JICAインターンシップ・プログラム 学生の受け入れ

2020年2月1日

「ヤンゴン公共バスサービス改善プロジェクト」ではJICAインターンシップ・プログラムを通じて、2020年2月~3月の期間、インターン生として大学で都市工学を専攻する畑岡さんを受け入れることになりました。畑岡さんには1ケ月の間、プロジェクトの諸活動に協力いただきながら、国際協力や開発援助ついて理解を深めていただく予定です。

インターン生からのあいさつ

大学で都市工学を専攻する畑岡です。ヤンゴンにおけるバスサービス改善プロジェクトやその他の都市開発プロジェクトについて知り、考察することで、途上国における急速な都市化を実感したいと思っています。また、開発コンサルタントを含め、海外での都市開発に関わる多様な業界を知ることで、自分の将来像をより明確なものにしていきたいと思っています。1ヶ月という短い期間ですが、多くのことを吸収できるよう取り組んでまいります。

JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(1):ヤンゴン市における Informal Settlement の実態調査

ヤンゴンでは、農村から都市への人口流入が急速にすすんでいます。極貧層である農村からの移住者はまとまった地域に土地を占拠し、Informal Settlementを形成します。これらのInformal Settlementの多くは災害リスクの高い沼地等に位置し、整備された基盤インフラをが供給されていません。拡大し続けるヤンゴン市内のInformal Settlementの実態を把握するため、Yankin地区、Nyaung Villege、Along Pun Hlaing River等の調査を行いました。

JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(2):バゴー橋建設現場視察

バゴー橋建設JICA事業の建設現場を視察しました。ヤンゴンは複数の河川に囲まれていますが、河川を超えた都市の拡大を図るため、橋梁の建設需要が高まっています。バゴー橋は日本企業の投資がすすむティラワ経済特別区とヤンゴン市を結ぶ位置に存在します。そのため、バゴー橋建設は、ヤンゴン市対岸の開発が進んでいるタンリン地区のみならず、日本にとっても重要な事業となります。
事業事務所で事業の概要に関する講義を受けた後、建設現場へ向かいました。陸上部と河川部両者の建設現場を視察しました。陸上部ではフライオーバーのための地盤整備や打ち杭が、河川部では鋼管矢板井筒基礎工事が行われていました。バゴー橋建設は数年後に施行完了する予定であり、バゴー橋開設に触発されて起きている周辺の都市開発も含め、近い将来その一帯に現れる都市像について考えさせられました。

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JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(3):JICA岡崎専門家との面談

JICA専門家としてDUHD(Department of Urban and Housing Development)に派遣されている岡崎専門家に1. Informal Settlement改善事業の現況と2. 公営住宅の歴史的変遷についてお話を伺いました。

1. Informal Settlement改善事業の現況

主に、現地のNGOであるWomen for the World主体の取り組みとミャンマー建設省のDUHD主体の取り組みの2つがあり、両者の取り組みの概要を岡崎さんに伺いました。それぞれのアプローチには短所・長所があり、今後、その考察を深めるとともに、それぞれの展開過程を詳しく調査していきたいと思いました。
Women for the Worldは既に複数のプロジェクトを完了させているので、その内のいくつかを現地視察しようと思っています。同時に、ミャンマーの建築家から構成されるCAN(Community Architect Network)がWomen for the Worldの取り組みに大きく関わっているようなので、今後、CANの活動についても調査する予定です。
一方でDUHDによる取り組みは現在モデルハウスの検討が進んでいる段階であり(3月中旬にモデルハウス着工予定)、今後の展開を追っていきたいです。

2. 公営住宅の歴史的変遷

今まで、DUHDは公営住宅を様々な形で供給してきました。社会主義時代には居住者割当制によって大量公営住宅供給がなされ、軍政時代には郊外でのニュータウン開発や市内に点在する低・未利用地での公営住宅建設が行われました。建て替えが進んでおらず、これらの公営住宅は現在も残っています。今後、これら民政移管前に建てられた公共住宅の現状をみていきたいです。

JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(4):公務員向け公営住宅の視察

公務員向けに建設された公営住宅がヤンゴン市内には複数存在しますが、今回はダウンタウン近辺に位置する2つ住宅団地(PasapalaとOakthar)を視察しました。Pasapalaは建設省の役人向けに、Oaktharは高級官僚向けに建設されたというターゲット居住者像の違いがあります。
PasapalaはRC造、4階建のアパートからなる住宅街です。1階部分は商業用途として使われているものも多く見受けられました。住宅街にしては人通りも多く、ストリートアクテビティ(飲食・ボードゲーム・昼寝等)も豊かでした。住宅そのものの荒廃が進んでおり、外壁塗装のはがれや柵の破損が見られました。また、ゴミの散乱もあり、住宅管理度合いの低いことが予想されます。

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Oaktharは外材として煉瓦を用いた4階建のアパートからなる住宅街です。1階部分は駐車場や個人庭として使われているものが多く見受けられました。中庭や袋小路となる空間が住宅棟間に存在し、閑静な住宅街を形成しています。緑被率も高いです。住宅棟の裏にゴミの散乱が少し見られましたが、際立った破損等はなく、ある程度、住宅団地として管理がなされていることが予想されます。

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JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(5):Alley Garden Project視察

ヤンゴンの中心市街地では、英国の植民地時代に形成されたグリッド状区割りが引き継がれていますが、その背割り沿いには排水用空間が存在します。多くの排水用空間は管理が行き届いておらず、不衛生で劣悪な環境となっています。Doh Eainはこれらの排水用空間を公共空間として再生する取り組みを行なっており、既に8箇所でプロジェクトが完了しています。今回はLuu Chit, Nat Chit, 101Stで新たに再生された排水用空間のオープニングイベントに参加しました。
幅員4m程の空間には遊具、ウッドデッキ、プランターなどが設置され、地面や壁面は色鮮やかに塗装されていました。イベント時、大勢の子供たちで賑わっていました。スタッフの方に話を伺うと、プロジェクトで再生された公共空間の持続性は近隣住民の意識に大きく左右されるとのことでした。今回視察した101Stは住民のプロジェクトに対する意欲が非常に高く、今まで行なったプロジェクトの中でも成功例とのことです。子供が多い地域ということもあり、イベント時以外も近隣住民によって頻繁に利用されている様子です。

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個人的に、このAlley Garden Projectは以下2つの点で興味深いと思っています。

1)ヤンゴンでは大規模な都市開発が多発している一方で、住民主体の「まちづくり」が世界的に注目を集めています。このプロジェクトは住民がデザインや使い方を考えているという点で、「まちづくり」的活動と言えると思いました。経済発展が著しい都市ヤンゴンにおいて、これら2つの性格の異なる都市介入がどう影響を及ばしあっているのか、そして結果的にどのような都市構造が生じてきているのかに興味を覚えました。
2)ヤンゴンの都市は、先進国や近隣諸国との関わりの中で変化している最中にあります。Doh Eainのスタッフの多くは欧米人で、彼らがヤンゴンの若者を巻き込んでDoh Eainの運営がなされています。欧米人・現地の若者・住民といった3者の関係性がプロジェクトの展開にどう影響しているのか気になりました。

JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(6):San Pyaバス停現地視察

ボトルネック解消のパイロットプロジェクトとして行われたSan Pyaバス停を現地視察しました。
幹線道路であるLay Daungkan道路とThanthumar道路の交差点付近に位置し、屋台のひしめき合うSan Pya Marketに隣接します。そのため、自動車やバスだけでなく、歩行者やサイカー(三輪の人力車)の交通量も多く、にぎわいが創出されています。
パイロットプロジェクト以前は、San Pya Mrket周囲で営業する露天商が敷地からはみ出し、バス停のある路上を占有していたため、交通のボトルネックとなっていたそうです。パイロットプロジェクトにより、San Pya Market対角に位置する代替地への露天商の移転や交通量調査をもとにしたバス停の効率的分散化等が図られました。一年前に行われたプロジェクトですが、現在どのような使われ方をしているのかを視察してきました。以下所感です。

1. バス停留所

レーンマーキングで囲われたバス停留枠内において、露天商は見受けられませんでした。交通量の多さから、露天商が路上を占有していたことでもたらされた交通渋滞の深刻さ、パイロットプロジェクトによる交通渋滞緩和への貢献度が想像できます。停留枠内において、露天商はないですが、タクシー駐車は見られました。また、バス停留枠内ではなくてもその直前後にタクシーやサイカーが停車し、バスの停留枠内停車を妨げている場面もありました。タクシー専用の停車場所が隣接して設けられていますが、満車状態で、タクシー台数に対し、敷地が足りていないことも原因の一つだと思われます。とは言え、タクシー駐車のための更なる敷地は近辺に存在しないので、駐車スペースを設ける以外の対応が求められるのだろうと感じました。

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バス停留枠内付近に駐車されたタクシー

2. バス乗車方法

バス到着直前にバス待機者がバス停留枠内へ侵入していく行為が多く見られました。これにより、バスが停留枠内で停車することができず、後方車両の通行を妨げていました。バス乗車時の習慣的行為を改変するにはパイロットプロジェクトサイトのみの取締り強化では難しいと思います。日常的人間行動とそれが及ぼす都市活動への影響について考えさせられました。

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バス到着直前にバス停留枠内に侵入するバス待機者

3. 露天商代替地

移転先としての代替地において露天商の営業は見られませんでした。露天商を収めるための簡易な構造物、店名が記載された標識、物資運搬用の荷車等が代替地に残されていました。3方を幹線道路(その内2つは高架)に囲まれ、周辺地域から死角になる点、道路からのアクセスが困難な点などが、露天商の代替地における営業継続を難しくした物理的障壁と考えられます。
露天商移転はアジア諸国の都心部で頻繁に話題になります。衛生面の改善を目的に行われたシンガポールのホーカーセンターへの露天商移転、景観改善を目的に昨年行われたタイのカオサン通り露天商移転、清渓川復元事業に伴いソウルで行われた大規模商業施設への露天商移転などが頭をよぎりました。都市における露天商の意義・あり方・将来像などについて考えるきっかけとなりました。

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露天商代替地(夜間のみ営業)

JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(7):YCDCでの交通工学トレーニング参加

YCDCでは交通工学トレーニングが週2回行われます。公共バスサービス改善プロジェクトの日本人職員がYCDCの交通局職員に対し、交通課題、交通量調査、交通計画等をテーマにした教育をします。
今回、バス停での調査に関するトレーニングに参加しました。公共バスサービス改善プロジェクトの一環として、ボトルネック解消のためのパイロットプロジェクトが既に数件行われていますが、その際に用いられた調査方法が説明されました。バス停でのバス停車時間とバス利用者数を路線番号ごとに記録します。説明を受けた後、Sule-YCDCバスターミナルで実際に調査が行われました。
今回のトレーニング参加を通じ、開発面の協力だけでなく、将来の自立的発展を促す「人づくり」の具体的取組をみることができました。

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JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(8):ティラワ地区現地視察

ティラワ地区には日本企業の進出が進むティラワ経済特区が存在します。インフラ整備等の開発段階から日本政府が円借款により支援しており、現在、インフラ整備と工場誘致・建設が同時進行で行われています。現地視察では、インフラ整備の一環として完成したティラワ港、ティラワ経済特区、経済特区に開発以前から住んでいた住民の移住先を視察しました。
成熟した都市では脱工業化が図られ、元工業系敷地の土地利用転換方法が多く議論になります(ドイツのエムシャーパークや韓国の石油タンク文化公園などはその一例でしょう)。今まで、日本やアメリカで都市計画を学んできた私も脱工業化に伴う再開発手法を考える機会に多く恵まれてきました。一方で、ヤンゴン周辺部では土地の工業利用化が現在進んでおり、その多くは海外企業(多くが先進国)が対象となっています。グローバル化の中、脱工業化が進む先進国と工業化が進む発展途上国の関係性や現代における工業化のあり方について考える機会になりました。

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JICAインターンシップ・プログラム 活動報告(9):Dagon Seikkan TownshipでのDUHD大規模公営住宅現地視察

Dagon Seikkan Townshipはダウンタウンから北東方向15kmに立地し、未開発地が多く残っています。これらの未開発地において、建設省の都市・住宅開発局(DUHD)が大規模公営住宅を計画しています。その一部は竣工され、住戸の売却が進んでいます。
都市圏居住人口の急速な増加に伴い、ヤンゴン郊外では大規模住宅建設が進んでいますが、Dagon Seikkanの大規模公営住宅建設もその流れの中に位置付けられます。ヤンゴン校外における大規模住宅建設の多くは、民間資本主体のものですが、Dagon Seikkanの大規模公営住宅は公的機関によるものという点で特徴的です。
既に売却が進んでいるYadanar Hninsi Residenceを訪問しました。2年ほど前に竣工し、約40%の住戸が売却済みとのことです。住棟間には広場が設けられ、一階部分には商業施設やオフィス等の店舗入居スペースが設けられています。視察時は事業者が確認できませんでしたが、将来居住者が増加すれば入居希望店舗も現れるでしょう。
Gallery Centerには周辺も含めた開発計画模型が設置されており、住宅棟のみならず、バスターミナル、小学校、スポーツ複合施設も計画されていることがわかりました。大規模住宅開発は住居以外の様々な要素を同時に考慮する必要があります。日本が高度経済成長期に行ったニュータウン開発の形態と比較してみるのも興味深いと思いました。

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インターンシップをおえて

1ヶ月に及ぶインターンシップはあっという間でしたが、多くのことを経験し、考える機会を得ることができました。インターンシップ開始前に活動の着眼点としていた開発コンサルタントという業種についてと、ヤンゴンという都市について感じたことを簡単に述べたいと思います。まず、開発コンサルタントという業種についてですが、カウンターパートのトップクラス官僚と密に連携しながら取り組む姿に感銘を受けました。ヤンゴン政府にとって大変重要なプロジェクトを請け負っているということ、そして、ヤンゴン政府との間に強い信頼関係が構築されていることに気付きました。このような環境で働くことのできる開発コンサルタント業界は魅力的だと思います。また、ヤンゴンという都市について、企業やNGO等が外部から流入し、都市の新たな姿が作られていく過程を感じとることができました。政府開発援助や外資の大手ディベロッパーなどによる外部からの巨大な資本流入に限らず、ボトムアップ型のパブリックスペースデザインやInformal Settlement改善事業なども外部の人が先導して地元の人を巻き込みながら行われる形態が多く見受けられました。以前にも増して、資源や情報の流出入が激しくなった現代において急速な変化を遂げるヤンゴンという都市に興味を覚えました。
今回のインターンシップは様々な発見・学びのある充実したものでした。これらの経験を活かす方法を模索し続けたいです。また、活動を支援してくれたスタッフの方々に感謝申し上げます。