プロジェクトの活動紹介 ヘランブ村-チベット仏教巡礼の聖地で、地域で取り組む観光事業-

2023年5月19日

前回ご紹介したゴルカ群パロンタール市に続いて、被災コミュニティの社会・経済的復興と次の災害に向けての備えを促進することを目指すコミュニティ・レジリエンス・プロジェクト(Community Resilience Project:CRP)について、今回はシンドパルチョーク郡ヘランブ村の活動例を紹介します。

観光事業

クツムサン女性組合は、ネパールの首都カトマンズから東方に約40Kmに位置するシンドパルチョーク郡ヘランブ村クツムサン集落の女性グループです。この集落は標高約2,400mと見晴らしの良い場所にあり、とても自然環境に恵まれています。ランタン国立公園まで直線距離で10kmのところに位置しており、ヒマラヤ山脈を眺めるトレッキングコース上にあります。

2015年4月に発生した地震では、集落のいくつかの家が被害を受けました。また、2020年からの世界的な新型コロナウイルスの大流行により、ネパールにおいても他の国々同様に観光客が激減し、クツムサン集落は経済的にも大きなダメージを受けました。

25名のメンバーで構成されるクツムサン女性組合は、ホームステイ型宿泊施設の運営と自分たちが栽培した食材(野菜)で作った地元の料理で宿泊客をもてなすことを主体とした活動に取り組んでいます。震災で被害を受けた自宅を改装し、ホームステイとして観光客を受け入れ、地域独自の文化(食事、踊り、衣装など)を体験出来る場所として、多くの人に来てもらいたいと思っています。高地で朝晩の冷え込みが激しいこの集落では栽培できる野菜が限られています。そこで、グループのメンバーたちは高地の強風に強いビニールハウスの建て方を学び、これまでこの地域ではあまり栽培できなかったトマト、きゅうり、ほうれん草やキャベツなどの葉物の野菜、さらにいちごなど、様々な食材を宿泊客に提供できるようにビニールハウス栽培に熱心に取り組んでいます。

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ホームステイの部屋の様子

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クツムサンからの景色

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観光客を地元の料理でもてなす

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ビニールハウスで栽培された野菜

革製品の生産・販売事業

同じくヘランブ村では、また別のグループであるシュリジャンシル農民グループが鞄、財布などの革製品の生産と販売事業に取り組んでいます。同グループは、ネパールのヒンズー教カースト制度における最低階級であり不可触民とされるダリットたちで構成されています。

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革製品の製作に励むメンバー

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作成された製品(鞄、財布など)

このグループは伝統的職業として革製品の生産を代々続けていましたが、彼らもまた2015年に発生した地震の影響でこれまで細々と行ってきた革製品の生産を一時停止せざるを得ない状況になりました。

彼らが作る革製品は、カトマンズなどの都市で販売するにはその品質が高くないこと、また、ダリットが作った製品ということで流通・販売が敬遠される傾向にあります。CRPの支援で、革製品を生産する協働スペースと機材(ミシンなど)を確保し、技術力向上のためのトレーニングを受けることが出来ました。昔ながらの革製の道具だけでなく、洗練されたデザインのリュックサックやハンドバッグ、財布やベルトといった市場向けの製品を作る技術を学び、それをヘランブ村のダリット・グループが作っているという付加価値を付けて販路を開拓するなど、プロジェクトの支援は多岐に渡ります。このようにして現在、彼らは更なる生産技術の向上とマーケティング力の強化、さらには差別や偏見との戦いに取り組んでいます。

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技術力向上のトレーニング