2023年5月16日
前回ご紹介したバルパック・スリコット村に続いて、被災コミュニティの社会・経済的復興と次の災害に向けての備えを促進することを目指すコミュニティ・レジリエンス・プロジェクト(Community Resilience Project:CRP)について、今回は、シンドパルチョーク郡チョータラ市の活動例を紹介します。
2020年からの新型コロナウィルス感染症の拡大が、彼らの生産活動の基盤である農業(野菜栽培)に大きな影響をもたらしました。ロックダウンにより生産活動が制限され、マーケットに自由に行き来することが出来ませんでした。
また、政府や地方自治体からの農機具や機材の供与、技術指導などの支援も限られており、多くの農家では生産量の拡大とその品質の向上が課題でした。それ故に、収穫された農産物は安価な値段で地元の市場に卸すしかありませんでした。加えて灌漑設備が未整備なこの地域では乾季での生産活動にも限りがありました。
CRPの活動では、1)ビニールハウスの作り方、2)水の管理、3)害虫駆除・対策、4)市場調査などのマーケティングについて、5)帳簿のつけ方など様々な研修を実施しました。その結果、これまでは栽培が出来なかった雨期でもビニールハウスを活用することにより栽培・収穫が出来るようになりました。
また、害虫被害のために処分していた作物が減ったことにより、生産量の増加と品質の向上が達成できました。その結果、グルーブメンバーの収入が増えただけでなく、災害に強いビニールハウスの建設などのリスク回避の考え方も習得し、レジリエンス強化に繋がっています
建設中のビニールハウス
トマトの種まき
収穫前のトマト
2015年の地震ではヤギ小屋が倒壊し、多くのヤギが犠牲になりました。この地域では元々ヤギのエサとなる草が豊富で、昔から多くの家庭でヤギが飼育されています。飼育されたヤギは食肉用として売られ、メンバーの収入に繋がります。しかし、ヤギの飼育のための行政や民間団体などからの支援はほとんどなく、住民のヤギの飼育に関する知識や技術レベルは高くありませんでした。
CRPでは、ヤギの飼育に関する研修として、1)飼料、2)飼育方法、3)健康管理(病気予防や病気になったときの対処法)、4)病気や災害の被害等に備えて家畜保険への加入について学びました。従来簡素な材料で造られることの多いヤギ小屋を改善し、ヤギの衛生に配慮するだけでなく、地震等で壊れずまた害獣による被害を防ぐ強固な構造にしたり、ネパールではまだ新しいコンセプトである家畜の保険に加入したり、リスク回避の方法を取り入れたレジリエントなヤギ飼育の普及を支援しました。
ヤギ小屋の中の様子
グループの集会
ヤギ小屋の構造