プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)救急産科ケアリファラルシステム強化プロジェクト
(英)Project to Improve the Referral and Counter Referral System and Emergency Obstetric Care
(西)Proyecto de Mejoramiento del Sistema de Referencia y Contra Referencia y de Atención Obstétrica e Infantil de Emergencia

対象国名

ボリビア他民族国

署名日(実施合意)

2022年1月18日

プロジェクトサイト

サンタクルス県の5つの保健ネットワーク(オビスポサンティステバン、サラ、イチロ、ワルネス、北部)

協力期間

2022年4月1日から2027年3月31日

相手国機関名

保健スポーツ省 保健ネットワーク・サービス総局

背景

ボリビアは近年、母子保健指標が著しく改善しているものの、妊産婦死亡率は155(出生10万対)(2017年、UNICEF)とSDGsの目標(2030年までに70(出生10万対)以下)と比べても依然として高い。
この課題に対し、ボリビア政府は、「生活向上のための部門別総合国家開発計画(2016年~2020年)」を掲げ、コミュニティにおける母子保健サービスの改善に重点を置いた政策に取り組んだ。また、JICAは、過去20年余りにわたり、母子地域保健を強化する技術協力プロジェクトを実施し、住民への健康増進に取り組む活動を実施した結果、医療機関へのアクセスが良くなり、妊婦健診受診率及び施設分娩率が上昇した。

医療機関へのアクセスが良くなった一方で、妊産婦新生児死亡の要因として、病院間の患者を紹介・移送するリファラル・カウンターリファラルの調整が十分でないことが挙げられる。ボリビア政府は、全国にリファラル・カウンターリファラル・システムを拡大すべく、救急医療サービスとリファラル・カウンターリファラルの調整を行う保健救急調整センターを各県に設置することを定めた。しかし、各センターにおける実践的なプロトコルが作成されておらず、適切に機能していないことが課題となっている。

また、医療従事者の知識・技術不足による上位医療施設への不適切なリファラルやリファラルの遅延も妊産婦・新生児死亡の原因と考えられている。そのため、この状況を改善すべく医療従事者の能力向上が必要であり、中でも一次・二次施設における向上が重要とされている。

さらに、妊産婦・新生児死亡の分析は、死亡原因となるボトルネックを理解するために不可欠であり、分析に基づいたフィードバックは妊産婦・新生児保健サービスの質・体制の改善に重要である。しかし、県・市・病院のそれぞれのレベルにある妊産婦死亡分析委員会が定期的に開催されず、十分な分析やフィードバックが行われていない。同委員会が開催され、県保健局から各レベルの医療機関へのフィードバックの伝達が強化されることが期待されている。

このような背景のもと、本プロジェクトは、サンタクルス県を対象とし、保健救急調整センターの機能の強化、一次・二次医療施設における医療従事者の妊産婦・新生児のリファラル・カウンターリファラルに関する技術能力の向上、及び国家妊産婦死亡疫学サーベイランス規定に則った適切な妊産婦死亡分析の強化を支援することにより、母子保健サービスが適切に提供され、もって妊産婦・新生児の健康状態の改善に寄与することが期待される。

目標

上位目標

サンタクルス県において妊産婦・新生児の健康状態が改善する。

プロジェクト目標

サンタクルス県において保健ネットワークの強化を通じて母子保健サービスが適切に提供される。

成果

1.サンタクルス県において、保健救急調整センターの機能が強化される。
2.対象地域において、一次及び二次医療施設における医療従事者の妊産婦・新生児のリファラル・カウンターリファラルに関する技術能力が向上する。
3.対象地域において、国家妊産婦死亡疫学サーベイランス規定に則り、適切な妊産婦死亡分析が行われ、分析結果のフィードバックが強化される

活動

成果1に関する活動

1-1.現在のリファラル・カウンターリファラル・システム及び保健救急調整センターに関する法律や国家戦略に関するレビューを行う。
1-2.リファラル・カウンターリファラル・システム及び県・保健ネットワークのリファラル・カウンターリファラル委員会の分析結果に関する現状分析を県保健局とともに行い、課題を明確にする。
1-3.保健省主導の下、サンタクルス県保健救急調整センターにおける管理及び臨床プロトコルを作成する。
1-4.保健省と県保健局が研修立案と研修機材の準備を行う。
1-5.保健省とともにサンタクルス県保健救急調整センターへ研修を行う。
1-6.サンタクルス県保健救急調整センターへの研修後のフォローアップとして、モニタリング・評価を行う。
1-7.サンタクルス県内や他県へ現状や優良事例の共有を行う。

成果2に関する活動

2-1.保健ネットワークと県保健局が一次・二次医療施設従事者に対し、リファラル・カウンターリファラルと緊急産科新生児ケア能力についてアセスメントを行う。
2-2.県保健局とともに研修立案と研修機材の準備を行う。
2-3.県保健局及び医療施設へオンライン研修の実施に必要な機材を供与する。
2-4.保健ネットワークが一次医療施設従事者に対し、研修を実施する。
2-5.保健ネットワークが二次医療施設従事者に対し、研修を実施する。
2-6.県保健局が研修のフォローアップ、モニタリング、評価を行う。
2-7.研修計画及び研修機材を修正する。

成果3に関する活動

3-1.県保健局と三次病院(日本病院と女性病院)間における妊産婦死亡の情報の流れと質を把握し、妊産婦死亡のボトルネックを明確にする。
3-2.県保健局とオビスポサンティステバン及び北部保健ネットワーク内医療施設間における妊産婦死亡の情報の流れと質を把握し、妊産婦死亡のボトルネックを明確にする。
3-3.県妊産婦死亡分析委員会を開催する。
3-4.市妊産婦死亡分析委員会を開催する。
3-5.病院妊産婦死亡分析委員会を開催する。
3-6.県保健局とともに研修立案と研修機材の準備を行う。
3-7.妊産婦死亡分析委員会へ妊産婦死亡に関する研修を実施する。
3-8.妊産婦死亡のフィードバックに関するモニタリングとスーパービジョンのためのツールを作成し、使用する。
3-9.サンタクルス県内や他県へ現状や優良事例の共有を行う。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:保健システム、母子保健、リファラル・カウンターリファラル、救急医療、その他
2)機材供与:プロジェクト車両、研修機材、その他

相手国側投入

1)カウンターパートの配置
2)県保健局内のプロジェクトオフィスの設置
3)ローカルコスト負担(出張旅費、必要経費を含むカウンターパートの人件費等)