2018年10月16日
昨年度開始された「北九州市上下水道ユース研修」が今年も実施されました。この事業は、SDGsの目標達成に向けて北九州市とJICA九州が共同で実施する地方創生事業として、地元の高校生に市の上下水道技術や海外の国際協力活動について学んでもらい将来の活躍を応援すること、そして学んだことを市民に発信してもらうことを目的に実施するものです。
昨年度はカンボジアを訪問しましたが、今年はベトナムを訪問し、ベトナムの上下水道の状況と北九州市が取り組む国際協力事業の現場を視察しました。
56名の応募者の中から選ばれた6名の高校生が参加し、2日間の国内研修(7月30日~7月31日)に続き、6日間のベトナム研修(8月6日~8月11日)が行われました。
国内研修では、北九州市の上下水道事業について講義と現場視察により理解を深めるとともに、JICA九州にて日本の国際協力事業について学び、なぜ国際協力が必要かについて考えました。国内研修の最後に研修で得た知識をもとに、ベトナムで何を学びたいかアイディアを出し合い、整理してベトナム研修に臨みました。
ベトナム研修では、実際に自分の目で見て様々なことを体験し、日本との文化の違いや北九州市の上下水道との違いに驚き、実に多くのことを体感したようです。以下に研修の様子を紹介していますので、ご覧ください。
北九州市上下水道局とJICA九州の共催している「上下水道ユース研修」のハイライトであるベトナムにおける海外現地研修(8月6日~8月11日)が始まりました。
ハノイ到着後、まずJICAベトナム事務所を訪問、その後日本大使館を表敬しました。
JICAではまず、同事務所次長から「各訪問先でただ話を聞くだけでなく質問し、更に意見を交換して積極的に参加するように」との激励を受け、ベトナムにおけるJICAの協力の概要について説明を受けました。
次に日本大使館では、ベトナムの全体概要、日本大使館の役割について説明いただきました。人口の約50%が30歳代以下ということで、町に活気が溢れていることもうなずけます。また親日的で両国間の関係が良好であるとの話も伺いました。
夜ホテルに戻り、参加者全員で最初の一日目を振り返りました。以下、参加高校生のコメントをご紹介します。
高校生の皆さんの表情がイキイキとされているのが印象的でした。2日目はハイフォン市に向かいます。
ベトナムでの海外研修2日目、ハノイからハイフォン市に移動し、ハイフォン市人民委員会、サポートセンター、ハイフォン市水道公社を訪問、その後郊外のビンバオ浄水場を視察しました。
ハイフォン市はハノイから約100キロメートルの距離にあり、同国内に5つある中央直轄市の一つで、ハノイ、ホーチミンに次ぐ規模の港湾都市です。
北九州市とハイフォン市は2009年に友好都市となり水道事業の技術協力実施に向けた覚書を締結、JICA草の根技術協力事業を活用し、2010年より上下水道の維持管理能力向上に向けた様々な技術協力を行っています。
最初に訪問したハイフォン市人民委員会では副市長はじめ建設局副局長、教育局副局長、外務局、水道局、下水道公社各代表の歓迎を受け、北九州市のこれまでの協力活動に感謝の意を表されました。ユース研修の高校生からは人民委員会の役割、ベトナムの人々の水に対するイメージ、川に生きものが生息するのか、浸水対策等について質問がなされました。
次に訪問したサポートセンターはハイフォン市水道公社の一室で、北九州市内企業のサテライトオフィスとして利用されています。ここでは株式会社ジオクラフトの課長から地理情報システムによる上下水道管理の協力事業について説明いただきました。
午後、ハイフォン市水道公社を表敬、会長以下幹部の方々が出席し、北九州市との協力事業について説明を受けました。高校生から、ベトナム人の理想の水環境、水道事業による水道料金の改定、北九州市との協力事業についての市民への周知度等の質問が出ました。会長は特にU-BCF(高度浄水処理技術)により高い効果が得られていることに言及されました。その後郊外のビンバオ浄水場で実際にU-BCFが稼働している様子を視察しました。
無事2日目も終了。以下、ユース研修高校生のコメントをご紹介します。
ベトナムでの海外研修3日目、朝から盛沢山の内容でした。午前中はハイフォン市内の浸水地域、水路、一般家庭の腐敗層汚泥引き抜き作業、生活排水が流入・滞留する川の様子等を視察しました。その後、ビンニエン下水処理場を視察しました。この下水処理場はハイフォン都市環境整備事業の一環でJICA有償資金協力事業の資金をもとに建設中の下水処理及び雨水排水施設です。この処理場は下水処理区域面積820ha、処理人口17万人の処理を予定しており試行的に稼働を開始する予定です。
視察を終えた後、ユース研修の高校生は「呉服うめね」様から贈呈された浴衣に着替え、ハイフォン市下水道排水公社を表敬し、総裁、副総裁はじめ公社幹部の方が出席し、排水公社の役割について説明を受けました。ユース研修の高校生を代表して上月花織さんから「私たちからの提案-下水道の重要性を知るために」として下水道の重要性を市民に啓発するための4つの方法(1,漫画 2,クイズ 3,テレビコマーシャル 4,遊んで学べる体験施設)が提案されました。皆さん熱心に耳を傾けられ、総裁からとても面白い提案であるとの感想をいただきました。総裁から、「発展途上にあるベトナムにとってまず上水道の整備が優先されるが、上水を取水している河川の保護が重要である一方、工場排水による汚染が問題になりつつあり、市民は環境保護の重要性を認識している」との説明がありました。
その後、Tran Phu高校を訪問し日本語を学ぶ高校生約100名と交流しました。交流会では生徒による歌や踊りの披露、椅子取りゲームなどで大いに盛り上がりました。ユース研修の高校生からも炭坑節が披露され、ベトナムの高校生と一緒に踊り、友好を深めました。最初は緊張していましたが、会が進むにつれ同世代の若者たちとすっかり打ち解けた様子でした。
無事3日目も終了しました。以下、ユース研修の高校生のコメントをご紹介します。
ベトナム研修4日目、ハイフォン市を出発し、ハロン湾に向かいました。ハロン湾は1994年ユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された有名な観光地です。石灰岩からなる島々が点在する風景は独特の美しさがあり多くの観光客が訪れます。一方近年は観光客増加による水質悪化が深刻になりつつあります。一行は観光船に乗り込み、鍾乳洞のある島を目指しました。船内で国際河川の水質保護の課題、観光地における環境保全の取り組みなどについて説明を聞いた後、高校生たちは国内研修で練習した水質試験キットを使って、北九州市の水道水、紫川、ハロン湾、ハイフォン市の生活雑排水、浄水場付近の河川水サンプルを使って水質の比較試験を行い、改めて北九州市の水質の高さを体感しました。
ハロン湾や鍾乳洞の素晴らしい自然遺産に触れることで、水質・環境保護の重要性を改めて学ぶことのできた一日となりました。
8月10日(金)ベトナム研修5日目、いよいよ今日は最終日です。
午前中、北九州市に本社を構えるTOTOグループの海外拠点の一つであるTOTO VIETNAM CO.,LTD.の工場を視察しました。工場はハノイ市中心部から車で約1時間弱の工業団地の中にあり、広大な敷地の中で約4000人のベトナム人従業員が働いています。まずTOTO VIETNAM社長の山崎様より会社の創業から現在までの歴史、ベトナムでの事業展開、CSR活動等について説明していただき、その後工場内を見学しました。社長自ら従業員との人間関係づくりを大切にされ、ベトナムの社会に根付いた企業経営に重点を置かれているとのお話をうかがいました。従業員の人材育成に特に力を注がれていることや、従業員に寄付を募り貧困地域に学校を建設する等、ベトナムの人々との協働による様々な活動を通じて、ベトナム社会に貢献していることを学びました。地元を代表する企業の活動を知り、高校生の皆さんは北九州市民として誇りに思った様子でした。
午後はホー・チ・ミン廟、旧市街、ナイトマーケット等ハノイ市内の名所を視察し、無事に全行程を終え、夜の便で一路帰国の途に就きました。
帰国後、高校生6名は、国内研修、ベトナム研修で自ら経験し、得た情報をもとに上下水道や環境保全の重要性と北九州市の国際協力への取組みについて、市民の皆さんに発信するため、国際協力チームと技術チームの2つに分かれて議論を重ねながら、発表の準備を進めています。
11月4日に予定されている北九州市SDGs未来都市キックオフイベントで発表を予定しています。ぜひご期待ください。