2021年4月13日
2021年4月13日、競争消費者庁は2020年版の競争法の運用状況等に関する年次報告書を公表しました。
ここでは、2020年版の年次報告書のうち、競争法の運用等に関連する部分について簡単に紹介します。
2018年競争法を施行するため、2020年3月24日、政府は競争法の特定条項の施行に関する細則政令No.35/2020/ND-CPを公布した。本政令は2020年5月15日から施行されている。同政令は7章、30条から構成され、関連市場の画定、相当程度の競争制限効果の評価、経済集中規制、競争分野の法執行手続等に関する条項の施行細則を規定している。
2020年においてVCCAは、商工省が国家競争委員会の組織体制(総局モデルに相当する)の構築について政府・政治局に対して説明するに当たり、助言を行った。当該説明は、国家競争委員会の責務、権限及び組織体制に関する政令草案を完成させるための基礎となるものである。また、VCCAは、同政令草案が早期に政府に提出されるよう、今後も各省庁、各レベルの指導意見を真摯に実施することとしている。
2020年においてVCCAが実施した取組は以下のとおり。
・豚肉価格の高騰に関し、申立情報と収集した情報から、2019年末~2020年頭に豚肉の価格が操作されている疑いが認められたことから、政府・首相・商工省幹部の指導の下、VCCAが商工省内外の機関と協働して豚肉の畜産、生産、販売、流通、その加工食品など、サプライチェーンの事業者・組織・個人を対象として検査を実施した。
・特定事業者が低圧ガス供給において独占的地位を濫用しているとの疑いに関し、VCCAは当該事業者に対して警告を発出した。
VCCAは、2020年において、不公正な競争行為に該当する疑いのある行為について申出を受領するとともに、以下の分野に関連する11事案について対応した。
・食品・ビール製造業:顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)、他の事業者の顧客や取引相手を強制する行為(競争法第45条第2項)(3件)
・電気設備製造業:虚偽情報を提供する行為(競争法第45条第3項)、他の事業者の事業活動を妨害する行為(競争法第45条第3項)(1件)
・不動産仲介業:顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)(1件)
・美容サービス業:顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)(1件)
・オンライン販売業:顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)(1件)
・美容品販売業:顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)(1件)
・畜産用餌製造販売業:虚偽情報を提供する行為(競争法第45条第3項)(1件)
・機械製造業:事業秘密の侵害行為(競争法第45条第1項)、顧客の不当誘引行為(競争法第45条第5項)(2件)
なお、国家競争委員会が設置されていないため、VCCAは、2018年競争法の法執行手続による審査・措置を行うことはできないものの、関係者による競争法違反被疑行為に関する申出・クレームなどを受け付け、事実関係を明確にするほか、違反行為を防止するために必要な警告を行うなどし、国家競争委員会の設立後において直ちに処理が可能となるよう資料等を準備している。
2020年においてVCCAは、2018年競争法に基づく経済集中案件の事前届出を62件受領したところ、そのうち、90%が買収、10%が吸収合併又は新設合併であった。分野としては、不動産、ビール・飲料、小売、畜産用餌、保険、鉄鋼、航空、自動車生産・販売、セメント、物流、ミルク及びミルク製品、石油等であった。
2005年~2020年までの経済集中の届出・事前相談件数
また、VCCAは、国内事業者のほか、ベトナムにおいて活動している外国企業の経済集中取引を定期的にレビューし、買収、吸収合併、新設合併、合弁などに関する情報の更新・集計・データ収集などを行った。特に、JICAによる「改正競争法に基づく競争政策施行能力強化プロジェクト」の枠組みにおいて、ベトナムにおける製薬販売分野における競争実態に関する報告書を作成した。
事業者が経済集中届出の義務を履行するに当たって有用な情報として、VCCAは、そのウェブサイトにおいて以下を掲載している。
・商工省に対する経済集中届出書類の提出に関する手続指針
・競争法に基づく経済集中取引の評価に関する手続・プロセス
・経済集中届出書の様式
・経済集中届出書類の内容に関する注意事項
VCCAは、経済集中届出の評価について、国家競争委員会が設立されていない現時点においては、2020年5月14日に公表されている手続等に沿って評価を実施している。
2020年においてVCCAは、事業者及び一般消費者における競争法の認知度を高めるため、事業者、業界、関連行政機関、駐在員事務所、弁護士事務所、競争法を教えている大学・高等学校などを対象に啓発・普及活動を実施した。また、VCCAは、局内及び関連機関の職員を対象に競争事案の分析・調査能力や審査技術向上のための研修も実施した。具体的な例は以下のとおり。
・ビン・ディン省クィ・ニョンにおいて局内外の職員を対象に競争制限協定事案の審査技術向上研修を実施(1回)。
・ハノイ、クァン・ニン、ラム・ドン、ホーチミン市において競争法の啓発・普及のための公開セミナーをJICAによる「改正競争法に基づく競争政策施行能力強化プロジェクト」の枠組みの下で実施(計4回)。
・次世代自由貿易協定を背景とする競争法の執行に関する、ハノイ、ホーチミン市における法律学科の講師・学生との協議会を実施(計2回)。
・VCCAや関連する地方局の職員を対象に、知識・経験を共有するセミナーをハノイ及びホーチミン市において実施(計3回)。
・日本の公正取引委員会の協力及びJICAによる「改正競争法に基づく競争政策施行能力強化プロジェクト」の枠組みの下、ベトナムにおける薬品流通分野の競争実態、電子商取引市場における競争実態及び航空旅客市場における競争実態について調査を実施。
VCCAは、競争・消費者保護分野における協力や技術支援を通じ、関連する国際機関や組織との協力を実施してきた。具体的には以下のとおり。
・「ASEAN統合イニシアティブにおける競争促進プロジェクト」において、VCCAは調査官向けのマニュアル、関連市場の画定・経済集中に参加する事業者の合算市場占有率算定マニュアルなどの各種マニュアルを作成。
・「ベトナムにおける消費者権利保護に関する法執行効率化及び法整備プロジェクト」において、VCCAは、マンション及び生命保険分野における標準契約・一般取引条件に関するマニュアルを作成し、党中央書記局のNo.30-CT/TW指示に関する公開セミナーを3回開催したほか、「消費者のための事業者」事業に関する会議を3回開催した。また、消費者保護業務の効率性を向上させるための研究も実施した。
2020年版年次報告書の表紙