【広島とアフリカ】貧困女性の雇用支える

2019年12月2日

【画像】注文の多いシアバター店代表
江田慶子さん
2019年11月10日(日) 中國新聞SELECT掲載

※中国新聞社の許諾を得ています

ブルキナファソでシアバターをつくる女性(2014年3月)

最貧国の一つとされるブルキナファソで、私は4年間を過ごした。シアバターという、アフリカの数か国にしか育たない木の実から採れる油を伝統的な手法で生産・加工・販売する女性組合に、青年海外協力隊員として派遣されていた。

この国では、特に女性は現金収入を得るための仕事に就くのが難しい。組合は貧しい女性の収入向上を目指していたが、当人たちが時間に毎回遅れてくることに、赴任当初の私はとてもイライラしていた。1時間以上待たされるのは当たり前。時にはすっぽかされることも。「急用ができた」と悪びれることもない。

半年が過ぎたころ、やっと事情が分かってきた。女性たちの生活は私が思っていた以上に忙しかった。井戸から水を汲み、家まで運ぶ。簡易なかまどで食事を作り、機械も使わず畑を耕す。近所で結婚式やお葬式があれば手伝い、道すがら人に会うと立ち止まり握手を交わし長いあいさつをする。

日本のような社会保険制度がない分、病気になった時、職を失った時、困った時に助けてくれるのは親戚や友人。日常のすべての積み重ねが、女性たちにとっては約束の時間を守る以上に大切なことなのだ。「遅刻」には、日本の環境からは想像できないたくさんの正当な理由があった。

文化や価値観の違いを理解するのは、実際には難しい。でもだからこそ分かり合えた時の喜びも大きい。

一緒に働くブルキナファソの人々と何度も本気で議論をし、泣いたり笑ったり怒ったりしながら一緒に少しずつ改善を積み重ねた。最終的には国内外に販路ができ、100人を超える女性の雇用につながった。

私にとってかけがえのない宝物のような日々。近い将来、またブルキナファソに戻ってさらに何をしようか楽しみで仕方がない。


江田 慶子(えだ・けいこ)
さいたま市出身。法政大卒業後、企業・NGO勤務を経て、2014年から青年海外協力隊員としてブルキナファソへ。帰国後はフェアトレードを通じて同国の女性を応援する「注文の多いシアバター店」を開設。ネット販売しており、広島などでも購入できる。現在は英国イーストアングリア大でアフリカの貧困削減について学んでいる。