2017年1月31日
1月20日(金)〜25日(水)の日程で、プロジェクトの日本側チームリーダーである井上理事・副学長ほか2名の短期専門家、大学院学生1名、機器設置技術者1名がモンゴル国立獣医学研究所を訪れました。今回の訪問の目的は、2017年の活動計画についての打合せや日本で調達した機材の設置と試運転などでしたが、最大のイベントは馬の病理解剖です。以前ニュースにも書いたトリパノソーマ病の馬が見つかったドルノゴビの農場から、特に重病で完治の見込みのない1頭の雌馬をプロジェクトで購入しており、病理学専門の渡邊特任助教と一緒に同行した大学院生がモンゴル側の研究者たちと共に病理解剖を行ったのです。
本プロジェクトでは、これまでにも2頭の雄馬を病理解剖していますが、今回は初の雌馬。通常雌馬は、雄馬に比べ視診で「トリパノソーマ病」とわかる症状がはっきり出ないこともありなかなか見つけ難いのですが、今回プロジェクトで購入した雌馬はトリパノソーマの感染による神経疾患で鼻から口先まで歪んでおり、素人目でも病気とわかるほどでした。この雌馬を病理解剖することによって、雄と雌では病気の発生や症状がどのように違うのかを詳しく調べることができ、プロジェクトで開発している簡易迅速診断キット(immunochromatographic test = ICT)の性能をより良くするのに役立てる予定です。
その他のイベントとしては、帯広畜産大学獣医病理学研究室の古林教授、堀内助教が執筆した「馬の解剖マニュアル」をモンゴル語に翻訳した教科書を、モンゴル生命科学大学に寄付する贈呈式が行われました。贈呈式には、生命科学大学の獣医学部長や教授、たまたま大学で研修を受けていた地方獣医師も出席し、井上理事・副学長から学部長に教科書300冊が手渡されました。この教科書が、獣医学部の学生だけでなく地方獣医師の能力強化にも役立つことが期待されます。
短期専門家の滞在は実質4日間でしたが、内容盛りだくさん!で時間が足りないほど充実した滞在でした。