅速診断キットの完成を実現します。モンゴルのような家畜原虫病高度汚染国での大規模疫学調査とそれに立脚した原虫病対策は、世界規模での原虫病対策を策定する上でも極めて有用かつ具体的なモデルとなることが期待できます。