2018年7月29日
7月29日、日本の救急医療の専門家の訪問に合わせ、モンゴルの救急医たちが中心になって開発した一次救命処置(Basic Life Support:BLS)のパイロット研修が実施されました。
BLSは、心肺停止状態の人を発見した際に、直ちに行うべき処置を学ぶ研修です。小児患者に特化したBLS研修は、すでに本プロジェクトの活動の一つとして、小児医療従事者を対象にモンゴル国内で開発され、実施されてきました(プロジェクトニュース2016年11月30日、2017年1月27日、2017年9月11日、2017年12月24日、2018年1月7日参照)。今回は対象を全ての年齢層に広げただけでなく、全ての研修医や医療者が受講できる内容に拡充させました。
研修資料の開発に、約半年ほどの時間をかけました(プロジェクトニュース2018年2月13日参照)。テキスト作り、デモ映像作成など、プロジェクトは必要に応じて支援をしましたが、基本的にその全てをモンゴルの救急医たち10名ほどが行いました(図1)。
パイロット研修には、救急医療を勉強している研修医たち中心に12名が参加しました(図1)。講義はデモ映像を効果的に利用し、指導者が変わっても同じ内容を指導できるよう配慮していました。講義の後には実技の練習を繰り返し行い、学んだ知識を実際に活用できるようにしていました(図2)。また最後は4名のグループに別れてチームでの心肺蘇生を行い、実際の現場で適切に心肺蘇生が行えるよう練習していました(図3)。
今回パイロット研修で見つかった課題を修正し、今後は実際に国内で広めることができる研修に作り上げて行く予定です。BLSは特別な器具を用いずに行う心肺蘇生の基本です。国内全ての医療者が学ぶことで、モンゴルの一次および二次レベルの医療の質の向上が期待できます。プロジェクトでは、研修の管理体制も含め、実質的にBLS研修を国内に普及させることができるよう、支援を続けたいと考えています。
モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明
図1.BLS研修の開発メンバーとパイロット研修参加者
図2.BLS研修における実技練習の風景
図3.チームで心肺蘇生を練習する様子