2015年5月27日
エーヤワディ地区では、雨期入りまでまだ強い日差しと暑い日々が続きますが、2015年の雨期作を前に、4月30日と5月6日〜7日にかけて種子の配布を行いました。配布する種子は、種子生産農家における保証種子(CS)生産のための原種種子(RS)の配布と、一般農家におけるCSを使った稲作の経験の体得と周辺農家への展示(デモンストレーション)を主目的としたCSの配布です。
展示用のCS配布にあたっては、デモンストレーション圃場として周辺農家に広く認知されるようにするために、圃場に立てる幟(旗)も配布しました。RSを配布した種子生産農家の圃場には、種子生産圃場であることを示す立看板も毎年設置しています。
種子生産農家へのRSと、一般農家へのCSの配布にあたっては、事前にタウンシップ事務所の普及員が現地のニーズを整理した上で、タウンシップごとに配布する種子の品種を決定しており、いずれも現地で大変人気がある品種です。
2015年の雨期作では、合計で150の種子生産農家と、860の一般農家に種子配布を行いました。その内訳(農家数と種子量)は次の表のとおりです。
種子種別・品種名 | ヒンタダ タウンシップ |
ミャウミャ タウンシップ |
ラプタ タウンシップ |
合計 | |
---|---|---|---|---|---|
種子生産用 RS |
Sinthukha | 38農家 (57basket) |
18農家 (27basket) |
農家 (15basket) |
66農家 (99basket) |
Manawthukha | 11農家 (16.5basket) |
12農家 (18basket) |
10農家 (15basket) |
33農家 (49.5basket) |
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Paw San Yin | - | 2農家 (3basket) |
30農家 (45basket) |
32農家 (48basket) |
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Sinthwe Latt | 1農家 (1.5basket) |
18農家 (27basket) |
- | 19農家 (28.5basket) |
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デモ用CS | Sinthukha | 400農家 (400basket) |
230農家 (400Basket) |
90農家 (90basket) |
720農家 (890basket) |
Paw San Yin | - | - | 90農家 (90basket) |
90農家 (90basket) |
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Manawthukha | - | - | 50農家 (50basket) |
50農家 (50basket) |
(注)1basket=種籾約20キログラム
種子配布にあたっては、はじめてCSを使う一般農家も一定数含まれることから、CSを使って稲作を行った経験がある農家に、従来の種子と比較した技術・経済的な便益や自家採取種子との違いなどを、同じ農家の目線で集まった農家に共有してもらいました。また、CSを使った良質な飯米や、保証種子のマーケットでの評価・価値やニーズについて、精米業者や米穀商といった市場関係者から種子生産農家と一般農家に紹介してもらい、市場状況を共有する機会を設けました。これらを通じて、種子生産農家やCSを使う一般農家が、CSやCSを用いて生産された飯米がどのように市場で評価されているかを学び、種子生産やCSを利用する稲作の経済的・技術的な優位性についての経験と情報を共有した上で、種子生産や稲作に積極的に取り組めるように配慮しています。
種子配布会場横で、集まった市場関係者や農家に、種子生産とプロジェクト活動をポスター展示で紹介する様子。
種子配布会場に集まった農家と配布する種子(RSとCS)。黄色の旗はCSを配布するデモ圃場に立てる旗。
種子生産の体験を共有する種子生産農家。
CSを使った稲作について経験を共有する農家。
優良種子や良質な飯米の市場ニーズについて語る市場関係者。
種子の使い方を農家に説明する普及所長。
表彰の様子。
種子配布の場では、昨期(2014年雨期)に優秀な成績を記録した種子生産農家と、優れた普及員を対象にした表彰式も行いました。この表彰式では、各タウンシップから5名の優秀種子生産農家、3名の優良種子生産農家を選定して表彰したほか、圃場の巡回指導やアドバイスにあたった普及員のなかから優秀な普及員を各タウンシップで3〜4名選定し、種子生産農家とあわせて表彰を行いました。表彰する農家は、栽培、圃場審査、農産物検査をそれぞれ100点満点で評価して、上位者を選定しています。
こうした表彰式は、次期作付用の種子配布と同時に実施しており、これから種子生産を行う農家にとっても、またこれらの農家を担当する普及員にとっても、生産活動や技術指導活動の励みになることが期待されます。
3つのタウンシップの表彰者。女性の種子生産農家や普及員も数多く活躍しています。
関係者を交えた情報交換と普及・啓蒙計画の協議の様子。
種子配布に引き続き、CSを配布したデモンストレーション圃場を活用するCSの啓蒙や利用促進のための方策について、普及員と市場関係者を交えた協議を行いました。 協議の場では、良質な種子のニーズが高く、農家や市場は常にCSを筆頭に良質な種子を求めている状況が市場関係者より改めて説明されるとともに、プロジェクトが支援する種子生産農家が生産するCSの買取りや、買い取ったCSを精米業者が抱える農家に提供し、生産される良質な飯米を業者が高く買取る方策について、普及員も交えて具体的な議論を行いました。
協議では、CS自体についての正しい理解の促進とCSの普及啓蒙に向けて、デモンストレーション圃場を活用する普及方法と農家への技術指導計画を含む雨期作の普及・指導計画の方向性も議論しています。今後、カウンターパートはこうした協議やプロジェクト専門家の助言を得ながら、具体的な普及・啓蒙活動計画を立案し実施していくことになります。