2016年8月31日
本事業が立ち向かうファイトプラズマ(Phytoplasma)とは、東京大学の土居養二名誉教授らが世界に先駆け1967年に発見した植物病原微生物群で、千種以上の植物に感染して甚大な被害をもたらします。被害を抑えるには、感染した株を出来るだけ早く発見し処分するしかありません。そのためには、実験室ではなく農家の軒先で、迅速・簡便に感染の有無を診断する技術が必要です。これを開発したのが東京大学・難波教授らの研究チームです。本プロジェクトでは、早速、あらゆる種類のファイトプラズマを一網打尽に検出できるユニバーサル診断キットを導入し、夏秋先生らがベトナム中部ザーライ省で採取したてんぐ巣症状株のファイトプラズマの検出を試みました。その結果、病徴のあるキャッサバ・サンプルは、明らかな陽性反応を示しましたが、その後の再検証で、偽陽性の可能性もあり、さらに検討が必要です。また、今回の検査は実験室の中で行ったものであり、「農家の軒先での」より簡易な診断には、まだまだファインチューニングが必要です。とはいえ、ファイトプラズマ検出に向け、かつてアポロ11号のアームストロング船長が「小さな一歩、だが偉大なる飛躍」と呼んだ一歩が、とにもかくにも踏み出されました!
感染株の葉の一部を切り取りDNAを抽出するサンプルにする
葉脈や葉柄など色々試してみる
サンプル断片をファイトプラズマ抽出液に浸しDNAを抽出
反応が思わしくないので、DNAをより純化してみる
液体窒素でサンプルを固めてから細かくすりつぶす
各種試薬で不純物を取り除く
サンプルを遠心分離にかける
遠心分離後の上澄みにDNAが含まれている
上澄みをPCRにかけDNAを増殖させる(チューブ先端にかすかに見えるDNAの固まり)
何度目かの試行錯誤の結果、UVライトを照射すると…
東大難波先生らが開発したユニバーサル・ファイトプラズマ検出キットにより、ベトナムのてんぐ巣病病原ファイトプラズマが検出された瞬間。左から、反応比較のための陰性コントロール、同じく陽性コントロール、その右4つがサンプルで、右から2番目のサンプルが強い陽性反応を示しているかに見えましたが、これはその後の再検証で不純物混入による偽陽性の疑いが出てしまいました。
FTAシート(DNAなどの核酸の採取・保存に用いるセルロース製カード。室温でDNAを保存することができる)にてんぐ巣病株汁を付着させて日本に送り、更なるチューンアップのための試料とする