プロジェクト概要

プロジェクト名

ジャフナ大学農学部による乾燥地域農業の教育・研究能力向上プロジェクト

対象国名

スリランカ

署名日(実施合意)

2021年12月8日

協力期間

2022年6月25日から2027年6月24日

相手国機関名

教育省 ジャフナ大学

背景

スリランカ北部地域は内戦終結以降、基幹インフラの整備・改善は徐々に進んでいるものの、北部州の全5県とも国が定める貧困ラインのRs.4,856ルピー/月(2019年)を下回っており、コロンボを擁する西部州等との格差是正のため、更なる社会基盤強化、社会経済活動の活性化が必要とされている。特に、同地域において農畜産業は主要産業であり、住民の重要な生計手段であるが、農業関連インフラや農学知識の不足に加え、干ばつや洪水被害を受けやすく気候変動に脆弱な地域であることから、地域住民の生活の安定と向上のため、農業生産性の向上及び気候変動への適応力の向上が重要な課題となっている。これらの課題に対しスリランカ政府は「包括的農業政策2020-2025」に基づいて、農業生産性の向上、農村住民の経済発展、農業の国際競争力の向上、生活の改善、気候変動への耐性の向上、国立大学の農学部による人材育成を重点的項目として挙げている。また、スリランカ政府の高等教育政策においては、大学教育の強化、研究者育成のための大学院教育や認定学位・質保証の強化の方針を打ち出している。
北部州で唯一農学部を擁する高等教育機関はジャフナ大学(UOJ)であるが、同大農学部は、質の高い教育、先進的な研究、地域での知識普及を通じ、農業技術及び農産業分野における質の高い人材を輩出することを目的としている。同学部の本校舎はキリノッチに所在するが、1996年~2014年までは内戦の影響で同大学のジャフナ校舎に一時移転し、他学部の施設・設備等を借用して運営され、2014年にキリノッチへ再移転後も施設は貧弱で、学生に提供できる実習・実験の機会は限られ乾燥地農業の研究活動も限定的であった。このような状況下、JICAはスリランカ政府からの要請を受けて、2016年から2021年にかけて「ジャフナ大学農学部研究研修複合施設設立計画(無償資金協力)」を実施し、研究棟、試験圃場などの建設と機材の整備を行った。

目標

上位目標

乾燥地域農業における農業生産性及び気候変動への適応性の向上に資する質の高い人材がジャフナ大学農学部から輩出される。

プロジェクト目標

ジャフナ大学農学部において実践志向型教育・研究の基盤が強化される。

成果

1.ジャフナ大学農学部の教育、研究、社会連携/アウトリーチ及び管理運営を改善するための実施体制と活動方針が整備される。
2.アカデミックスタッフの実践志向型教授能力が改善される。
3.乾燥地域農業の課題等に関する研究を通じて、アカデミックスタッフの研究能力が強化される。
4.社会連携/アウトリーチの活動が強化される。
5.教育・研究を推進するための組織運営体制が改善される。"

活動

計画フェーズ

1-1.本事業の調整・計画・実施のためのワーキンググループと、効率的なプロジェクト活動のためのプロジェクト技術委員会(PTC)の設置。
1-2.ベースライン調査の実施と、農学部の現況の分析。
1-3.農学部の教育、研究、社会連携/アウトリーチ及び管理運営を強化するためのワークショップの開催。
1-4.4、5年間のプロジェクトに係る効果的な指標を設定した詳細な活動計画の策定。

実施フェーズ

2-1.現存の学習教材を改良し、教科書を作成する。
2-2.教授方法に係る能力開発研修を実施する。
2-3.実験室および機材の使用を改善する(機材の標準操作手順(SOP)および操作マニュアルを作成する)。

3-1.アカデミックライティングやパブリケーションに係る能力向上研修を実施する。
3-2.共同研究(研究ショーケース、セミナー、ネットワーキング等)の推進。
3-3.学科の研究戦略(ワークショップ、セミナー、研修等)を策定する。

4-1.アウトリーチ委員会の役割と責任を明確にする。
4-2.行政機関、地域社会、民間企業との社会貢献活動を推進する。
4-3.アウトリーチ活動への学生の参加機会を増やす。

5-1.教育研究活動における学科運営を改善する。
5-1-1.機材管理と学科運営システムを改善する。
5-1-2.アカデミックサポートスタッフ向けに現存の機材に係る技術研修を実施する。
5-2.SDCにおける農学部スタッフ研修プログラムを支援する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣(合計約210M/M)
長期専門家:チーフアドバイザー/大学運営、専門家/農業研究・農業教育、業務調整
短期専門家:課題分析、教育改善、研究強化、アウトリーチ強化
2)研修員受け入れ:本邦研修(大学運営、教育・研究・アウトリーチ強化)
3)機材供与:実践志向の教育・研究に必要な機器等

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
プロジェクト・ディレクター:ジャフナ大学副学長
プロジェクト・マネージャー:ジャフナ大学農学部長
プロジェクト・テクニカル委員会(ジャフナ大学農学部6学科の学科長、農場長、コンピュータユニット及び農学部図書館の代表、その他)
2)案件実施のためのサービスや施設(プロジェクト事務所、家具、光熱インターネット通信費)、現地経費の提供