(和)国立職業訓練機構能力強化プロジェクトフェーズ2
(英)Project for Strengthening the Capacity of National Institute of Professional Preparation Phase 2
コンゴ民主共和国
2021年10月18日
2022年4月2日から2026年4月1日
(和)国立職業訓練機構
(英)National Institute of Professional Preparation
コンゴ民の失業率は4.6%(ILO, 2020年)、不完全雇用率は50%以上と推定されている(ILO, 2019年)。特に若者の失業問題は深刻であり、若年層失業率は35%となっている(同上)。長年の紛争等による大量の難民や除隊兵士が発生しており、若年層の失業率の高さが治安悪化の要因にもなっているため、平和の定着及び経済発展の観点から、特に若年層を対象とした職業訓練を通じた社会復帰・就業支援が喫緊の課題となっている。
当国政府は初中等教育省、技術・職業教育省、高等教育省、社会問題・人道的行動および国家の連帯省の4省により「教育・職業訓練セクター戦略(SDDEF:2016-2025」を策定し、経済成長及び雇用に貢献する教育・訓練システムの構築に取り組んでいる。同戦略の中で、「より公平な教育システムを推進し、経済成長と雇用に貢献する」ことを最初の柱に掲げており、その中で、若者の社会統合促進に向けた職業訓練の実施を強化することとしている。
国立職業訓練機構(Institut National de Préparation Professionnelle:INPP)は1964年に設立された雇用・労働・社会保障省(Ministre de l’Emploi, du Travail et de la Prévoyance Sociale:METPS)傘下の機関であり、全国26州に30以上の拠点を持つ同国最大規模の公的職業訓練組織である。INPPの運営費は、主に政府からの交付金、法律によって企業に課せられた分担金(従業員数規模によって定められた割合)及び求職者訓練参加者から徴収する訓練費用から構成されており、これらを財源として企業のニーズに応じた訓練、在職者の技術向上を目的とした訓練、求職者や転職希望者向けの技術訓練等を実施している。日本は1980年代から同機関に対して支援を行っていたが、内戦の長期化により、指導員の人材育成や訓練施設への投資が十分に行われず、指導員の高齢化、訓練内容と産業界ニーズのギャップ、施設・機材の老朽化が課題となった。これら課題に対応すべく、2011年からINPPに対する技術協力を再開し、指導員の能力強化や、INPPの中でも多くの訓練生を輩出するキンシャサ校及びルブンバシ校の施設・機材整備を支援し、同国における職業訓練の質の向上を図ってきた。また、2015年からは技術協力プロジェクト「国立職業訓練能力強化プロジェクト」(以下、「先行プロジェクト」という)を実施し、INPPが産業界のニーズに基づき質の高い訓練を提供できるよう、INPP本部、キンシャサ校及びルブンバシ校を対象として、訓練実施体制の強化や、産業界の需要が大きい分野(自動車整備、油空圧、溶接、自動制御)における指導員の知識の更新及び技術力向上、訓練生の就業支援等を支援してきた。これまでの協力により、持続的に訓練の質向上を図るための仕組みが開発され、これら仕組みを本部やキンシャサ校において実践するコア人材が育成されたほか、前述の技術分野では、企業の訓練ニーズにも応えることが可能な技術力の高いマスタートレーナーが育成された。また、就労支援については新たに訓練相談・就労支援室をキンシャサ校に設置し、採用を希望する企業と訓練生等のマッチングや、訓練生へのインターンや雇用情報の提供などを試行的に実施し、職業訓練校における就労支援モデルが開発された。
本事業は、これまで育成したコア人材が中心となり、先行プロジェクトで開発した訓練管理サイクルや指導員訓練手法等をINPPの組織運営の中に内在化させるとともに、INPPの他拠点に導入・実践することにより、全国のINPPにおいて産業界のニーズに基づく質の高い職業訓練を、自律的・持続的に提供し、もって産業界のニーズに合致した人材の輩出に寄与することを目的とする。
全国のINPPにおいて産業界のニーズに合致した人材が輩出される
産業界のニーズに基づいた質の高い訓練が対象地方総局において自律的・持続的に実施されるようになる
1.訓練管理サイクルが制度化され、産業ニーズに基づく訓練が自律的・持続的に実施される。
2.INPP指導員のToTが制度化され、自律的・持続的に実施される。
3.新たな産業ニーズにおけるマスタートレーナー養成システムのモデルが策定される。
4.産業ニーズに基づく質の高い訓練の提供及びエンプロイヤビリティの向上に資するパイロット活動が実施され、優良事例がまとめられる。
1-1.各地方総局におけるCGFマニュアル3の活用状況、訓練管理サイクルの実施(産業ニーズへの合致程度、常設諮問委員会(CCP)の機能度含む)及び訓練の質にかかるベースライン調査(現状と課題の調査・分析を含む)を実施する。
1-2.(先行プロジェクトにおいて、キンシャサ校で実践された訓練管理サイクルの経験・教訓を踏まえ)CGFマニュアルを用いて訓練管理サイクルを地方総局にて実施するための執務要領を作成する。
1-3.1-2で作った執務要領の導入にかかる地方総局向けの研修を行う。
1-4.1-2で作った執務要領の導入にかかるINPP本部向けの研修を行う。
1-5.対象地方総局においてCCPを設置する。
1-6.訓練のモニタリング・評価にかかる研修を行う。
1-7.各地方総局で、執務要領及びCGFマニュアルを用いて訓練管理サイクルの実施にかかる計画を策定し、実施する。
1-8.先行プロジェクトで育成したCGFメンバーを中心に、各地方総局での訓練管理サイクルの実践をモニタリングし、指導を行う。
1-9.CCPを開催し、年次活動報告をCCP委員に行い、フィードバックや訓練ニーズに関する要望を収集する。
1-10.INPP本部は、一連の訓練管理サイクル終了後、経験共有のためのワークショップを実施し、各地方総局での取組、優良事例、教訓を共有するとともに、CGFマニュアル及び執務要領を改善する。
1-11.訓練管理サイクルの実施状況及び訓練の質(産業ニーズへの合致程度を含む)にかかるエンドライン調査を実施する。
2-1.指導員のToTの実施体制、予算配分状況、現状・課題を調査・分析する。
2-2.指導員TOTの制度化にかかる問題分析ワークショップの実施し、TOTを継続的に実施するための執務要領7を作成する。
2-3.執務要領及びCGFマニュアルを用いて、TOTの計画・実施・評価を行う。
2-4.執務要領に従って、TOTの実施報告をまとめ、本部の訓練課に提出する。
2-5.執務要領に従って、同報告結果を踏まえ、次年度のTOTの計画(予算計画を含む)を策定する。
3-1.新たな訓練分野の産業ニーズを調査・分析する。
3-2.MTの能力強化をするためのリソースとなりうるコンゴ民現地リソース(民間企業含む)及び第三国リソースを調査する。
3-3.MTの養成をする対象分野を選定する
3-4.活動3-1, 3-2, 3-3, 3-4を踏まえ、成果3の活動のスコープを決め、PDMを改訂する。
4-1.AR等を用いた遠隔TOTの実施可能性の検証、及び可能な場合、小規模なパイロット活動を実施する。
4-2.4-1のパイロット活動の成果、課題、教訓、提言をまとめる。
4-3.訓練データベースの活用等、訓練管理サイクルの改善に資するICTの活用方法を調査・分析する。
4-4.(先行プロジェクトで導入した)5S・カイゼン活動の各地方総局における活動状況をキンシャサ校のKAIZENチームが中心となってモニタリングし、必要な助言・指導を行う。
4-5.5S・カイゼン活動の優良事例を取りまとめ、経験共有ワークショップを行い、INPP機構間で知見の共有を行う。(BC業務の有効性確認)
4-6.(先行プロジェクトで導入した)キンシャサ校におけるBC業務の実施状況調査・課題分析を行い、必要なインプットを検討する。
4-7.4-6で検討したインプットを行い、キンシャサ校においてBC業務支援ガイド9に基づきBC業務を実践する。
4-8.試行活動の効果検証を行い、BC業務支援ガイドを改訂、BCモデルを確立する。
4-9.キンシャサ校のBCモデルをBCの普及・制度化についてINPPと協議を行い、制度化に向けたロードマップを作成する。
4-10.BC業務実施にかかる訓練生データベースの利活用等、ICTを活用した効率化・改善可能性を検討する。
4-11.(先行プロジェクトで立ち上げた)起業コースの実施状況調査・課題分析を行う。
4-12.4-11を踏まえ、起業コースの実施にかかるプロジェクトのスコープにつき、INPPと協議・合意する。
4-13.エンプロイヤビリティの強化を目的として、基礎的ビジネススキル(5S、PCスキル、基礎的計算能力、英語等)の向上にかかる訓練を試行的・小規模に実施し、効果検証を行う。
4-14.4-13の試行結果を分析し、提言をまとめる。
4-15.上記のパイロット活動を踏まえ、活動のスコープを決定し、PDMを改訂する。
総括/組織運営、訓練管理制度化、指導員研修制度化、訓練評価/モニタリング、5S/カイゼン、就業・起業支援、ICT/DX
指導員研修(第三国での研修を含む)等
ToT制度化のための活動対象となる技術分野の基礎的訓練機材(必要に応じ)、成果4のパイロット活動にて必要な機材等(遠隔ToTに必要な機材AR(オーグメテッドリアリティ)用ウェアアブル・デバイス等)、訓練生データベース)
プロジェクト・ディレクター(INPP総裁)
プロジェクト・マネージャー(INPP本部技術部長)
INPP本部関係部局長(総務・財務局長、人事局長、予算管理局長、会計局長、出納局長、プロジェクト管理・公共調達局長、調査・計画局長、訓練局長、技術監督局長、内部監査局長)
地方総局・支部コーディネーション・チーム:45名(暫定)
事業実施に必要な事務所・施設
機材の維持管理、設置に必要な費用
訓練の計画、実施、モニタリング、評価にかかる費用
指導員訓練(TOT)の実施、モニタリング、評価にかかる費用